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いつあショッピングタイム 5

 売る物と土産に持ち帰る女子垂涎の物を仕分けるという文左衛門さんの手伝いにヒルダさんを残し、オレはシャイロックさんについて目利きの勉強がてら市場を更に散策中。

 ざっと鑑定しても、レアな物にはしっかり高額の値がつき、お手頃価格の商品は鑑定でもそれなりでしかない。

 貴重な金属で出来た名工の鎧、1.000ゴールド、旅人のマントは5ゴールド、みたいな感じ。


 と。

「トールはん、これは買いでっせ。」

 シャイロックさんがキラリンと目を輝かせた。

 こ、これは。

「…えーと、ですね。」

 コメントに詰まってうっかり立ち止まってしまった。

 売り子のおっちゃんが期待の眼差しで揉み手をしている。

「お客さん、目が高い!これは私が嫁に逃げられながらも足掛け十年かけて作り上げた女神像です。」

「せやろ?苦労しはったな。おっさんの人生かけた逸品や。」

 だあっ、重い、重いよ。

 そんな事を聞かされたら買わないとか値切るとか、出来ないじゃないか。

「いやあ、でも。オレよりもっと信心深い人が手にした方が…。」

「いや、貴方が、貴方こそが、この女神像にはふさわしい!」

 うっく。

 そりゃあ、確かにオレはこの手のフィギュアに目が肥えておりますが。

 誰のせいとは言わないが、兄貴の薀蓄が絶賛炸裂中です。

「えーと。なんで、この女神様はニーハイをお召しになっておられるのでしょうか。」

 絶妙の絶対領域みなのは分かりますけれども。

「生のおみ足では恐れ多いからです!」

「ロングスカートの像にしたらいいのでは?」

「流石です、お客さん!そうも思いまして、こちらも作りました!」

「なんで着ぐるみ着ているんですかっ。」

 しかももふもふブタさんです。

 いや、尊いですけどね?

「そしてこちらは、神々しい有様を具現化してみました!渾身の作です!」

 わーお。例の紐きたお。

 そら、こんな力作を作り続けられたら嫁さんも逃げたくなるよな。

「シャイロックさん、ちょっと。」

「何や?」

「何でこの店なんですか?他にも真っ当な掘り出し物はあると思いますが?」

「いいや、これや。これがええんですわ。絶対、高値になります。」

「まあ、好事家はそのうち現れるでしょうけど。」

 いや、モノは良いんですよ?

 兄貴ならひれ伏し拝み倒しヨダレを垂らして欲しがる出来栄えだと思います。

 でもね。

 この世界では神様って、存在証明なんか不要なぐらい、いらっしゃるんだよな。

 割と下界にフレンドリーで、ルキさんのような『お気に入り』を通してコチラを見物している節がある。

 オレといえば、そう気に入られているかは甚だ疑問だが、何柱かの神様とはコネクタ済みで加護も戴いている身だ。

 そんなオレがですね、こんなけしからん、ごほん、神々しい立像を所有しているのがバレて御怒りに触れたらどうするんだよ。

「ちなみにこの女神様はどなたですか?」

「サーラ神とフローラ神とイリア神です。」

 あー。あの三女神なら…いいのかなあ?

 ルキさんの土産にでもするか。

「ちなみにお幾らですか?」

「ありがとうございます!一体百万円ですっ。」

「高っ!」

「あっ、あのっ。では三体で百万円…。」

「高いです。無理。」

 このおっさんはオレの給金が幾らだったと思ってるんだ。

 兄貴なら稼ぎの九割方をオタク趣味に注ぎ込み兼ねないが、理性のあるオレには無理である。

 次男坊は堅実かつ現実的なんだよ。愚兄を見ているから。

「いくらモフモフを再現していても、いっくら例の紐の食い込み具合がよろしくても、いっっくら絶対領域が神懸かっていても、オレには出せませんよ、その金額は。あと二百年もしたら世間の目も肥えて億の値がつくかもしれないし、今でも目利きの方は一体三百万でも払ってくるでしょうが、オレには残念ながら出せません。この肌の質感といい、髪の細工といい、申し分ない出来だとは思いますけれども。オレが裕福な貴族商人に見えますか?実に全く残念ですが。」

「あのう。ならば、私が購入しても良いでしょうかね?」

「待て待て!先に目をつけたのは俺だぞ。」

 カモかもん。

 声高に話すオレを遠巻きにしていたギャラリーの輪がいつしか縮まり、勇者が現れた。

「どうぞ、オレは退きますのでじっくりご覧になって下さい。神々しくも愛らしい、凛々しくも柔和な、気高くもおくゆかしい三女神様のご尊顔も実に素晴らしいですよ。」

「ほげ?ふむ、ほげか。あー、うん。素晴らしいほげですなあ。」

「ほげ中のほげだ、よし、買った!」

「いやいや、私が先に、」

「いや、それはわてが先に目をつけたもんでっせ?」

「何を、わ、竜人!」

「ひいい、こ、ここは穏便に、」

「お。ありがとさん。」

「ちょっとちょっと、シャイロックさん。何をしてるんですか。」

 せっかくウィンウィンになる様にしてフェイドアウトするつもりが、あんたが引っかかってどうするよ。

 しかも危険回避に袖の下を渡されている。

 竜人の立ち位置がそこはかとなく知れたな。

 三女神像様。どうか安らかにヲタ、ごほん、信者さんの元で存分に崇め奉られて下さい。


「なんで買わんのや?アレはええもんやで。」

「はいはい、そうですね。」

 結局、他にめぼしい物は見つけられず、さりとてあの女神像を買う気にもならなかったのでシャイロックさんの商人レベルはよく分からないままだ。

 オレの鑑定スキルではなかなかいい商売人だと出ているのだが、押し売りも売り上げの内だと思えば一概に信じて良いものか。

 ルキさんには着替えの肌着を、シグたんにはスパイシージャーキーを、カティとヒルダさんには摩訶不思議な色合いの菓子を土産に買ったし、もういいかな。

「あとは…、」

 お。

 探せばあるもんだ。

「これとこれ、下さい。」

「またおかしなもんを買いよりますなあ。」

「お待たせしました。オレの買い物は終わったので戻りましょう。きっと文左衛門さんが苛々していると思いますよ。」

 ヒルダさん、ドジっ娘属性満載だからなー。


 大したフラグを立てたつもりはなかったが、案の定戻ったらヒルダさんが正座をさせられていた。

 激おこな文左衛門さんから壊れたランニングマシンを大枚叩いて買い取りさせて頂きましたよ。

 マジ、この魔族売れないかな…。

とっくに明けまして、今年も宜しくお願いします

日本酒を嗜むと言語能力が霧散しますね。

暮れに用意した酒瓶が尽きましたのでぼちぼち更新していきます。m(_ _)m

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