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エルフという輩 1

「ただいまあああ?ちょおおっ!」

 土産を携えて意気揚々と半月ばかりの旅から戻って来たオレを出迎えてくれたのは荒廃した館だった。

 あれれー?おかしいなあ。

 確かに城は革命勇士諸兄がどら猫王を取っ捕まえる為に物々しい雰囲気であったが、この城下町の館はそんな気配とは無縁のおっとりした空間だった筈なのだが。

「あ、トールとヒルダおばちゃんと竜のおっちゃんだ!」

「おー、シグたん。ただいま。で?一体何があった?」

「おばちゃんはやめてえええ!」「お兄さん言うてえな?」

 いやいや、あんたら齢何百年だよ。

「俺様、一宿一飯の掃除をしたぞ!」

「うん?」

 どやあ、と胸を張っているシグたんかわええ、わしわし、おー、シグたんも気持ちよさだ。わしわしわし。

「…シグ、お前風呂入っているか?」

「…え、も、もちろん。」

 入ってないのかー。

 すんと、匂いを嗅ぐと土とお日様の匂いと牛乳を拭いたあとの雑巾のフレグランス。

 獣人は鼻が効くんじゃないのかよ。

「カティとルキさんは?」

「カティなら厨房で働いているぞ。俺様は掃除当番だ!」

「なんだって?!」

 ルキさんがついていながら二人を下働きさせたのか。

「ルキはマダムとお出かけだ。」

 見損なったぞ、ルキさん。

 カティとシグたんを働かせておいて自分は有閑マダムとおデートか。

「ごめんな、シグ。そんな事になっていたなんて…。」

「ほら、この床、ピッカピカだろう?」

 うん。そこだけピッカピカだな。

 ちょっと磨滅している気もするが、気のせいに違いない。

「偉いな!床磨きをしたのか。」

「おう!泥んこの跡なんかもう一つもないぞ!」

「泥?そ、そうか。」

 きっと泥んこの犬でも乱入してきたんだろう、うん。

「えーと、カティの様子を見に行ってくるな。」


「あー、もうっ最っ高!褒めてつかわすわ!このケーキ…うふふふふ。」

 厨房からは実に幸せそうな高笑が聞こえます。

 藁束で鍋底こすらされているんじゃないのかよ!

 大根飯を食べているんじゃねえのか?

「カティ!」

「もぐ。あー、早かったわねー。ぱく、ごくん。残念、最後の一口食べたとこ。」

「そ、そ、そんなあ!うぬれ、魔お」

「ヒルダさん、あっちで皿洗っていて下さい。カティ、自分だけおやつタイムか?シグは床掃除していたぞ!」

「獣化したシグちゃんがどろっどろにしたから掃除させたのよ。日没までに綺麗にしないと尻尾の毛を抜くわよって言っておいたんだけど、綺麗になってた?」

「…そ、そうなのか。」

 そうなんです、と厨房にいた館の使用人さん達が悲痛な顔で頷いた。

 あまりの惨事に、ルキさんがマダムを館の外へエスコートしている間に総出で片付けて、最後の拭き上げをカティがシグに命じたのだそうな。

 色々お世話おかけしました。


 翌朝、まだ疲れも抜けぬまま早々にオレ達は旅路へと戻ることにした。

 魅惑のルキさんがワイルド系むさ男になっているんですもん。風呂、入ってなかったよね?

 長居して館の修繕費を請求されたらたまらない。

「食料買い出しはしなくていいのか?」

「そうよ、トールのなんちゃらクッキングはいいの?」

「準備は万端です。」

 あんたらが寝ている間に厨房を借りてストックしましたよ。

 旅と言っても当分は馬車に揺すられるだけから、少々無理をして夜中に料理しまくりました。

 味見と称して片っ端からつまみ食う奴も、アレを作れコレを作れと菓子ばかり作らせる奴も居なかったからそれはそれは捗りましたとも。

「野菜は食べないぞ!」

「魚は骨を取ってよね!」

「食べなくてもいいですよ、別に。」

「す、少しなら食べてもいいぞ?」

「そ、そうね。何ごともチャレンジよ、シグちゃんっ。」

「良い心がけです。さ、シャイロックさんが馬車の手配を済ませる間にもう一仕事しますよ。ルキさん、シグ、パンツでそこに並んで。」

「はい?」

「何だ?」

 アホの子たちは首を傾げながら庭先にパンツで並ぶ。

 ふ、ふ、ふ。

 出でよぬるま湯!

「ミデアムボイルドウォーターアターック!」

「にゃあっ?!」

 シグたん、犬系じゃなかったっけ?

「シャボンプッシュ!」

 ちょっと魔術の構築を思いつかなかったのでここはハンドパワーです。

 もう一度お湯をかけてからの。

「ウインドブロー!」

 程よい温風で乾かし。

「チェンジザニューウエアー!」

 朝からギャラリーのメイドさん達に背後を向いてもらい、パンツから着替えてもらいましたよ。

「あとは、髪を梳かしてルキさんは髭を剃って下さいね?」

 やれやれ。

 これで腐った牛乳臭とはさらば出来るよ。

 ルキさん土産のパンツが早速役立ちました。

 程なく用意出来た馬車に乗り込むとオレは即座に安らかな眠りについた。



『トールと愉快な仲間たち』

 シグたん>外を見ている

 カティ>おやつを食べている

 ルキさん>翼の毛づくろい

 ヒルダさん>昼寝

 シャイロックさん>こそこそ暗器の手入れ中

 オレ>ものの半時間で叩き起こされてシグたんが窓から落ちないか見張りつつ、カティに菓子を出し、ルキさんの抜けた羽を掃除し、ヒルダさんに膝枕して、シャイロックさんの怪しげな作業を見ないふり



 目指すはエルフの里!え?ダンジョン攻略?

 まずは回復アイテムの準備でしょう。

 セイ、エリクサーちょうだい!

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