表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/137

買い物をしよう 5

 パリの空は青かった。

 行ったことないけど。


 どうやら市民革命が成功したようで、凱旋パレードが行われている。

 猫耳の皆さんがにゃんにゃんと楽しそうに踊っている。尊い。

「トール、キモいぞ。」

「猫ダンスなんてどーでもいいわ。布団で寝たい。シャイロック、あんたこの辺詳しい?いい宿に連れて行きなさい。」

「案内賃、なんぼですか?」

「皆さーん。こちらの猫人さんが屋敷に招いて下さるそうですよー!」

 輝くルキさん、流石です。


 ルキさんを誘ったら薄汚れた面々がずらずらついてきて、マダムは引きつった顔をしていたが、風呂を頂き、着替えて晩餐の扉を開けると感嘆のため息で迎えられた。

 オレを除いて。

 光の天人ルキさんは言わずもがな。

 黙って座っていれば美人のヒルダさん。

 黙って座っていれば美少女のカティ。

 黙ってなくても可愛いシグたん。

 そして、清潔になったシャイロックさんは残る傷痕が影を落としていい感じに危険な男を演出している。

 くっそー、こいつもイケメンか。

 そのワイルドな傷痕も、シャイロックさんが竜人だと知れたとたんに供された上級ポーションで綺麗に消えてしまった。

 上機嫌なマダムの相手はルキさんに任せて、オレ達は皿まで舐め尽くすように食事を平らげてから早々に退散した。

 別にオレは食後のデザートと酒を楽しんでもよかったのだが、カティとシグたんが体力の限界で欠伸を連発し始めたからな。

 決して誘われなかったからじゃないぞ!

「カティはん、一体どうなってるんです?」

「あふ。トール、説明しといて。」

「いいのか?この人信用して。」

「いいわよー。別に裏切られたらぶった斬るだけだしー?」

 いつものツンツン節が出るくらいだから大丈夫かな。


「魔法が使えない?ほな、寝首のかき放題か。」

 カティとシグの事はヒルダさんに任せて、シャイロックさんに事情を説明した。

 この人も大概悪徳商人ぶるけど、そう言ってしまっている時点で本当はカティを心配しているんだよな。

 多分。

 もー、みんないい年して拗らせ過ぎだろ。

「まあ、そういう訳でカティの為にも、シグたんの為にも、アレクセイさんの為にも無効の指輪を手に入れなければならないんですよ。」

「アレクの女装…ぶは、そら見ものやな。」

「傅きたくなる程、クールビューティでした。」

「もともと高貴な血筋やったらしいからな。」

 あれ?

「シャイロックさんはアレクセイさんの素の姿をご存知なんですか?」

「ああ、あん人を魔王に売り込んだのはわてやさかい。」

 はうっ。き、聞かなければ良かった。

 カティとシャイロックさんに売買された過去があるのか、アレクセイさん。

「ど失礼な事考えておまへんか?」

「奴隷商とは存じませんでした。」

「あほう。顔繋いだっただけや。そもそもアレクが大人しう売られなんぞするか。」

「ですよねー。」

 でもなー。アレクセイさん、ああ見えて抜けてるところがあるからなー。

「という事はシャイロックさんも魔王軍のなんちゃらっていう二つ名持ちなんですか?」

「あー、兄さんそうか、生まれたてのホヤホヤか。わてら竜人て言うたらバリバリの商売人や。金さえ払ろうてくれれば魔王はんでも勇者はんでも誰とでも仲ようしまっせ。」

 うーむ。

 そんなに韜晦したいのなら、そうだな。

「分かりました。じゃあ、取り引きをしましょう。オレは鑑定スキルがあるので、その使い方を教えてください。代わりにシャイロックさんが鑑定して欲しい物を鑑定しますよ。」

「…兄さん、おもろい取り引き持ちかけまんな。気に入りましたわ。ほな、明日、蚤の市に参りまひょ。儲かりまっせ?」

 シャイロックさんの細目がくわっと瞠いてるよ。

「望むところです。」

 出来れば回復系のアイテムを買いたいな。

 明日が楽しみだ!



「蚤の市?興味ないわ。売れそうな物も誰かさんのお陰で捨ててしまったしー。あ、そうそう、これでも換金しておいて。」

 よだれ垂らして寝ているヒルダさんを押し付けられました。

 この人が同行するといちいち面倒なんだけどなあ。

「それとこれもね。」

「何です?これ。…計算尺?」

 目盛りが刻んである円盤状の物を受け取ると少しくらっとした。

 魔石が仕込まれているらしい。

「あ、それはわての!」

「城の宝物庫に落ちてたから拾ってきたわー。」

 …そうか、落ちていたなら拾っても構わないよな。

 裏返してみたらシャイロックと名前が書いてあった。

 やるな。

「はい、これ。お返しします。」

「おバカ!タダで返すなんて!」

「おおきに!トールはんは徳のあるお方ですわ!」

 カティはこれを見つけてシャイロックさんの救出に一手間かけた訳か。

 この二人の関係はよく分からないままだが、何となくカティが気を許しているのはわかる。

 仲間でもなく、信頼も無いが、そうだな、腐れ縁?親友?幼馴染?そんな言葉がしっくりくるような。


 ふと情景が浮かんだ。


 魔王が勇者と戦いをやめた時。

 アレクセイさんら魔王軍の人達も、勇者の背後の人間達も、皆、二人に怒りを露わにする中で。

 細い目をさらに細めて好機ですわとばかりに両陣営で逞しく商いを始めるシャイロックさん。

 武器や鎧をお金がわりに受け取って、ポーションや平服、家族へ手土産に出来るような菓子やら人形やら刺繍の小物なんかを売りさばきホクホク顔のシャイロックさん。

 きっと売ったのは安物なんだろうけど。


 大人なカティがふんわり笑っている白昼夢を追い払い、オレ達はヒルダさんを叩き起こして蚤の市へ出かけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ