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ダンジョンまで何マイル? 5

 結論から申します。

 ばあちゃんのギフトは何の役にも立たなかったぜ。


 そりゃそうだ。

 こんな断崖絶壁を登るおばあちゃんの知恵袋があったら蜘蛛男は要らないよな。

 無人海岸サバイバル五日目なう。

 恩返しなのか仕返しなのか判断し難いが、かあ子が上空から鰯を投げ落としてくれなかったら食料も底をついておりました。

 ワイキキビーチさながらだった砂浜が今やクレーターだらけです。ワイハ、行ってみたかったな…。

「肉!肉が食いたい!肉っ。」

「ケーキっ、ケーキがいい!」

 感傷に浸る間も無いか。

 …仕方ない。

「カティ、シグ。頼みがある。」

「聞くだけ聞いてあげるわ。何?」

「もし、オレが…」

 ああ、嫌だな。

「もしもだ。オレが闇堕ちしたら、」

 かあ子みたいな獣になるのか、それとももっと何かやばい奴になってしまうのか。

「訳が分からなくなって、皆んなを襲おうとしたら、」

 こんな事を頼むのも嫌だし、頼まれるのも嫌だよな。

「ちゃんととどめを刺して欲しい。」

 五日かかって漸く下した決断だから。

 どうか。

 許して欲しい。


「じゃあ、カティ。魔力を貰うぞ。」

「何をする気ですか?トールさんっ。」

「そうだな。海水を凍らして階段を作る、なんてどうかな?」

 だってさ。

 ヒルダさんから血抜きする事も出来ないし、ましてやシグの尻尾を切るなんて無理だろう。

 ルキさんの髪は、まあ、禿げてもいいかなとは思うけど、そもそも召喚されてくる何かが役立つ保証は無い。

 最悪、オレ達が餌になる可能性がある。

 魔王級の災厄になってしまったかあ子は、幸いにも海の幸にはまっているらしくほぼ洋上で過ごしているが、次もそうとは限らないからな。

「そ?あんたが覚悟しているなら止めないけど。」

 カティは見事にブレないツンツンな台詞を吐いたけど、きっと心の中では、まさかそんな嘘よね、と、思っているに違いない。

 違いないよな?うーん。

「トール、俺様に任せろっ!」

 シグたん、ここは胸を張ってシルバータグを見せびらかす場面じゃないよ?トールさんの偉大な決意を涙ながらに止めるとこだよ?

「トール殿っ、見事なお覚悟、介錯は我に任されよ!」

 うん、この人の為には死にたく無いなっ。

 皆んな、オレの心が折れるのを狙っているんだろうか?

「トールさん、ボクは貴方の勇姿を語り継ぎたいと思います!」

「オレもあんたの鳥肌を語り継いでやるわ、ルキさん。」

 全く、もー。

 五日間の逡巡を舐めんな!

 むんずとカティの頭を鷲掴み、ぐももももーっと魔力を吸い出し。

 吸い出し?


 あれ?


「カティ、抵抗すんなっ。止めないんだろ?」

「何のことかしらー?抵抗なんて?あーれーやめてえ?」

 ニタニタと小馬鹿に笑う魔王に思わずデコピンをする。

「痛っ、あにすんのよっ!」

「大人しく魔力を寄越せ!」

「はあん?寄越せ?誰に物を言ってんのかなあ?」

「ぐはあ!」

 623もほんとやめてください。

「トール、もう悪者になったのか?退治した方がいいのか?」

 まだ、まだだよ、シグたん……。

「げほっ。オレの身を案じてくれている、のかどうかはいまいち分からないが、他に方法は無いだろう?このままだと、仲良く飢え死ぬぞ?」

「飢え…トオルウウウゥゥ。さらば!」

「まだまだまだだって!」

 ヒルダさん、貴女の本気、見せて貰いましたっ。

 カティが庇ってくれなかったら、オレ、真っ二つだったよ…まだ闇堕ちとかしてないからな!っていうか何もまだしてないぞ?

「カティ、頼むよ。オレだって怖いんだ。こういうのはさ、格好つけて勢いでさくっとやらかしてしまいたいんだよ、せめて、な。だから魔力を、分けて下さい。」

「誠意が足りないわっ。ひれ伏して頼みなさい?」

 ああ、くっそ。

 ツンデレ魔王め。

「お願いしますっ!」

 見よ、華麗なるorzを!

「ほーっほっほっ。下僕はこうじゃなくちゃねっ。ヒルダ、見習いなさいよ。」

 背中に片足乗せて高笑いの魔王様。

 そろそろ、オレもキレていいかな?いいのかなっ?

「仕方ないわねっ。その下僕根性に免じて、あたしが何とかしてやろうじゃないの!」

「で、出来るのかっ?」

「逆さ吊りはいやあああ!!!」

「黙れ。」

 ヒルダさんが海にふっとんで行った。

 容赦ないな、カティ。気持ちは分かるけど。

「妖魔召喚は辞めてくれよ。何が出てくるか分からないんだろう?」

「………あんたの覚悟に胡座かいて魔王なんて名乗れないでしょ。ほら、そこ退きなさい。」

 やばい、安心したら視界が滲んできた。

「トールさん。ここはカティちゃんに任せようね?」

 ルキさんがオレにそっと胸を貸してくれた。

 この人は、ほんと無駄に優しい。

「だずげでえええ!」

 オレは遠慮なくルキさんの服に涙と鼻水を擦り付けたが、嫌な顔もせずにオレの背中をさすっている。

 無事脱出出来たら汚服を洗濯してやろう。

「ぎゃあああ!」

「なあ、ルキ。おばちゃんがなんか叫んでるけどあっちはほっといていいのか?」

「あっちは管轄外かな。ボク、水濡れ厳禁だから。」

「水濡れ厳禁?」

「だって、ボクから水が滴ったらマズイでしょ?イケメン過ぎて。あははは。」

 ルキさん、あんたも風呂に突っ込んでやるわ。

「ぎええええぇぇぇ………」

 海中から見事な放物線で人影がすっ飛んで行った。

 脱出一号はヒルダさんか。

 貴女の勇姿、しかと見届けました!

お読み頂きありがとうございます。

当分、不定時間投稿が続きますが宜しくお願いします。

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