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もしも魔法が使えたら 2

「ところでさっきから食欲をそそる良い匂いがしているんですが。」

「トールっ、ローストドラゴン祭りだぞ!」

 シグからも肉肉しい香りが漂っているな。

「赤竜の群れを一撃で仕留めるなんて、トールさん、凄い人だったんですね。」

 切り分けたドラ肉を差し出して、ルキさんが微笑む。

 さりげなく餌付けしてくるな、このイケメンは。

「群れ、ですか。ちょっと記憶が曖昧で。」

「格好良かったですよ。」

 あなた程ではありませんが。

「インフェルノマグマバルカンアターック!」

 シグたんが嬉しそうに尻尾を振って再現してくれる。

 えーと、何その厨二病全開は。

「煉獄の炎大激烈放射!!!トール、格好良かったぞ。」

「え、オレ?」

「はい、トールさんです。」

「ちょっと待って。…オレ?」

「はい。」

 うはあ、ちょっと逝って来ます。

「今日から新炎帝の称号もあげるわねっ。」

「やめてえええ。」

 ううう、男はいつまでも少年の心を持っているんだよ。

 こんがりと美味そうにローストされた赤竜達の残りはヒルダさんがいそいそとしまい込んでいました。

 貴女の綺羅綺羅とオレをリスペクトしてくる視線でもう一度死にそうです、勘弁して下さい。



「閃光の魔人見参っ、ハイパームーブ超速移動っ!とおっ。」

「シグにゃん、それいろうゆったらオヤツ抜きらそ。」

「格好いいのに、駄目なのか?」

「らめ。」

 オレが羞恥で悶え死ぬから。

 山を下ってようやく街道に戻ってみれば馬車は居なかった。

 世知辛い世の中だ。

 がたごと揺られて来た道のりを仕方なく歩いて戻り始めたが、ものの半日で誰も歩かなくなった。

 下山後のウォーキングは辛え。

 カティとシグは早々にオレとシャイロックさんにおんぶをせがみ、ルキさんも頑張っていたけど膝の痛みに色っぽく顔を顰めていた。

 その腹が凹むまでは運動禁止だな、ルキさんや。

 ヒルダさんだけルンルンと足取りが軽かったので馬車の調達に先行してもらったら、姿が見えなくなった途端に絶叫が聞こえて来た。

 慌てて駆けつけると猪、あの二足歩行のでかいモンスターな、と戦っていた。

 ざしゅっ、とシグたんが一撃でやっつけた猪の足元で鼻水垂らして土下座していたよ。

「縄張り荒らしてごめんなさいー。許して下さいー。」

「ヒルダさん、猪に土下座は通用しないから。」

「何っ?我の最終奥義が通用しないだと!」

「はいはい。こいつの肉も旨いですからしまっておいて下さい。」

「よかろう。っつ!」

「怪我したんですか?」

 仕方ない。エリクサーを、と小瓶を渡すと、それはそそくさとしまい込み、こてんと首を傾げて言いやがった。

「腰、抜けた。うふ。」

 うん、捨てて行こうか。あとエリクサー返せ。


 そんなこんなで、再びオレがカティの魔力を得て大魔法をぶちかまし、ようやく人里、もとい獣人里に戻って来た次第だ。

「ハイパー超絶グレエトウルトラ、」

 やめて、シグたん、ほんと。

 お兄さん、それ以上辱められたらもう一度白いマスク被るよ?

「ところでルキさん達はどこですか?」

 ぐわんぐわん揺れている世界でエリクサーを取り出し、なんとか飲み干す。

「はあー。酷いなあ皆んな。エリクサーぐらい飲ませてくれてもいいじゃないか。」

「ヒルダとシャイロックが血涙流しながら飲ませていたわよ?次は樽ごとねじ込んであげるから、あたしに少し預けなさい。」

 おっと、そうだった。

 シャイロックさんに謹呈した分は結局オレが預かっていたんだっけ。

「すんません。ではお願いします。」

 確かにすぐぶっ倒れるオレより、カティが持っている方がいいよな。

 土産に預かっているアレクセイさん分を除いて全部渡そうとしたらグーパンを貰いました。

「ぐはあっ、げふっげふ、ごぼっ、」

「あ、ごめんねえ?あんたには強すぎたかしら?」

 のたうつオレの口に容赦なくエリクサーを流し込む。

 鬼か。

「文句があるなら言葉で言って下さい!」

「そんなに持たせる気?重いじゃない。これだけで充分よ、あとは自分で持って。」

「重いって、そんなわけ、」

「文句ある?」

「無いです。」

 ううう。優しいルキさんに癒されたい。オーマイスイートテディ腹!

「で、ルキさん達は?」

「あんたがぶち壊した街の壁を直しに行ってるわ。」

「オレが何ですって?」

「百年壊されなかった壁が進撃の魔人に破壊されたそうよー?あらあら大変ねー。」

「記憶にありませんが。」

「酔っ払いはこれだから。」

「やめれ。ちょっとオレも手伝ってきます。」

 土魔法で壁ドン、とかで許してもらえるかな。

「何、この手?」

「カティ様、魔力を分けて下さい。」

 ほんと、このツンツン魔王め。いつか泣かせてやる。

「はあー。」

「まっ、待った!グーパンやめ、シグ!助けて!」

「トール、俺様はオヤツが欲しいぞ!あと俺様達は人質なのだ!だからここに居なくちゃならないんだぞ?」

「どういうことです?」

「魔力酔いの上に壁に激突して瓦礫に埋もれた瀕死のあんたと、エリクサー惜しさに逆鱗生やした竜人と異様なオーラの氷帝と、可愛い子供達を庇ってキラキラしている天人と、さて誰がどう見てもあんたは凡人、いえ、凡以下よね?わかる?」

「ええと?」

 細目に殺気立った気配の非道そうな竜人と、見た目だけはキリッと武士女な魔族と、微笑み一つで国が滅びそうな麗しの天人が並んでいて。

 その足元でへべれけの幼生体魔族とちびっ子二人。

 濡れ衣着せてごめんなさい。でも、オレは悪くないと思うんだ。

 スペック高い自分らの外見を悔やんでくれ。

「状況を理解しました。オレ達はここでのんびりしているしか無いですね。良からぬ誤解の上書きをしないためにも。」

「そーそー。だからあ、オヤツ出しなさい?」

「ルキさんみたいなグッドルッキングになっても知りませんよ、ぐはあ!」

 グーパン、駄目、ぜったひ……。

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