買い物をしよう 4
オレの持っているポーションでは効き目が弱いのか、声は掠れたままでよく聞こえない。
「なんや、カティはん。随分、けったいなお姿で。ははーん、この兄さんそういう?」
「何をおっしゃられているか良く聞こえませんが、違いますからっ!」
「またまた。潔く、幼女萌え、幼女好き、ようじ」
「バンされるような事を言うなあああ!どちらかといえばマシュマロオッパ痛ててて!」
「痛ででで!何でわてまで。」
見た目はロリ仕様でも中身はえげつない魔王ばーさんである。
制裁はアレクセイさんに負けず劣らずで、引っ張られた耳が千切れるかと思ったよ。
「トールっ、ポーションあと五瓶ぐらい、流し込んでやりなさい!この可憐で華奢なボディでは担げないんだから、自分で這えるぐらいまでは回復してよねっ。」
「借りは作りたくないんだがな。」
一転、竜人さんは低く呟くとオレの出したポーションを一気に飲み干した。
真剣な顔で牛乳飲んでいる奴がいるとさ。
つい変顔してみたくならないか?
その結果、顔面に牛乳を噴き出された経験、男なら誰でも一度はあるはずだ。
「われ、何してくれとんじゃ?姐さんのポーション、吹いたけんのうなったわ。」
「つい出来心で。すみません。」
ちなみにポーションはオレのですけどね。
「謝罪には誠意が必要やろ?な、兄さん。」
この人は一体どういう人なんだろうか。
「で、治った?歩ける?」
「あー、無理ですわ。姐さんにしては安もんお使いですねえ。」
「借りを作りたくないんでしょ?儲けさせてあげるから働きなさいっ。さ、トール?ボーっとしてないでそいつを担いでずらかるわよっ。」
ずらかるって言っちゃってるよ…。
「じゃ、肩貸しますから後で三下さいね。」
「一だな。」
「びた一文まかりませんよ。」
「1.8。」
「三。」
「2.1。」
「三。」
「2.」「三。」
状態異常:血反吐
「ぐはあ!さ、三で。」
アレクセイさん、ありがとうございます。貴方のスパルタ指導のおかげで勝ちました。
いやほんと、この人何なんでしょうね。
「兄さん何者ですか?」
「トール、あんたって何なんなの?」
え?そこオレ?
「魔王め、まさか我らを囮にして既に逃げたりは…、」
「カティちゃんならあり得そうだねえ。ボク達ももう行く?」
「うぬれっ!」
「お、トールの匂いだ。おーい、ここだぞー!」
「あ、待ってましたよー、トールさあん。」
ルキさんの日和見は向日葵も見習いに来そうだ。
こっちだって色々、大変だったんだよ。
竜人さん、ことシャイロックさんに肩を貸して牢を出たとたんに、逃げ出していたサイコさんが待ち構えていて魔王vs殺人鬼のリアルバトルを至近距離で観戦する羽目になったり、その最中に正気の近衛さん達が御用提灯掲げて押し寄せてきたり。
逃がしてあげたうちの一人が海賊王で、一味が救出に来ていてお礼に秘宝の地図をくれたり、別の人は市民軍のリーダーで、お姫様と恋仲だったり。
あと何があったかなー。
あ、そうだ。
「ヒルダさん、そのお金は人民の人民による人民の為の、お金なのでお返しして下さいね。」
「え?」
状態異常:難聴
いやいやいや。
「いーのよ?猫ババアしても?お、ば、さ、ん。」
「か、か、か、か、返すに、決まって、」
状態異常:離魂
こらこら、オレを殺人犯にしないで下さい。
ピンっと小銭をヒルダさんの足元に飛ばす。
「はっ!お金っ!」
「はっ!おぜぜ!」
シャイロックさん、何故貴方まで這い蹲って小銭を探していらっしゃるのでしょうか。
ヒルダさんが無事反魂したところでさっさとずらかりましょう。
「ヒルダさん、後で宝の地図をあげますから今は逃げますよ?」
「トール殿おおお、嘘ついたら槍千本刺すからっ!!!あと、泣くっ。」
「はいはい、海賊王から謝礼に貰った本物です。だから行きましょう?」
「信じるぞ?信じて、良いのだな?」
「いいから走りなさい。それとも置いて行く?」
カティが、くいと背後を指差す。
オレ達は必死で走り出した。
「喰らえっ奥義マタタビ拳!」
「駄目ですよ、マタタビ撒いたら。市民軍の人達も戦闘不能になるじゃないですか。」
「ではいかに戦えと言うのだっ!」
「普通に。頑張って。流石、氷帝様!」
「も、氷帝じゃないもん。」
「痛!痛ったいわー。もん?もんって、いわはりました?うっわ。」
シャイロックさん、ヒルダさんとは初対面らしいのだが容赦ない罵倒です。
どうやら小銭の奪い合いで負けたのが悔しかったらしい。
「ふん、トールの背で何かほざいている輩がいるわ。貧弱、貧弱ウ!」
「わては商売人でっせ。金塊より重い物は振るえませんがな。」
金塊より振り回せるなら充分に戦えるよシャイロックさん。
完全復活すればヒルダさんより戦闘力も断然高そうだ。
「なんか失礼な事考えたな!」
「いえ、知力体力時の運すべてヒルダさん負けてるなとか思ってませんよ?」
「勝ってる!勝ってるからーっ。わたし、おんぶされてないもんっっっ!」
「そうだぞ、トールっ。おばちゃん、頑張っているんだぞ?」
シグたん、今、トドメ刺しちゃったねー。は、は、は。




