買い物をしよう 1
「もー。いい加減泣き止みなさいよっ。」
オレは今、猛烈に男泣きをしている。
「びどいぢゃないでずがあっ。あんなぼうぼうがあるならざっざどじでぐだざいよーっ。」
「あんな方法って言うけどねっ、どれもこれもあたしにとっては大切な」
「ゴミの山ですね。」
「俺様はお宝の山だと思うぞっ?」
「そーよそーよ。メモリアルなお宝の山よっ。」
ほほう。
あたしが何とかするわと大言を吐いたカティがやおらバックヤードから取り出して浜辺にどどんと積み上げたのは、ルキさんの言う通りどう見てもゴミだった。
百歩、いや、千歩譲ってガラクタ、またはシグたんのおもちゃだな。
壊れたゴーレム、肉を食べた後の竜骨、謎のモノリス、不気味に光る岩、へしゃげた宇宙船ぽい何か、その他諸々、ルームランナーにエアロバイク、ぶら下がり健康器具だかハンガー掛けだかも積んである。
大きな物から細い物までしまってあるなとは思っていたが、崖をよじ登る足掛かりになる程しまっていたとは思わなかったよ。
オレの決死の覚悟もゴミの山で肩代わりされたかと思うと、情けなくて涙が止まらないぜ。
「カティ、この骨貰っていいか?」
「いいわよ、シグちゃんっ。価値が分かるのはあんただけねっ。」
「おう、俺様は違いが分かる漢だからなっ。」
竜骨一本貰ったシグが尻尾をぶんぶん振っている。
嬉しそうで癒されるわ。
「びどいぢゃないでずがっ!」
「ぐえ。」
酷いのはあんただよ、ヒルダさん。
オレが何をしたって言うんだ?
華麗なる飛び蹴りでオレをルキさんの抱擁から蹴りだすとすっぽり腕に収まってすんすん泣き崩れる。
そこ、オレの鼻水付いていてばっちいぞ?ぷんすか。
「ヒルダさん、ご無事だったんですね。良かった。」
「ま、魔王の悪逆非道許すまじ!うえーん。」
海に放り込んだのは確かにカティだが、崖の上にぽにょったのは浜辺で暴れている大王イカもどきだぞ?あいつの非道は放置か?
「誰のおかげで遭難から脱出出来たと思ってんの?頭が高いわよっ?」
「ぞりゃあ、魔法を使わなぐでずみまじだがね。」
「トール。これを使え、な。」
シグたん、気が利くな。
ちんまりと差し出してくれたそこいらの葉っぱでちんと鼻をかむ。
しっとり保湿成分配合の良い葉っぱじゃないか。少し摘んで行こう。
「さあ、次はこの密林踏破よっ。ヒルダ、街はどっち?」
「ぐすっ。あっち、かな。こっち、かも。」
この人、本当に八将が一人だったのかね。
「そっちですよ。さっさと行きましょう。カティが出し惜しみしていた所為でオレの持っていた食料は底をついていますからね。」
「……カティ、もう一本骨持って行っていいか?」
「いいわよっ、シグちゃん。二刀流ねっ。」
骨は腹の足しにはならないと思うけどな。
過酷な旅であった。
雷獣の棲からパジャマに裸足でさまよった時にはこれ以上過酷な試練は無いと思っていたが。
「もー歩けません、もー無理です、お腹も空きました。」
「ぎゃあっ!誰か、助け、助けてええ!」
「トールっ、おんぶよっ。」
「俺様は抱っこだ!」
「みんなさー、自分で歩けよなー。もー、オレだって空きっ腹にへとへとなんだよー?あとヒルダさん、蜘蛛の巣は潜るんだよ、潜るのっ。」
このメンバーで引率者一人って辛くね?
シグたんを抱っこし、カティをおんぶし、ルキさんの手を引いて、ヒルダさんを時々救出しています。
鑑定スキルも常時発動中。
「カティ、頭の上の実を取れるか?美味いらしいぞ。」
「ぐぬぬぬ、トールっ、背伸びしてっ。」
無茶言うなよー。
「カティちゃん、ボクが高い高いしましょうか?」
へろっていたルキさんがこういう時だけは復活する。
いやいや、食人植物に食われそうになっているヒルダさんを助けてやれよ。
「シグ先生、出番です。お願いします。」
「俺様に任せろ!」
ちっさい剣を掲げてシグが斬り込んで行く。
シルバータグは伊達じゃ無い!
「全く、ヒルダは気をつけて歩けよなっ。」
そういう君もちょこりんと抱っこに戻って来ないで欲しいよ、可愛いけど。
シグによる格付け現況。
一位 カティ。
二位 シグ。
三位 オレ。
四位 ルキさん。
五位 ヒルダさん。
多分こうだと思う。ルキさんの下だったら凹むなー。
そんなこんなで浜辺を脱出してから丸二日、密林を彷徨ったオレたちは、ついに幻のエルドラドへ到達した!
じゃなくて。
「そこの魔族達!止まれっ!」
おー。人だ。
「ご飯くれるなら泊まりますとも!」
「ご飯っ?」
ゾンビヒルダさんが復活した。
「武器を捨てろっ!」
「くっ、背に腹は変えられんっ。」
ヒルダさん、決断早いなー。
「捨てたら拾うんでしょー。やあねえ。」
まあ、拾うとは思うが、ネコババはしないんじゃないかな?猫耳生えてるけど。
「ふんっ。骨は武器じゃないからなっ。」
シグがぽいっと剣を投げ捨てる。
「偉いぞ、シグたんっ。ご飯のためだもんなー。」
「わかったわよ!捨てりゃいいんでしょっ。剣ね?」
「武器ってちゃんと言われてるよ?」
「ちっ。」
まず、腰に下げていた小剣を捨て、そのあとバックヤードからざざざと武器を取り出す。
「もう一回くらい崖を登れそうだな。」
投石器と岩とか、もう出さなくてもいいんじゃないか?
オレ達を誰何したのは凛々しい騎士然とした獣人達だったが、今や尻尾が萎えてドン引きしているよ。
「あんたも出しなさいよ?」
「へいへい。」
オレもアレクセイさんから預かっている武器を取り出す。
例の伝説級の武器シリーズな。
「ボクの武器は…笑顔?」
この際、ルキさんも捨てておくべきか。




