ダンジョンまで何マイル? 1
「そうですか。それはお辛かったですね。」
「我は、我は…」
「もう、そんなに頑張らなくても良いんですよ?貴女は充分に役目を果たしたと思いますし、これからは自分に優しくしてあげましょうね。」
「で、でも。」
「大丈夫、ボクには判ります。貴女は本当に素晴らしい人だ。」
おーい、ルキさん。その辺にしておけ。
ヒルダさんの目がハートマークになっているぞ。もう、手遅れか。
ヒルダさんが天誅かましてきた時には完全スルーだったくせに、その正体がぽんこつ、もとい、非力な乙女だと知ってからルキさんのホスト魂が炸裂している。
ホスト魂と言っては両方に失礼か。
だってルキさんのタラシ文句は一文にもならないからな。
美男美女が仲良く白と黒の翼をはためかせて歩く様はまるで絵画のようだ。
一方のオレは。
「疲れたーっ。抱っこー。」
「おんぶーっ。も。歩かないーっ。」
「あんたら、子どもかっ。」
「「子ども!」」
休日のテーマパークにあるあるのおとーさんの様になっております、嫁はいないんだけどな。
マイカーが欲しいぜ。
「だから馬車を借りようって言ったでしょうが。」
「えー。馬車は狭いんだもーん。」
「揺れるからヤダ。」
「じゃあ、歩け。今すぐ降りろ、オレから。」
「「疲れたー。」」
どないせいっちゅうんだ。
「まだ歩き始めて二時間も経っていませんよ?こんなペースで進んでいたらいつダンジョンにたどり着くのやら。」
「さあ?十年も歩けば着くんじゃない?」
「は?」
いまなんと?
「前回アレクに探しに行かせた時は五十年ほどかかっていたけど、今回は場所も分かるし百年はかからないんじゃない?」
計算は、合っている。
アレクセイさんが五十年かかるクエストなら、このすちゃらかパーティでこなすには攻略本があったって百年位はかかりそうだ。
いや、でも、待って。
光速宇宙船があるらしい世界なのに、何故に車や飛行機が無いんだよ。
そもそも無効の指輪、レプリカ作れないのか?
「なあ、カティ。」
「いいわよ、別に。」
「………何が?」
お、背中が軽くなった。
自分で歩く気になってくれたか。
「元々あんたには無関係だもの。付き合わせて悪かったわね。」
そう、くるか。
さて、どうやって攻略してくれようか。
むしろデレさせない方が難しいテンプレツン振りである。
『歩き疲れて妙な気を回すな。ほれ、おんぶしてやるから。』
…いまいちだな。それにシグを抱っこしている現況、出来れば歩いて欲しい。
『無関係なんて水臭い。オレとカティの仲じゃないか。』
特に何も関係はない。きっぱり赤の他人、強いて言うなら主人と下僕、いやいや、無関係の方でお願いします。
『気にするな。オレもダンジョンに行きたいだけだ。』
ぶっちゃけ、行きたくは無い。
「何、ニヤニヤしてんのよ。いいからさっさと街へ戻りなさい。送って行かないからねっ。」
「急かすなよ、今迷っているんだから。」
「迷う必要なんて無いでしょう。」
お前はウニか、ウニなのか!
「カティ、オレの元の世界はな、人類が滅亡したんだと。」
「だから?」
「それでオレはこっちに転生してきて、最初は山の中を独りで彷徨っていたんだ。」
「魔族あるあるね。」
「じゃあ分かるだろ?」
「…分かっているわよ!上手いこと仕事にありついて、住む場所も仲間も出来て、一生洗濯洗ってなさい!王都への道はあっちよ!」
魔王様、見た目五歳さんは仁王立ちで胸を張り、ビシッと反対の方向を指差した。
「トール、帰っちゃうのか?」
帰りませんとも!
「トールは俺様がゲットしたんだ!やだやだやだ、一緒に旅してくれ!」
するする、しますとも。カティも見習って素直になれ。
「トールが居ないと、俺様のご飯もおやつも着替えもおもちゃも居なくなるじゃないか!」
「そっちかっ!いや、いい。シグたん可愛いから許す!カティも、遠慮すんな?存分にデレてくれ?」
ツンなカティをデレさすには、これだっ!
「何これ?」
じゃじゃーんっ。
「りんご飴だっ!」
かもーんっ、せい、『あ、ありがと』。
「た、食べ物ですかーっ?!トール殿お、」
ヒルダさん、どっから湧いて出た?
「とにかくですね。オレは行きたくないなどとは言ってもないし思っても無いですから。」
「…それでこそ、あたしの下僕ねっ。」
これはデレに入るのか?
あー、もう、口の周り真っ赤にして。
ヒルダさんまで。
…ルキさんもな。
「りんご飴美味いな!今度はベーコン飴も作ってくれ!」
シグたん、それは飴にしない方がいいと思うぞ?
「愉快な仲間たちとの旅は楽しいですよ?ただ目的を考えると百年もかけてダンジョン攻略ってどうなんですかね。他に解呪の方法は無いんですか?せめて、飛行機?飛行船?なんかでダンジョンに早く辿り着く事は出来ないんでしょうか?」
ほげに変換されちゃうかな?
「そういや飛行艇なんてものもあったわね。」
「一応言っておくけど、ボクがみんなを抱えて飛ぶのは無理だよ?」
「わわわ、我も不可。」
うん、オレも二人に命預けて空飛ぶのは無理です。
「ルキ、羽根を貰うわよ!シグ、毟って!」
「え?え?え?ちょっと、本気ですか?」
「カティ、何する気だ!」
「煩いわねっ。生贄よっ。コイツを生贄にしちゃうわよっ。」
魔王様はにたありと笑った。




