エルフという輩 5
とーる、起きなさい。いつまで寝ているの?
日曜ぐらい寝坊させて。
朝ごはん食べて、片付かないでしょう。
あとで食べるよ。
お兄ちゃんは早起きしたわよ?
とーる、今朝のキュアは神回だったぞー。
知らねーよ。オレは眠いの!
とーる、起きなさい。
トール。
「トール!」
眩しい。
かーさん、カーテン締めて。
オレは寝たいんだよ。
「トールぅ、」
ハナ、くすぐったい。
「ん、」
散歩、後で連れて行くから。も少し寝かせて…。
「んん、」
「トール、目を覚まして。ちゃんと、飲みなさい。」
だからご飯は、後で、こふっ。
「ごほっ?!!」
『げほっ、』
「あー、勿体無いわねえ。」
誰かが盛大に咳込み、カティが呆れている。
「あんたが欲しがっていたエリクサーじゃないの?こんなに零して。」
べたべたとオレになすりつけるな。
「、」
文句を言おうとして口に突っ込まれている何かに気がついた。
「ごふっ、」
「お?取ったるさかい、動くな。」
シャイロックさんがオレの喉からぬるりと管を抜く。
「ひう、」
空気が美味い。
何なんだ?病院か?
誰か明かりを落としてくれないかな。
眩しい。
「どうやろか?」
「身体はもう大丈夫か。後は自我がどれだけ残っているか。」
知らない人の声がして、ぶちぶちとオレの身体のあちこちから管を抜いていく。
いや、まだ治ってないよ。
身体が動かない。
それにひどく眩しい。
「馬鹿ね、全く。」
「そう言わないで。祝福はご遠慮出来るものでは無いんですから。」
「…アイツは遠慮してたわよ。」
「アイツって誰だ?」
「貴女もでしょうが。」
誰かがオレの頭を撫でている。
「けほっ、」
嗚呼、咳こんでいるのはオレか。
インフルかな?みんな、近くにいたら感染るぞ。
「トールぅ。」
シグの哀しそうな声が聞こえている。
ごめんなー。オヤツもおもちゃもオレが預かったまんまだよな。
眩しい。
眠い。
ふわふわする。
寝かせて。
もう、少しだけ。
「トールっ、いつまで寝ているの!起きなさい!起きるのよっ、」
「姐さんっ、ちょ、やめえな。」
ぎゃああああっ!!!
いくら万能回復薬が手元にあるからと言ってもですね。
目覚ましがわりに肋骨粉砕ってあり得ないだろう?
「ひう、」
「無茶しますねえ。」
誰かが素早くエリクサーを流し込み、間違いなく陥没していたであろう胸を診察?している。
「意識も多少はあるようだ。」
多少どころかありますから。あるから!
眩しくてよく見えないのと、身体があまり動かないけど耳は聞こえてます。
「まあ、この調子で声をかけ続けてやるといいでしょう。」
「わかったわ!」
「カティちゃん、どつくのは声かけじゃないからね。」
ルキさん、ナイス!怪力魔王を留めてくれ。
おかげで眠気は十二分に吹っ飛んだとも。
意識がある事をなんとか伝えないと、カティに撲殺されそうだ。
何だっけな。昔の映画でそんな話があったような。
ぴこん、と愚兄のスキルが教えてくれた。
<『ジョニーは戦場に行った』>
それな。
それ、なんだけど、身体は思うように動かないしモールス信号も分からない場合はどうすればいいのだろう。
この眩しいのも何とかならないかなあ。
っと、そうだ。アレを。
ぽとり、と現れたサングラスを皆がぽかんと見つめている気配。
「これ、何?」
「サングラスやな。」
「だから、何でここに?」
「前にトールが買うてたわ。」
「トールさんが出したのかな?見て?似合う?」
ルキさああん!
あんたなら何でも似合うでしょうけど、今はオレに掛けてくださいよー。
「聞いて下さい。えー、サングラスと掛けまして。」
「サングラスと掛けまして?」
「天人ルキウスと解きます。」
「その心は?」
「どちらも遮光(社交)的。」
「おー、成る程。」
「えへへ。」
大喜利してないで、オレにサングラスを。
「何か意味があるんですか?トールさん。早く目を開けて下さい?皆んな待っているんですよ?」
「ひう、」
こんなに眩しいのにまだ目を開けろって?
オレは一体どうしちゃったんだ?
『それねー。うーん。』
のんびりした気配が苦笑まじりに応じてきた。
このフレンドリーな物言いは、ダナス神様?
『そうそう。どう?気分は。』
はあ。何かふわふわしています。
『あー、やっぱり?しまったなー。』
あと、眩しいです。
『君ねー、半分くらい神界に来ちゃってるから。』
は?
『ま、もうちょっと頑張ってみたらいいよー。エルフ達が何とかするだろうから。』
何とかなるんですか?
てか、何故にオレが神界に?
『や、君も悪いんだよ?時を止めるなんてマジ神罰モノだからね?』
げ。
まじか。
『マジマジ。神の領域だよー。』
すみません、何卒洪水は!
『洪水って、君きみ。水神じゃないんだから。何?泳ぎたいの?』
いえいえ、滅相も。
『緊張感の無い人だねえ、君は。自分の状況が気にならないのかい?』
なってますよ!勿論。この風邪、いつ治るんですか?治るんですよね?
『風邪じゃ無いって。竜に襲われて時間を止めたの、覚えてない?』
そ。
そうです、そうでした!
オレ、竜に喰われたんですか?死にかけですか?だから神界に?
『や、全然元気だと思うよ?あー、やっぱり覚えてないんだねえ。君、なんて神頼みしたか。』
神頼み、ですか?
ご本人を前にして何ですが、あの状況で神頼みは多分オレ、しませんよ。もっと心にゆとりがないと。
『神頼みしろよー。ってかさあ、病気怪我治して下さいっていう願いばっかり飽き飽きなんだよね。竜に襲われて危機一髪なんです、助けて!とかいうシチュ?なんで呼ばないのさ。』
そんなんで呼んで、助けて下さるんですか?
『ま、大抵は放置だね。いちいち聞いてたらキリないよ。』
はあ。どうしろと?
『だから、神頼みしろって。君、加護持ちだよ?祈ればチラ見ぐらいしてやるから。だから、』
どんっ、といきなりダナス神の気配が大きくなってオレを押し潰した。
『時止めはもうするなよ?』
は、い。
『それと、神界に入り込んでいるのは魔王の肩替り。君はあの時こう祈ったんだよ。ーーーカティを助けて』




