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書を持たずして旅に出よう 4

「アレクセイさん。一つ難解な事象が起こっています。」

「大袈裟だな、何ごとだ?」

「アレクセイさん、今翼が生えてますよね?」

「結界の中だからな。それがどうした?」

「何故服を着ているんですかーっっっ!」


 今日も鉄拳は健在でした。


「うっく。クールビューティアレクセイさんの、3.14を心の拠り所にして旅を続けて来たというのにっ。」

「若いわねっ、若さ故の誤爆ねっ。どうせ筋トレおたくのパイなんてカチカチよ。揉むなら断然こっちがおススメ!」

「ひゃっ!」

 元氷帝ヒルデガルドさん、隙だらけだな。

 お名前の通り本物の女性でありますし、アレクセイさんと並んでも遜色ない美人さんなんだけど中身がポンコツで残念すぎるお方です。

 オレにも一応節操ってもんがあるんだよ。

「やあアレク、久しぶり。もうそのままで居ないかい?それならプロポーズするんだけど。」

「相変わらずだな、ルキウス。シグ、腹は減ってないか?」

 げんなりとアレクセイさんがルキさんの抱擁をかわし、シグたんを抱き上げる。

 尻尾ーっっっ、めちゃくちゃブンブン振ってるよ。

「俺は肉が買いたかったのに、トールが病気で、カティが甘いものばかり買って、牢屋に入れられて、葉っぱだらけになって、ルキの翼がぼとってして、そしたらトールが本をピカッてして、カティが殴って、馬で連れて行かれた後、馬車でここまで来たらこのおばちゃんがボール遊びもしてくれるんだぜっ。」

「少し日記でもつけさせるべきか。」

 お勉強の前にシグたんには落ち着きが必要だと思います。

「おば、おば、」

「あらあらあらあら、お肌曲がって水も弾かないのは風呂上がりに大変ねっ。ほーっほっほっ。」

 カティさん、貴女も品の無い高笑いはいかがなものかと思いますよ?


 所詮オレには他人事なのだがどうにも話が進まない。

 アレクセイさんも心得たものでしばらくして大量の料理や菓子が運ばれて来た。

「これ、食べていいのぉぉ?」

 ヒルダさんが手を組んで涙を浮かべている。

 ステイタスに空腹が付いているよ。

 所持金、三百円。所持品、グレイトバナナの皮。

 おいおい。

 ルキさんを見れば、所持金は七百円、所持品も赤いリュックのみ。

 中身は入っていないのかいっ。

 おかしいなー。

 鑑定スキル、壊れているのかな。

「半眼で睨まないでよ、キモい!」

 カティの所持金は一十百、いっぱいだな。

 所持品も大きなものから小さなものまで沢山バックヤードに詰め込んでいる。

 アレクセイさんも、うん、金持ちだ。

 そして高級な物とシグたんメモリアルな物でバックヤードはいっぱいだ。

 シグたんファーストシューズ。

 シグたん足型。

 シグたん最初の抜け毛で作った毛筆。

 シグたんの最初に描いた絵、書いた字。

 エトセトラエトセトラ。

 記憶水晶?おお、ビデオもあったか。

「ルキウスと無事会えたのなら<生命の書>入手の算段はついたか?」

「もへが、ほーふがかふてにふかつて、」

「ほふなふだ。ふかってふかってふかーってふかったんだ。お代わり!」

「くう!魔王めっ。それは我の肉っ、嗚呼あっ最期の一枚を!許さじ!」

 一人静かなルキさんはメイドさんと仲良く語り合っていた。

 アレクセイさんの憂い顔、ゴチです。


「で?」

 はいはい。ほうれんそう、大事ですよね。

「<生命の書>ですが、はい、貰いました。」

「は、早いな。」

「そして、使いました。」

「何?では何故シグ達は…。」

「瀕死のルキさんに使いました。だって、そもそもルキさんが貰ったもんですから、仕方ないですよね!ね?」

「そ、そうか。それは、仕方ない、か?」

「仕方ないんですよ!そういう訳で他の候補を探してみようと思います。アレクセイさんはお詳しいですが、どこも攻略した事があるんですか?」

「実際手にしたのは指輪だけだ。本はルキウスに使われた事がある。」

 ルキさん、使い方知っていたのか。

「あれ?貸しがあるのはアレクセイさんの方では無いんですか?」

「そうだ。アイツらの生活力の無さは酷すぎる。最初の借りはとっくに返済どころか百万倍返しだ。」

「なるほど容易に想像出来ました。それはそれとして行き方が想像もつかない暗黒星雲と、アレクセイさんの役には立たない老化水は後回しでやっぱり指輪探しに行くのがベストかと思いますがいかがでしょうか?」

「暗黒星雲はエルフの里から軌道エレベーターで宇宙ステーションに行って、そこから光速宇宙船に乗り、」

「冗談ですよね?」

「さあ。エリクサーをよこした賢者がそう言っていたが?」

 のおーっ。牧歌的ファンタジーワールドかと思いきや似非SFも付属かよ。

「ウラシマ効果でめっちゃ時間がかかると思います。」

 オレはどうせ身内もいないので、頂上狙っておかえりーとか言われてもいいんだけどさ。

 シグたん、成長しちゃいますよ?

「そうか、無限ダンジョンに潜ってくれるか。」

 あっさり無かった事にしたな。まあ、仕方ないか。

「はい。それが妥当だと思います。」

「わかった。あそこには少々詳しい。攻略情報を教えておこう。」

「お願いします。」

 さあ、メモメモっと。

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