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ダンジョンまで何マイル? 2

 イケメンの背中に手羽元と手羽先が生えている。

「トールっ、俺様は焼き鳥が食いたいぞ!」

 気持ちは分かるが今それを言っちゃ駄目だよ。

「なあ、ルキさんや。羽根が生えてくるまで人型に変身しておいたらどうかな?」

「っ!女神の加護が無いと魔方陣は発動しませんよっ。ボクは魔力無しなんですから!」

「わかった、わかったから縋りつかないでくれ!オレの魔力で良ければ提供するから、な?」

 それよりルキさんが、臭い。イケメン臭ではなく、普通に臭い。

「あのさ、ルキさん。着替えとかしてる?」

「必要有りませんよ。」

「でも、加護今ないじゃん?服、汚れるよな?」

「え?」

 なるほど、カティがルキさんではなくオレにおんぶをせがむ訳だ。

「ルキさん、風呂と着替えを、ってカティっ、おまっ、何やってるんだ!」

「妖魔召喚っ、ルキウスの羽根喰らい来たれ大鴉、呼ぶは我エカテリーナ!」


「トール、やっぱり唐揚げが食いたい。」

「かあ!」

 シグたん、空気読もうな。

 どう見ても餌はオレ達の方だ。

「見込んだ通り、ルキの羽根は極上の触媒ねっ。さあ、かあ子ちゃんっ、あたし達を乗せてどこまでも行くわよっ!」

「かあ!」

 はいはい、さっさと出発しましょう。かあ子ちゃん、でかすぎて街道脇の木までなぎ倒しています。



「山だ!」

「山脈な。」

 クライマー垂涎の険しい山々が連なっております。

「森だ!」

「ジャングルな。」

 時々上空にまで獣の咆哮が聞こえてきます。

「川だ!」

「河だな。」

 文明が五、六個発祥しそうな大河です。

「海だー。」

「広いし大きいな。」

 大洋が広がっております。

「島だ!」

「あー。噂のラピュテルは本当にあったんだー。」

 かあ子様々です。

 これ、かあ子が居なかったら十年経ったって辿り着ける気がしないよ。

 クリーエルを出立してから、はや三ヶ月。

 かあ子の餌に生えては毟られ、未だにルキさんの背中には寒々しい鳥肌の翼がご存命だ。

「ボクの存在は一体なんなんだ!」

 多少、ルキさんが病んでしまったがまあ仕方ないよね?

「あによ?羽根が駄目なら毛髪もいけるわよっ。禿げる?禿げとく?」

「魔王の狼藉、今成敗の鉄槌を下し」

「ヒルダの寿命でもいいわよっ。それとも豪快に腕の一本も贄にしちゃおっかなー?」

「ふ、ふ、ふざけるな!そ、そ、そんな脅しになど屈しはせぬ!」

 ヒルダさん、オレを盾にするのはやめれ。

「なー、あとどれくらいで着くかなあ。」

 そろそろ補給しないと飯がもたない。

 オレ達はルキさんの羽根を飯がわりになんてできないもんな。

 眼下には海洋が広がっている。

 麦わら帽子が欲しいぜ。

「アレク情報によれば、次の大陸の割と沿岸域にダンジョンは有るはずよ。」

「そうか。じゃあダンジョン近場の街に降りて買い出ししてからいよいよ探索だな。」

「俺様は照り焼きが食べたい!」

 シグは鶏一択だな。

 君の食べているチキンさんは肉スラなんだよ、本当は。

「沿岸域だと海の幸も何かあるかな。」


 ヒルダさんに食いつかれました。

「う、み、の、さ、ち!」

「はあ。」

「それは氷帝の名にかけて制覇しなければ!」

 氷帝の名をかけてしまうのか。じゃあ、イカ焼きとか、海老マヨとかで済ませるのは不味いな。

「鯛やヒラメの活き造りや、タコのおどり食い、栄螺の浜焼き…否!ウツボだ。シーサーペントだ、クラーケンだ!雲丹に鮑に蟹!ヒルデガルドさんっ、海女さんは気合いですっ!行ってらっしゃいませっ!」

 アレクセイさんがたんまり持たせてくれた伝説級の武器のうち、いい感じの槍を選びヒルダさんに渡してからダイビングをしてもらいました。

 いやあ、オレも大分この世界に慣れたよな。

 地球では飛行機から女性を海につき落とそうなんて考えもしなかったぜ。

「トール。俺様は好き嫌いしないからな。何でも食べるからな。」

「あ、うん。」

 シグが涙目でガタガタ震えている。

 そういうつもりではなかったのだが。そもそもヒルダさんは皿まで食べてくれるしな。

「ほほう。野菜、ちゃんと食べるな?」

「食べる。食べるから、海に落とさないでくれ?」

「やだなあ、シグたん。オレがそんな鬼畜にみえるかい?」

 やれやれだぜ。

「かあっ!」

 お利口に旋回でヒルダさんの漁を待っているかあ子も否定してくれている。

 オレほどジェントルな男は居ないよな?

「かあっ、かあかあっ!」

「あらら。ヒルダが飲み込まれたわっ。」

 何だって?!

「槍も、ですか?」

「槍よりヒルダさんの心配をして下さいっ!」

「ヒルダを食べた魚なんて食べたくないわよー?」

「俺様は、残さず食べるぞ!」

 偉いぞシグたん!そして、カティ、あれは魚じゃない。

「あれは鯨だ。あれを食う描写は色々面倒くさいぞ。」

「ヒルダさんが食われる描写は構わないんですかっ!」

「構わないんじゃないか?」

 だってあの人に持たせた槍は……。


 鯨、そう呼んではみたが厳密には鯨もどきの巨大な海獣は、今や腹を見せてぷかぷか浮いている。

 雷撃槍。

 どんな生き物も食らえばイチコロの電撃を仕掛けてくれる、頼もしい槍だっちゃ。

 鯨の腹が中からすぱんと割れてヒルダさんが這い出してきた。

「うおのれーっ!」

「焚き火を渡るつもりはありませんからご安心下さい!それよりヒルダさん、後ろに高級食材が!」

 かーにっ、かーにっ、蟹ーっ。

「食らえ、テスラの雷!」

「ひぃぃぃ!」

「ああっと、右から伊勢海老がっ!」

「ぎゃあああ!」

「続いて左からも鮑が!」

「ーーーっっっ、と、取ったどおお!!!」


 ヒルダさんのバックヤードが海の幸で潤沢になりました。

 よかったな、ヒルダさん。海産物の宝石箱や。

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