神々のやさぐれ 5
宿に戻るなりオレはルキさんを寝台へうつ伏せた。
服を脱がすのももどかしく裾からたくし上げ、ズボンも緩める。
はい、腐った皆様御機嫌よう。
只今のルキさんはオレのゴッドハンドで無駄に色っぽい声で呻いております。
「くぅっ、そ、そこそこっ、アーッッ!」
「ガチガチじゃないですか。よくこんなんで歩けましたね?」
「痛っ、やめて、あ、やめないで、もっと。」
「少し力を抜いて下さい。指が入らないですよ。」
「む、無理。ふあっ!み、見ないで…。」
おー、三女神様鼻息あらわにガン見です。
気持ちは分からなくもない。
ギックリ腰のルキさんを指圧しているだけなのに腐海が広がりそうな台詞回しである。
「トール、ルキを虐めるな!」
「虐めてないよ。悦ばせているだけだから。」
訝し気にルキさんの顔を覗きこんだシグは何やら納得したらしい。
「痛気持ちいいって奴だな。アレクセイも俺様が齧ったら同じ顔をしてた。」
違うと思うぞ?叱らなきゃいけないけど可愛いって顔だろう、きっと。
「カティ?何やってんだ?」
「気にしないで続けて。心眼に焼き付けてるだけだから。」
さいですか。どうでもいいが涎垂れてるぞ。
「ルキさんのココ、やばいよ?判るでしょ、自分でも。」
「はうっ!ずっと出してなかったから…。」
翼の付け根付近が凝り凝りです。
「ご馳走様!おかわり!」
「トール、神ね!」
「神!」
いや、神様は貴女方ですが。
「そういえば、ヒルダさんも結構なお歳ですよね。肩でも揉みましょうか、えっ?!」
あんまりおとなしいのでこの人も心眼記録派かと目で姿を探して思わず絶句。
部屋の隅で顔を手で隠してふるふるしている小動物がいる。
黒髪から覗く耳は真っ赤だ。
不覚にも可愛いと思ってしまった。
「…ええっと。ヒルダさんも肩凝り酷いでしょ?胸が重いから。」
我ながら狼狽えすぎでうっかりセクハラをかましてしまう。
カティの半眼が痛い。オレの顔は心眼に留めなくていいから。
「め、…しま…」
ふるふるしたままヒルダさんが何か返してきた。
「ごめん、何だって?」
「あの、…眼鏡かけて、お願いします。」
取り急ぎ脱いだ靴を投げつけたオレは悪くない。
兄ちゃん、世界の女子は皆腐ってるんですか?!
結局、眼鏡をかけてヒルダさんの肩も揉まされたぜ。
俺様も!と背中を向けてきたシグを存分にくすぐり倒したのはご褒美だな。
最後は獣化して降参のポーズを見せてくれました。
「カティも四十肩とかなってないか?揉んでおくか?」
「トール?あんた最近あたしの肩書き忘れてない?」
「カティちゃんはぴちぴちだから必要ないね、ハハハ。」
にこやかにおもねる。怪力魔王の餌食にはなりたく無い。
「そういえばもう一人の高齢者の方は何処へ?」
「トールさん、君も直ぐに齢百超えるからね?」
「お、おう。」
しどけなく寝台にうつ伏せたままのルキさんからご忠告をいただきました。
ホスト兄さんの気怠い午睡風だけど、実態は爺さんマッサージ後の休憩だもんなー。
「それで、シャイロックさんは?」
「シャイロックとルキはトールを探しに行ったんだぜ。」
三女神にわやくちゃにされていたシグたん、珍しくさっさと人型に戻りふんすと胸をはる。
「え、そうなのか?ルキさん、何か用だった?」
「うーん、用っていうか、」
「貴様がちょっと出かけて来ると言ったまま何時間も戻らないからカテプギャ。」
かてぷぎゃ?なんのこっちゃ。
「ヒルダー?まだこの辺凝ってるみたいよー?」
カティがヒルダさんの胸を鷲掴みで揉んでいる。
「いだだだだ!」
「ちょ!男の夢を壊さないで下さい!そこは、あんっ、とか、ひゃっ、とかでしょ?!」
ヒルダさんのぽんこつ!ルキさんを見習って欲しい。
「特に用があった訳じゃないけどねえ。カティちゃんが随分心配してね。」
くすりと笑い、ウィンク。ヒルダさんにその色気を分けてくれ。
「そうなのか?」
「は?違うわよ?ルキにはダンジョンだと翼が邪魔だから消しに行ってこさせて?シャイロックはあたしにたかろうとしたから?金稼ぎに追い出しただけで?」
語尾が全部疑問形なんだけどなー。
「そか。心配かけてごめん。ちょっとバイトしてきただけだから。」
「だから心配なんてしてない。」
「随分とガラの悪い所まで入り込んで。大丈夫でしたか?」
「いや、特には。ルキさんこそ大丈夫だったか?」
そういえばリスティア王国で真っ先にブラックマーケットに連れていかれてましたが。
「…ええ、まあ、一応。」
「一応?」
「何でもないです。」
何でもないって、カティと女神様達がサムズアップ決めているんだけど?
でもって、またヒルダさんがぷるぷるしているんだが?
「大丈夫だぞ。ルキには俺様とシャイロックでマーキングしておいたからなっ。トールにもしてやるな。」
とことこシグたんが膝によじ登り、犬耳を擦り擦り顔になすりつけ、最後にベロンと頸を舐めてくれました。
「獣人は鼻が効くからねー。ツレに金狼や竜人が居るのを判っていて手を出してくる奴は馬鹿な人間だけねっ。」
「へえ。じゃあ、シャイロックさんが戻って来たらオレもスリスリしておこうかな。ははは。」
「ぶしゃあ!」
ヒルダさんが鼻血を吹いて倒れました。
いやいやいや、何を妄想したんですか、何を!
「シャイロックさん、まだオレの事探してくれてるのかな?同じ守銭奴でも女神様方よりよっぽど、へ?」
いきなり右手をサーラ神、左手をイリア神に引っ張られて万歳ポーズ。
無防備になった胸元にフローラ神が何やら叫びながらふよふよとキック。
「加護アタック?何ですかそれ?」
「誰が竜人如きに劣ると?」
「わたくし達を何と心得ておる?」
「そなたの願い、叶えてしんぜようぞ?」
おっと。何か女神様方の地雷を踏んでしまったようだ。
「はあ、ありがとうございます。」
笑顔がドス黒い様に感じるのですが。ラウラ神様、この方々大丈夫ですか?
ぴこん。
<「多分。」>
……。ほんっと、お願いしますよ?




