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いつあショッピングタイム 1

 魔族とやらに転生して素晴らしいと今日ほど思った事は無い。

「これも、あれも、それも、と、きゃー可愛いっ、これも下さい!」

 もはや天誅と切り掛かってきた武士女の姿はかけらもなく、買い物を堪能しているヒルダさんから次から次へと渡された荷物をそそくさと仕舞っていく。

 ヒルダさん、自分のスキルで仕舞えばいいのにエスコートの男性に預けるのがマナーだとかなんとか、押し付けてくる。

 エスコートというか完全に引率の保護者である。

「支払いはこれで。」

「おい!」

 オレはクレカでもモバイル財布でも無いんだが。

「いい女に貢いでこそ男振りが上がるってもんでしょ。」

「なるほど一理ありますが、貢ぐ価値があるかどうかは当方に決めさせて下さい。」

「買って下さい、何でもしますー。」

 ヒルダさん、いきなり土下座は辞めて下さい、ほんと。

「買いますよ、買えばいいんでしょ?後でお金返して下さいよ?」

「わーい!」

「いい男に貢ぐのも、」

「シャイロックさん?トイチでよければお貸ししますよ?」

「く。」

 シャイロックさんの発する声に断末魔の注釈がついたよ。

「服やアクセサリーもいいですけど、そろそろ本題の回復グッズを探しに行きたいのですが。」

 エリクサーを仕入れられたらいいのだが売っているかな。

「そやそや。わても脚を治したいんですわ。」

「そうですね。さもなきゃ、いい杖を買って下さい。」

 こちらにおっさんラブ嗜好がなければ類い稀なイケメンだからといって引っ付かれるのは苦行でしかないんですよ。

「その脚、どうしたんですか?」

「あー、これな。あのデブ猫に、」

 そうだった。

 牢の最奥に収監されていたこの人だ。余程酷い目に遭わされて…。

「腹が立って蹴りかました時に傷めたんや。」

「同情したから金下さい!」

「何でやっ?!」

「さあ?」

 昔、そういう文化があったとかなかったとか。

「大体なんで捕まったんですか?安物を売りつけたのがバレましたか?」

「薄利多売は正当な商売や。」

「じゃ、偽物を売りつけてバレましたか。」

「ぱちもんも立派な品物や。」

「風天の虎とか呼ばれません?」

「お、かっこええですなあ。風天の龍、うん、フーテンのドラと呼んでください。」

 シャイロックさんもカティの知人だけに安定の残念系でした。見た目、マフィアの金庫番風なのに発言が三下過ぎるよ。


 そんな戯れ言を言いながら、蚤の市を奥へと進んで行く。

 蚤の市、などというからこじんまりとした古物市かと思っていたが、実際に着いてみるとやたら盛大なマーケットであった。

 つい、ヒルダさんの買い物意欲に引きずられて足を踏み入れてしまったが、本当なら二、三日はゆっくり旅の疲れを癒したいところである。

 ちょっと買い物に、のつもりで連れ出されたオレはシャイロックさん先導のまま、馬車で旅すること一週間、猫人国ミャアランドと狐人国コンコンリアの国境まで来ていた。

 この両国緩衝帯に出来たのが、獣人大陸ネオパーク屈指のマーケットなのだという。

 これから行く予定の無限ダンジョン周辺にもそこそこ大きなマーケットがあるらしいが、出物はダンジョン関連に絞られるようだ。

「竜人国にはマーケットは無いんですか?」

「そもそも国もありまへんわ。わてら竜人は人口も少のうて、大抵の連中は旅してますさかい。」

「そうなんだ。竜人は人間と見分けがつかないんですが、何か区別する方法ってあるんですか?ほら、オレら魔族は髪や目が黒いし、翼も生えてきますけど。」

 ヒルダさんが得意げに翼をぱたつかせている。

 オレはいつになったら生えるんだろうな。

「何言うてるんですか。わてら竜人と言うたら金の目と逆鱗に決まってますやろ。」

 目、ねぇ。細すぎて分からないよ。

「ちょっと失礼します。」

「痛った!何しはるんですかっ。」

 失礼して瞼をぐいっと押し上げたら確かに爬虫類めいた縦虹彩の金の瞳がありました。

 そして、頬にうっすら鱗痕も浮かんだ。

 マーケットの喧騒が一気に静まる。

 あれ、おかしい。

 身体が動かない。

 急に気温が下がり、寒くてたまらない。

「ドラ、場所を弁えろ。」

 ヒルダさんが武士女に戻ってシャイロックさんを叩いた。

「竜人か、」

「おい、竜人がいるぞ。」

「誰がターゲットだ?」

「巻き添えを食らうぞ。逃げろっ、」

 色々突っ込みたいけど寒くて歯が合わないので鑑定スキルを発動してみる。

 …何ですか?暗殺者モードって。

 戦闘値がどんどん上がってゆく。やめて、スカウターが壊れちゃう。

「あそこに百円玉が落ちている!」

「え、どこですか?」

 ヒルダさん、ダメです。作戦は悪くないのですが、索敵値が上昇しました。

 ポンコツだと思っていたヒルダさんだけど、この異様な殺気の中で平常運転とはおみそれしました。

 ついでにヒルダさんも鑑定。

 KYモード。

 使い所を間違えると人間関係壊す奴な。

「いい加減にしろ。トールが蟹になっているぞ。」

 今は大変見習いたいスキルでヒルダさんが諌めてくれる。

「おっと、こりゃ失礼。」

 へにょり、とシャイロックさんの気配がゆるんだ。

 オレが蟹?なるほど、上手いことを言う。

 気絶寸前で口から吹いていた泡を拭って、這い蹲っていた地面から立ち上がるとゆっくり土埃を払う。

 その一挙一動を、やり過ぎたかと気まずそうなシャイロックさんと、緊張が解けて八の字眉毛のヒルダさんが見守っている。

「竜人の売り物が何かわかった気がします。」

「…やっすい、ぱちもんですわ。」

「これ、どうぞ。」

 アレクセイさんから預かっている金貨の袋をどさりと手渡す。

「うは。」

 思惑通り、咄嗟に受け取ってしまいましたね、シャイロックさん?

「契約成立ですね。」

「は?」

「ダンジョン攻略し終えるまで貴方も『トールと愉快な仲間たち』の一員です。」

「………あ、ははは!おもろい、冗談いわはりますな。」

「じゃ、それ、返して。」

「………………………。」


 こうしてフーテンのドラことシャイロックさんもパーティメンバーになりました。


<『トールと愉快な仲間たち』パーティ構成

 リーダー:金狼獣人アレクサンデルシグムンド(通称 シグたん)

 漢気 lv9・剣技 lv8・体力 lv3・愛嬌 lv99

 アタッカー:光の天人ルキウス(通称 ルキさん)

 優しさ lv9・気遣い lv8・衛生 lv3・籠絡 lv 99

 アタッカー:魔王エカテリーナ(通称 カティ)

 剣技 lv9・口撃 lv9・体力 lv2・ツンデレ lv99

 シューター:竜人シャイロック(通称 フーテンのドラ)

 殺気 lv9・索敵 lv9・商人 lv2・細目 lv99

 タンク:旧氷帝ヒルデガルド(通称 ヒルダさん)

 防御力 lv3・武士道 lv3・女子力 lv3・ポンコツ lv99

 引率:新氷帝トール(通称 トール)

 荷物持ち lv9・炊事当番 lv9・抱っこおんぶ要員 lv9・その他雑用 lv99>

 大体こんな感じだろうけど…バランス悪っ!!!

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