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神々のやさぐれ 3

「祈祷は?」

「賽銭は?」

「はーやーくー?」

 神様のご加護も金次第。辛たん。

 三女神がルキさんの赤いリュックの中から姦しい。

 そのリュックは翼が生えている天人姿の為、カンガルー抱っこで担がれている。

 まるで抱っこ紐育児中のようなフォルムだが、イクメンでもイケメン度は変わらない。

 その流し目、やめて。

『じーっ。』

 いや、オレを見つめられても。

『じーーーっ。』

 な、何でしょうか?

 あからさまに訴えてくる目力に鑑定をほどこす。

 状態異常:腰痛

「ルキさん、カバン持ちましょうか?」

「お願いします!」

 食い気味に押し付けられました。

「えー。」

「はあ?」

「ぶー。」

 文句たらたらな女神様方にこそっと耳打ちする。

「……次、賽銭入れたらルキの健康を祈願しなさいね?」

「普通に治してあげて下さいよ。って言うかそもそもカバンに潜り込むのが、あの?聞いてます?」

 器用に中から紐を絞り閉め、あまつさえ鼾が聞こえたような。

「ルキさん、はい、エリクサー。」

「ありがとう。でも、流石に勿体ないと思うよ?」

 それもそうだな。

 擦り傷シグたんに渡していたアレクセイさんを笑えない。


 無限ダンジョンのある街についてすぐ、さっさとダンジョンへ潜ろうとするカティを宥め一先ず宿を取る。

「五日下さい。色々支度をしてきます。」

「支度?何の?」

「食べ物とかテントとか、色々ですよ。」

「そんな事は女神様にお願いすればいいじゃない。」

 賽銭払えればな。

 とにかく日銭を稼いで来なければカティへ借金を背負う事になる。

 財布を忘れたから電車代を拝借するのと、文無しなので金を無心するのとは重みが違い過ぎる。

 良い関係を築きたい相手とは金の貸し借りをしてはいけない。

 それは実家を出るときに父さんから教えられた事だ。

 愚直に守って、好意を寄せていた女性へも割り勘で通して兄に爆笑されたけど。

 正月に帰省したら父さんまでお年玉やろうか?奢るんだよそういう時はって酷いよな。良い関係を築きたい云々はどうなった。

 っと、話が逸れた。

 つまりだ。

 カティからは、金を借りたくない。

 下僕だ何だと言われていても、オレはカティの。

 友人?

 仲間?

 何であれ対等でいるつもりだ。

 だからこそ。

 オレは内緒で日銭を稼ぐ事にした。



 冒険者ギルドの扉を開ける。

 今回は誰からもゲットされる事なくクエストの貼り紙がしてある壁に辿り着く。

『急募 剣士(シルバータグ以上):ダンジョン百二十階層まで踏破済みパーティ追加要員』

『求む 魔導士(アイアンタグ以上):週休二日制』

 クエストというよりもメンバー募集がほとんどだ。

「子守とかペットの散歩とか、そんなクエストは無いのかな?」

「おいおい、兄さん。子連れやペット連れでダンジョンへ向かう奴がいると思うのか?」

 オレの呟きを通りすがりの獣人が鼻で笑ってリツイートしやがった。

 案の定周りにいた冒険者達から冷笑される。

 子連れチビ女神連れでダンジョンへ向かおうとしている奴はオレですが、何か?

 そうか。

 むしろオレが子守クエストを貼り出すべきなんだな、とほほ。

 意気揚々とくぐった扉をすごすごと再び抜ける。

 入る時には気付かなかったが、ギルドやその辺りにいる者達は揃ってオレより一回りはガタイが良く、不敵な面構えのいかにもな冒険者の風体。

 ほぼ獣人で、たまに人間が混じっている。

 その誰しもが不思議な事にチラチラとオレを盗み見ていた。

「魔族か、珍しいな。どうする?」

 ぽそりと仲間に耳打ちしてるらしき声も聞こえる。

 お、スカウトか?

「アレは駄目だろう。」

 へいへい。自覚はあるから駄目押ししないでくれ。

 時折背後からうぎゃあと言った悲鳴が聞こえてくる。

 治安もあまり良くは無いようだ。


 ギルドで稼げないなら、飯屋や宿屋を当たってみるか。

 自慢じゃないが炊事洗濯はお手の物だからな。

 などと軽い気持ちでアルバイトの売り込みをかけたのだが。

「魔族か。うーん、魔族はなあ。」

 一様に同じ理由で断られ続け、もう後がない。

 組む腕はオレの胴回りより太く、顔にはがっつり三筋の傷痕がある店主にオレは果敢に挑む。

「そこをなんとか。黒髪が気に入らないなら染めてもいいですし。お願いします!」

「髪なんざ染めたって匂いがなあ。」

 ひくひくと鼻とともにケモ耳が動く。

「匂い?」

 しまった。

 風呂にも入らず就活に来ていたよ。

「雇ってくださるなら勿論風呂にだって浸かってきます。」

「そういう問題じゃないんだが…。そもそも魔族なら引く手数多だろうに。何で場末の酒場で下働きなんだ?」

「引く手数多って、そりゃ他の魔族なら知りませんが。オレは…。」

 誰も、声を掛けては来ませんでしたよ?

 しくん。

「四、五日だけなんで、どうかお願いします!雇って下さい!」

「そんなに金に困っているのか?」

「困ってます!すんごく、困ってます!まず何から仕事すれば良いですか?床磨き?鍋洗い?こう見えて薪割りも出来ますよ?」

「おい、ちょっと雇うとは、」

 言っていないとは言わせない。

 黒髪隠しにその辺にあった布巾を三角巾にして被り、いそいそと働き始める。

 ゴシゴシとタワシで床を磨きながら、成る程、カティやアレクセイさんが姿を変えていた理由に納得する。

 魔族はマイノリティなんだと改めて実感する。

 力持ちな魔族はそうやって変身してしまうから、益々魔族の姿は朧なわけで。

 案外、この店主も変身の姿だったりして、な。

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