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エルフという輩 8

 トールのニコニコキッチンのお時間です。

 今日のお題はハイカロリー。

 コールはヤサイナシニクアブラマシマシがかかりました。

 うう、胸焼けしそうだ。

「ヒーッヒッヒ!」

「オレも頑張りますんで、皆さんも改良を早いところして下さいよ?」

「ヒャーッハッハッ!」

「じゃないと、シャイロックさんが笑い死にますから!ちょっとー、いいかげん黙って下さい。」

「む、無茶言うなやー、自分が笑かしておいて、ぶははっ。」

 オレだって異世界転生しておいて、かの有名人のコスプレするとは思いませんでしたよ。

「これはですね、玉ねぎ微塵切り専用なんですよ。三倍早く切れますし花粉症にも最適。シャイロックさんもご一緒に被りませんか?」

「俺様も被りたい!」

「ボクも…。」

 犬耳が生えている玉ねぎ専用マスク…う、それはそれで、新しいな。今度マントも縫ってやろうな。

「はいはい、今度みんなで被って赤い三連星やろうな。あーなんかカツレツが食いたくなってきた。」

「カツ?」

「トンカッツー、シグも好きだろ?」

「好きだ、大好きだ!」

 熱烈な告白をされてしまった。

 おーい、しっぽが振りちぎれるぞ。

「先生、豚肉ありますか?」

「おお、幾らでもあるぞ。培肉場に連れて行ってやろう。」

 梅肉?

 聞き間違えたかな?



「きゃんっ!」

 シグが一鳴きしてオレの頭によじ登りガタガタ震えている。

 ぐわしりと爪を立てしがみついているので白いメットを被っていなかったら大惨事だったよ。

「おーい、シグや。せめて抱っこさせてくれ。首が折れそうだ。」

「ぅぅ…。」

 震度四か、五あたりを維持したまますっぽり腕にはまってくる。

 すんすん、あー、癒されるわ。

「先生、肉スラなら肉スラって言って下さいよ。シグが怖がっているじゃないですか。」

「肉スラ?ああ、昔逃げた畜研三号が下界で繁殖したらしいな。あんな物と一緒にしてくれては困る!ここで培養しているのは畜研の最新培養肉、トリプルナンバーズだ!」

「食品安全性評価はちゃんとしているんでしょうねぇ?」

「なに、エリクサー飲んどけば大事には至らん。」

 駄目だろ、それ。

 クリアガラスの巨大な槽の中で、見るもおぞましいぬちょぬちょ生物がぬちょぬちょしている。

「特にこの培養槽は日々エールとオルガン生演奏を与えて育てた最高級シモフリンだ。」

 なんか、ぽーぽーと聴こえているのはオルガンか。

 ちらと音源の方をみやると肉スラ、もとい、肉肉しいエルフ婦人がたおやかにオルガンを演奏していた。

 二の腕がふるふると実に豊かだ。いや、曲想の感想ですよ?

「手の込んだ飼育には感心感服いたしましたが、人体実験の被験者になるつもりはありません。ナチュラルミートは無いんですか?」

「あー、うーむ、魔族の肉、とか?」

 先生が言うなり、遠巻きにしていた畜研スタッフらしいエルフ達のジトーッとした視線。

 いやいや、オレらは食えないからな?

「いきなりブラック発言やめて下さい。あと、ヒルダさん、背中に爪を立てないで下さい。誰もヒルダさんを食べたりしませんから。どんな意味でも。」

「赤竜以外はねー。」

「いやいや、赤竜も吐き出してん。」

「良かったですねえ、好みの味じゃなくて。」

「り、竜ごときに我の高尚な滋味が理解出来る筈が無かろう!」

 滋味って、あんた。

「残念です。いっそ、ココで風味豊かに育てて貰います?エールと生演奏付きですって。」

 背中のヒルダさんを剥がして肉スラ槽に押し付けてやると、餌と勘違いしたか、肉スラ達がわらわら寄って来た。

 駄目だよ、仲間を食べようとしたら。

「ひぃぃぃ!」

「あ、ガラスに亀裂が。」

「ギャンッ!」

 あ。………シグたんがちびった。



「改めまして、トールのニコニコキッチンです。」

 ぷんすか。

「今日はシグたんが大好きな肉料理。」

 ぷんすか、ぷんすか。

「材料は魔王が仕留めた赤竜です。特設キッチンにて同じ竜族のシャイロックさんが捌いてくれています。」

「一緒にすな!アホウっ。」

 シャイロックさんより罵声が飛んで来た。恐ろしく鮮やかな刃捌きでずんどこ肉塊を生産中だ。

 その脇でふんすと小剣を振るい、こま肉を作成中なのはシグたん@激おこ中。

 うん、そっとしておこう。

「えー、赤竜のお味のほどはこれいかに?では早速、新鮮なレバーを使って禁断のアレをまず一品。」

 かの名高きレバ刺しである。

 エリクサーを水差しに用意してあるが、一応鑑定しておくか。

<赤竜の肝。当たるも八卦当たらぬもユッケ>

 鑑定スキル、やっぱり壊れてないか?

 仰せのままにユッケも作る事にする。

「なんか、生々しいわね。」

 カティが皿を覗いて眉を顰めた。

「まあ、生肉ですから。」

「何だこれは、脂みが足りん、脂みが。」

「はあ。あの、どちら様?」

 脂身満載のエルフさんがいつのまにかアシスタント位置に収まりばくばくと味見している。

「五つ星リストランテ クッテ・ミ・ローヤのオーナーシェフとは私の事だが。」

 毎度、オレの耳がすみません。

「ええと、クッテさんとお呼びすれば?」

「私の事はシェフ、と呼びたまえ。ファイブスターでもいい。それより、何だその生肉、否、生臓物は。料理の基本も知らない輩が包丁を握るとは片腹痛いわ!」

 うーわ。また面倒な奴が出て来たよ。

 山腹さん(仮)、何だかんだ文句をつけながらも一皿レバ刺し完食である。

「…ふん。」

 そしてユッケは飲み物じゃないですから?

「えーと、素人料理なのであたったらすみません。」

「笑止。寄生虫と鉛玉が怖くてジビエが食えるか!」

 とか言いながらもしっかりエリクサーをがぶ飲みしていらっしゃいます。

 そうそう、エリクサーをちゃんと仕入れておかないとな。

「トール!俺様にも早く食わせろ!」

 肉塊に八つ当たりして気が晴れたのか、ようやくシグが口を聞いてくれました。

 よしよし、いくらでも作ってやろうな。

 カツを揚げるつもりだったが、シグの切り刻んだミンチを使ってメンチカツにしよう。

「ん、次は何を作るつもりだ?」

 手元を覗きにきたエルフ氏、あんたの腹が背中に当たってるって。

「ルキさんー、山腹雄山をどっかに連れて行って下さい!片っ端から味見されちゃいますよー。」

「え、ごめんね?ボク、今手が離せない。むしろ助けて?」

 おっと、あちらはあちらでご婦人の群れにおしくらまんじゅうされている。だが今回ばかりは全く羨ましくない。

 イケボが脂肪塊の中からヘルプを出してきたが、自分で何とかしてくれ。

 あの集団からの救出は国際救助隊が必要だ。

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