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エルフという輩 7

 我、手に持つは伝説のお匙。

 くっ。右目が疼くぜ。

「それでは上から読んでみたまえ。」

「だから、見えませんて。」

「一番上も?」

「俺様は読めるぞ!は、ん、に、ん、は」

「やす?」

「読めるじゃないか。」

「いやいや、見えてませんから。」

「トール、ずるいぞ!俺様の番だろ。や、す、く、さ。全部読めた!」

 犯人生やす草?www?

「視力は中だな。もう少し度を上げよう。」

「だから、真っ暗なんですって。宇宙に居る様な。」

「何故そう言える?君は宇宙へ出たことがあるのかね。」

「ありませんが。ないですけれども。」

 面倒くさい。

 エルフ族との会話はその一言に尽きる。

「うむ、おかしいな?どれ。」

「あ、やめ…」

 サングラスを取られてぱたりと診察台に押し倒される。

 そのままエルフの医者はふるふると震えるオレの頤に手を当てた。

 吐息が感じられる程、顔が近づく。

「トール、痙攣してるぞ?大丈夫か?」

 シグ、見ちゃダメだ。お前にはまだ早すぎる!この先は十五を過ぎてからだ!

「しまった、後頭部をぶつけたか。シグちゃん、そこの瓶を取ってくれ。」

 容赦なく液体、多分エリクサーが後頭部にぶっかけられた。

 痛え。

「装着っ!」

「その掛け声、いきなり外す前にも何かつけて下さいよ、全く。」

「マシーンが無いとやはり動けないかね?」

「はい。」

「仕方ない。では掛けていたまえ。」

「簡単に言いますけどねぇ、顔を洗ったり起き抜けにはいちいち装着してもらわないといけないのは困るんですが。」

「眼鏡係がいるだろう。」

 ピシッと医者がオレの傍を指す気配。

「いや、要らないから。」

 相変わらず真っ暗で存在感が無いのが幸いだな。

 どうやらヒルダさんが今も控えているようだ。

「トールどのぉ、眼鏡を外してはなりませぬぞ!」

 鼻息が荒い。

 鑑定しなくても分かる。ヒルダさんに眼鏡萌えされている、うざい。

「兎に角、眼鏡タイプで無いマシーンを作って下さい。」

「おお、それな。そんな貴方に。トール専用神界の光を遮るマシーン!」

 うへえ。嫌な予感しかしない。

 案の定、またも眼鏡を取り上げられてぶっ倒れたオレに「装着っ!」されたのは。

 あー、これは、アレだ。

「こ、これは!尊い、尊いですぞトール殿ぉ!ぴぎゃ、」

 とりあえず鬱陶しいヒルダさんを黙らしてから自分の顔を撫でる。

「トールっ!格好いいなっ!」

 うん、小学生メンタルには栄えるよな、きっと。

 さわさわと触れた感じ、額に三本の角めいた突起があり、つるんとした素材で、襟足付近がすそ広がりなヘルメット。

「さあっ、感想を述べたまえ!」

 手中に鏡を押し付けられる。

「見える、見えるぞ!」

 ようやく視界クリアでめっさ見えるんだけどさあ。うわあ、嬉しくねぇ。

 チラ見したら、ざ・和風なのっぺり顔の青年が白い兜を被っていた。うん、似合わん。

「どうかね?」

「これ、顔だけじゃなく頭も洗えないですよね?」

「頭を洗う時はガワを外せばよかろう?」

「飾りかよっ!」

「格好いいだろう?」

 辛い、辛すぎる。

 風体は想像していた通りエルフらしいスリムな美形のおっさん先生がオレから取り上げた兜部分を被って、ポージングを決めた。

 シグが目をキラキラさせている。

「イケメン爆ぜろ。」

「何か言ったかね?」

「先生、難聴ですか?」

「ふっ、そんな事を言っていいのかね、君ぃ。これを、見たまえ。そして感謝するがいい。」

 渡された水晶盤にはむっちり弾けそうな巨漢達が写っていた。

 耳が尖っているからにはエルフなのだろうが、肥満にも程がある。

「ご親戚ですか?真ん中の人、なんとなく先生に似ているような?」

「私だ。君が担ぎ込まれる前の、私だ。」

「はあ。」

「興味深い被験体が現れて、皆で寝食忘れて研究に没頭した結果が、見よ!この居た堪れない貧弱な身体に。」

 いや、痩せてよかったんじゃないか?

「頭髪もこの通りだ!」

 テカテカ脂ぎってつるぺただった結い髪がキューティクルつやつやのロン毛のポニテ。

 変わっているんだかいないんだか判断しかねるが普通にイケメンじゃねーか、くそ。

「かように身も細る程、精魂込めて作り上げたマシーンなのだよ。恐れ入りたまえ。」

「恐れ入りましたしハイカロリーフードを提供しますから、頭部装着タイプではない、せめて変身ベルトか、出来れば指輪ぐらいのサイズ感に仕立ててくれませんか?」

「何?今、なんと?」

 がばりとイケメンエルフがオレにのしかかって両手を握りしめた。

「嗚呼、そんな。先生、いけません、ぶぎゃっ、」

 妙なアテレコをしてくるヒルダさんに蹴りをぶちこんだオレは悪くないと思うぞ。

「せ、せんせー、近い、近いから!」

「そんな事より今なんと?」

「ベルトか指輪型でマシーンを作り直してくれないかなーと。」

「その前だ!」

「え、ええと、恐れ入谷の鬼子母神?」

「配下ロリ、」

 やめれ。

 魔王がロリ化しているのはオレの所為では無いし、そもそもオレの方が下僕ってる。

「ハイカロリー飯ですか?」

「具体的に?」

「はあ。食いつくのそこですか。えーと、バターライスとか?先生、肉と炭水化物とどちらがお好きですか?」

「揚げ物だ。」

 即答だな、おい。

「俺様は肉だぞ!にーくっ、にーくっ!」

 シグたんの、肉コール頂きました。よしよし。肉な。

「ふ、ら、いっ、ふ、ら、いっ。」

 先生よ、エルフのイメージがどんどん崩壊していくからそのコールはやめてくれ。

 二人の要望を満たすにはトンカツか唐揚げか。

「か、い、せ、ん、どんっ。」

 こちらはどさくさに紛れたヒルダさんのリクエスト。

 あの山越をしたのを忘れたのかねこの人は。

「海の幸、用意してくれたら作りますよ?カア子、召喚しますか?」

「ろ、路傍の草でいいですぅ。」

「サラード デ モーヴェーズ・エルブ、オーダー頂きました。」

「え、何か作ってくれるんですか?」

「オレの得意料理だ。」

 下校中に摘んだ雑草サラダ。よくウサ子とラビ太に作ってやったなあ。懐かしい。

 皆んなに迷惑かけたからな。

 よおし、腕によりをかけてご飯を作るか!

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