もしも魔法が使えたら 3
オレが破壊した壁のある街はうさ耳さんの街だった。
右を見てもバニィさん。
左を見てもバニィさん。
何ここ、天国?
別にバニィさんの全てが網タイツの美女という訳ではなく、否、むしろ網タイツのバニィさんは皆無だ。
御老人バニィさんからお子ちゃまバニィちゃん、もちろんおっさんバニィもいるし、ブサ面なバニィさん達も、いる。
でもね。
う、さ、み、み。
オレはどうもケモ耳萌えの属性らしい。
「トール、鼻息がキモいぞ。」
「目つきもイヤらしい。」
「大丈夫だ、シグたん。犬耳も好物だから。」
「………カティ、トールが何か嫌だ。」
「もう、オレ、一生ここにいる。へぎゃ!」
カティのデコピンがクリティカルしました。
悶絶のオレを足蹴にした魔王の視線は虫けらを見る冷ややかな目つきで。
「あのう。」
貫禄のある体型のおっさん、でもうさ耳、がそそっと馬車を指差した。
「壁も治りましたし、稀少なエリクサーも納めて頂きました。これ以上の謝罪は結構ですので、」
「出て行けと仰るんですか?」
なんということを!
「お、お引止めするのも申し訳ないですし。御尽力の御礼に馬車を用意させて頂きました。」
「いえいえ落ち度はこちらに有りますし。もうすこおし、皆様と友好を深めたいなと。」
「ささやかですが、旅中の食料も用意させていただきます!」
「やっぱり、人参ですかっ?人参っ。」
「ひいぃ。に、人参も用意しますぴょん。」
「ぴょん!キター!ぴょん、頂きました!ぐはあっ、」
魔王さんてば、酷い。
ちょっと興奮しただけなのに、オレ、クレーターにめり込んでるよ。
「おやつも用意してくれたら出て行くわよ。人参じゃないからね?お菓子だからね?」
ちょろちょろちょろんとシャイロックさんがエリクサーを掛けてくれた。
「おーい、生きてるか?」
「ありがとうございます。ちょっと神界が見えました。」
「さよか。アホやなあ。」
「男は大抵アホなんです。母さんがそう言ってました。」
兄と二人並べられて説教しながらしみじみとね。
否定は出来ない。アホでもいい。うさ耳パラダイスから出て行きたくない。
「いやだああ!ここに残るんだあああ!」
「すみません、お騒がせして。」
土木作業でスリムに戻ったルキさんが三割増しのキラキラオーラでウサウサさん達に別れを告げている。
「猫耳も駄目、狐耳も駄目、うさ耳も駄目なんて、オレはこの先どうすればいいんだああああ!」
「は?何やってるんですか?」
馬車に放り込まれて不貞寝をしていたオレが目覚めると。
「ご飯にするにゃん。」
ルキさんが尊い姿になっていた。
「今日はわてらが作ったコン。」
おっふ。シャイロックさんの細目に最適。
「笑ったらコロス。」
魔王がドス黒いけどそれもイイ。
腹黒バニィ、ご馳走様です。
「俺様の耳は本物だぞ!わん。」
知ってますとも!
オレは死んだのか?まだ夢の世界なのか?
「なんでわれだけ鼻なの?ぶひ。」
ヒルダさん。素敵に似合ってるよ?でも残念ながらオレの萌えは耳と尻尾なんだよ。すまん。
「トールさん、色々頑張っていたからね。ボク達からのご褒美。」
「ルキさん!好きです!」
「ごめん、無理。」
即答だな、おい。
「シャイロックさん、似合ってます。尊いです。心眼に焼き付けます。語り伝えま、」
「わかってるよな?わいの本業。」
うへえ。逆鱗出してきたよ。でも、それもクールな狐耳にイイ!
「もちろんですよう。今日この日のご褒美は一生まなこに焼き付けます!」
「目ん玉抉り出したろか。」
そして。
「ちっこいバニィも可愛いです。」
「馬鹿にしてんの?」
「してません。してませんから是非もとの熟女に戻った時にもお願いし、げふっ」
すぐに蹴るのはやめような?
「馬鹿だな、トール。」
「我が人生悔いなし。君にもいつかわかる日が来るよ、シグムンド君。」
バニィに踏み躙られるのもある意味ご褒美なのだと言うことがな。
「ぶう。ぶひ?」
ヒルダさんが頬を染めて褒め言葉を期待している。
「いい歳して何やってるんです?ヒルダさん?馬鹿ですか?あ、豚ですか。」
「!!!なんでわれだけ、ぶひぃ。」
萌えるとイタいは紙一重な事が非常によく分かる実例です。
「そう、ですね。ヒルダさんも、美味そうです。」
「そ、それは、レディースアンドジェントルマン的な意味でかしら?」
「いえ、食欲的な意味でです。シャイロックさん、飯、何ですか?オレ、ぺこぺこです。」
後ろからヒルダさんのぶひぶひとした啜り泣きが聴こえてきたが、貴女に構っている暇は無いんですよ。
オレにはケモ耳ハーレムを堪能して堪能して堪能しまくらなければならない重要な使命があるのです。
「トール。おばちゃんを虐めちゃ駄目だぞ。どんなに残念なおばちゃんでも、女性には優しくしないといけないとアレクが言ってた。」
「シグよ、行き過ぎたフェミニズムは性差別に等しいんだぞ。そしてとどめを刺しているのはオレじゃ無いからな?」
「…ホゲ?」
「気にするな。アレクセイさんは少しばかり生真面目すぎなんだ。いつか禿げる。」
「わかった。冬毛が生え変わる時にとっておいてカツラを作ってやる。」
アレクセイさんの烏の濡れ羽色の艶髪に添えられたシグの黄金色のふわふわカツラ。
微笑ましい父子愛だな、うん。
その日が来たら爆笑してあげることにして。
「ヒルダさん、飯ですよ。貴女の猪を提供してくれたそうですね。ありがとうございます。トンカツトン汁豚足煮、そのままだと共喰いになります。付け鼻、外して下さい。」
「ふがふが、」
めそめそしながらブタ鼻を外すヒルダさん。
くう、たまらない。
「ほらほら、外して下さいよ?あれ?この鼻、自前ですか?」
「ぷぎゃ、し、しどい。」
ヒルダさん。オレ、もう貴女無しでは生きられないよ。貴女の所為でS属性に目覚めてしまいました。
「ごーはーん!はーやーくっ。」
げしげしと腹黒バニィ。
やめれカティ。あんたの所為でMにも目覚めそうだ。




