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冒険の始まらない 5

「ところで、水着は売ってないかしらっ。」

 いつもの調子に戻って、カティがきょろきょろ物の散乱した床を漁っている。

「これなんてどう?」

 おっと。鼻血ブーもののセクシィ下着じゃないですか、着る人が着ればな。

「あっちょんぷり、ぐはっ。」

 魔王様の鉄拳がみぞおちにぐさりました。

 おかしいな。ホゲホゲとしか聞こえない筈なんだが。

「なんか、失礼な事を言ってたでしょっ。」

「滅相も御座いません。」

 ああっカティが身につけたら母ちゃんの伸びたパンツに見えて来た…。ちびっ子補正恐るべし。

「ちょっとぶかぶかねっ。あたしのナイスバディにはもうちょっとピッチピチの方が似合うわっ。」

「提灯ブルマ、ごふっ!」

 だ、誰かポーション下さい……。


 オレが身を呈して魔王を宥めていた頃。

「おい、しっかりしろ!」

「ポーションじゃ効かないぞ。」

「王城へ伝令を走らせろ!至急エリクサーを用意願え。ダナス宮にも先触れを出せ。担ぎこむ。赤騎士も治癒ができる奴はダナス宮へ集めろ。急げっ!」

「はっ!」

 なんだか慌ただしい事になっている。誰かけがでもしたのかな。

 すみません、アレクセイさんのエリクサーは全部オレが飲んじゃったんだよ。

 ルキさんのご加護で治りませんかね?

 と、血相変えて指示出ししている団長の足元を見てみると、ルキさんが倒れていた。

「ルキさんっ?!どうしたんです?女神様のご加護は?」

 翼が出ているのにキラキラが無い。

 これは一体?

「わから、朝から、女神、声が聞こえ、なって、っ!!!」

 夜明け前は絶好調で草生えていたじゃないですか。

 真っ白かった服も汚れて、甘いマスクも苦悶に歪み、翼からは羽がぼろぼろ抜け落ちている。

「ルキさん!団長っ、なんとかして下さい。凄い苦しそうです!」

「逃走防止の呪が発動したんだ。」

 団長が痛ましそうにルキさんの頸を指す。

 そこには禍々しい魔方陣が赤黒く光っていた。

「我々も神罰がかかっている。ダナス宮に運んで解呪する。」

「ま、間に合いますよね?」

「………間に合わせる。」

 一瞬返答を躊躇った、その時をも惜しむかのように団長がルキさんを抱えあげた。

「ひっ!」

 シグが涙目で尻餅をついた。

 団長の腕の中からばさりと翼がもげ落ち、羽が雪のようにふわふわと宙を舞う。

「待ちなさい!あたしを誰だと思ってるの?その程度の解呪、」

「流石カティ!出来るのかっ?」

「ほーっほっほっ。普段なら簡単よっ。」

「おいっ。」

 普段ならって何だ、普段ならって。

「今魔法使えないの知っているでしょ?」

 ああっ、またそんな重要機密をさらっと漏らすなーっ。

 団長、そのままスルーでお願いします!

「待てって言ってんの。聞こえない?」

 せっかくスルーで再び足を運び始めていた団長がびくりと震え、ゆっくり振り向いた。

 周りを騎士団員が抜剣して守り固める。

「面白い、あたしと戦う気?」

 オレの背後にいるカティからひんやりとした気配。

 吸魔石を付けられた時の様に身体が動かない。

 頼むからオレを挟んで殺気の飛ばし合いをしないで下さいぃぃ。

「きゅううん。」

 シグたんが頭抱えて丸くなってるよ。

 よし、やっぱりオレが止めないと!

「け、喧嘩はやめ、」


『<生命の書>を使え』


「うが、ああああああ!!!」

「「「トールっ?!」」」

 痛み?

 そんな生易しいもんじゃない。

 ナニかが脳に直接ガリガリと入力してくる。

 熱い。

 赤い。

 煩い。

 クルシイ。


「ドールっ。ドオルぅ、じぬなあああ。わーああ。」

「ちょっと、トール?ただのお茶目な殺気じゃないっ。トールっ?」

「トールっ、ポーションだ、飲めるかっ?バカヤロウ、無理しやがって。」

 ああっ、隊長その台詞はやめてっ。

「オレ、」

「もういい、喋るな。」

 やーめーてーっ。

「ポーション、効いてますからっ。死にませんからっ。」

「お。そうか。」

 もお。変なフラグを立てないで欲しい。

「それより、この市場の何処かに<生命の書>がある筈です。それを急いで探して下さい!」

「俺様に任ぜろ!」

 任せたいが、シグたん大泣きして鼻が詰まってないか?

 お、ポーション一気飲みか。かしこいのう。

「ふんふん、こっちだ!」

 慌てて人型なのに四つ這いで走っていったよ。可愛い。

「トール、受け取れっ!」

「受け取れるかっ!」

 あのバカ、思いっきりぶん投げてきました。

 床にめり込んでるぞ。

 セーフ、壊れてない。流石、神界の秘宝だ。

「ルキさん、今助けるからな!」

「それの解読は簡単には済まないわよ。だから私が、」

「ステイタスウインドウオープンっ、状態異常解除、欠損修復、体力回復、気力回復、同性好感度は下げておこう。あー、やっぱり女神の加護が止まってる。これは、治らないか。」

「何をぶつぶつ言っているの?」

「へえー。ルキさん、結構な歳なんだ。持病が腰痛と肩凝りって。おー、視力も衰えているな。女神の加護ないとやばいんじゃないか?この人。よし、こんなもんで。上書き保存、クローズっと。」

「トールっ!あんた何したのっ?!」

 ルキさんと本がペカーッと輝き出した。



「トールさん、大丈夫ですか?ボクの為に…」

「トール、貴様という奴は。」

「トール、あんたの事は忘れないわっ!」

 うおーい、混ぜるな危険色んなフラグ、殺す気か!

「トール。ポーションももう無いってさー。大丈夫か?」

 うん、シグたん。全然大丈夫じゃないよ……。

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