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冒険の始まらない 3

 立って半畳寝て一畳という言葉がありますが、健康で文化的な生活を営む為にはもう少し広い方がいいと思います。

 あと採光と風通しにも留意して、それから調度の類ももう少し朗らかなものがよろしいかと存じます。

 アイアンメイデンとかは全く不要だと思いますよ?皆さんもそう思うでしょ?


 盗賊のアジトに着いてすぐに、魔族であるオレとカティはバックヤードのお宝を出すよう凄まれた。

 せっかく醸した味噌醤油!

 うっかり目が泳いだのを目敏く見つけた盗賊は、屋台で仕入れた料理を出してぷんすかしているカティを捨て置きオレにターゲットを絞ってしまった。

 待って待って待って下さい!

  「はっ、怯えもしないか。いつまでもつかな?」

 違う、違いますからっ。

 抜き身の小刀をオレの頬に当てて凄む盗賊に命乞いすら出来ないのは吸魔石の所為であってオレの精神力はマイナスまで削られています。めっちゃ怖い!

 騎士団御用達の吸魔石より質が悪いのか拘束力が低い分、今回は視界も聴覚もクリアなんだよ。

 オレは吸魔石の付いた手枷を壊そうと力を振り絞って床に叩きつけた。

「魔法を使う気かっ!」

 違いますー。ジャンピング土下座で命乞いしたいだけですからっ。

「魔族め!」


 はい、これ大事だからしっかり覚えてねー。

 魔族を殴ってはいけま?

 せん。はい正解。

 魔族を蹴ってはいけま?

 せん。そう、その通り。

 魔族を引きずってはいけま?

 せん。うん、大正解!

 最後に、これ試験に出るからなー。

 魔族をアイアンメイデンに押し込んではいけま?

 せん。そうっ!それなっ。


「ちっ、まだ暴れるか!」

 いえいえ、暴れていらっしゃるのはそちらの方で、オレはどちらかといえばピクピク痙攣しているだけだったのだが?

 しかし、ここは頑張らねば。

 あんなんに入れられたらマジ死ぬわ。

 盗賊の足首にしがみついて精一杯抵抗する。

 我ながらお宮さんもかくあらんという縋り様だ。

 せめて炎斬剣が有れば、と、そうだ!オレにはアレがあった!

 喰らえメテオクラーッシュ!!!



「ねえ、何やってんの?楽しい?」

「助け、て…」

「ほーっほっほっ。今なんて?」

「へる、ぷみー……」

「トールっ、俺様が今助けてやるからな!先ずこの肉を焼いて食ってやる!」

 やめてー。オレも焼けちゃうから!!!

 大量にしまってあった肉スラの肉塊アタックで盗賊をのしたのはいいのだが、足元でげしげし足蹴にされていたオレも肉スラメテオに潰されてしまいました。

 生肉湿布のおかげか打ち身の痛みが程良く緩和されております。

「うう、酷い目に遭った…。」

 シグにガジガジと魔石を噛み砕いて貰って、なんとか身体が動くようになりました。

 よろよろ這い出し肉塊も再び収納する。

「あら。これはいいモノねっ。」

 肉塊の向こうにあったメイデンちゃんをカティがバックヤードに仕舞っていたが、オレは何も見てないです。

「誰かいるのかっ!」

 あらこのお声は?

「団長おおお!助けに来てくれたんですねえええー!」

 まじ団長、神。リスペクトします!

「ここにも一人、盗賊いますよー。捕まえて下さいっ。」

 オレをタコ殴りにした挙句心底ビビらせてくれたろくでなしだが、このままではカティに怪しげな術をかけられてしまいますぅ。

「ふんふんふーん、お前はもうアベヒデちゃんよっ!」

 世紀末か?!

 気絶している盗賊に魔方陣を描かないであげてっ。団長早く来てええ!

「その声は、あーやっぱり貴様か……。」

 生ぬるい目で見ていないで、世紀末魔王伝説止めて下さい。

 出来る男、天下の緑騎士団団長はささっとカティとシグに飴ちゃんを渡し、アベヒデさんになりかけた盗賊を捕まえてオレにはポーションをくれました。

「はー、生き返りました。もう一人、仲間が捕まっていたんですけどご存知ないですか?」

「サーラ神官か?」

「そうそう、そのルキさんです。」

「やはり貴様絡みか。」

 苦々しい顔で団長が吐き捨てました。

 オレが何かしでかしたような言い掛かりはやめて欲しいものです。


 そもそも王都守備が仕事の緑騎士団が近隣とはいえ盗賊討伐に出張っているのかというと、神託が降りたせいだという。

「光の天人を庇護せよ、かの者に大事あらば神罰が降らん、とな。何故目をそらす?」

「全く心当たりがないですよ?」

「神託が降りたのはフローラ神殿とイリア神殿、それにサーラ神殿なのだが?で、そのサーラ神官は何処へ隠れているんだ?」

「いやいや、オレが知りたいくらいですよ。オレのピンチにあの人は何やってんだ?」

 シグに対するアレクセイさんの過保護っぷりが霞むくらい、女神達のご贔屓があるんだからもうちょっと頑張ってオレを救出に来てくれてもいいと思う。

 現にカティとシグは駆けつけてきてくれたし。


 あれ?どうやって?

 …カティとシグがちょっとだけスプラッタだけど、気のせいだな。


「ルキなら連れて行かれちゃったわよ。悪者の癖に仕事が早いのねっ。」

「カティさん?ルキさんは何処に連れて行かれたのでしょうか?」

「多分闇市場ね。アレクの剣と本も持って行かれちゃったわ。」

 なんだって!

 オレが腐海に分け入って手に汗握る冒険活劇の末に獲得した本が奪われただとーっ?

「団長、大変です!本と剣とルキさんが奪われました!」

「……はあああぁ。」

 団長?そのため息はなんでしょうか?

「まあいい。天人奪還に付き合って貰うぞ。」

「出来れば本を優先的にお願いします!」

「………はああああぁぁぁ。」

 加護だらけのルキさんよりイボイノシシ危機にあるアレクセイさん優先でいいよね?

「あと剣も、」

 無くしたなんて言ったら叱られそうだもんな。

「それでルキさんも、まだピンチそうだったら助けてあげて下さい。」

 多分これくらいの危機感配分であっていると思う。

「天人を庇護しないと神罰なんだぞ?」

「はあ。」

「あら、楽しいわねっ。リスティア王国水没かしら?闇市行ったら水着を新調しなきゃね。」

「む、俺様は泳ぐのは得意だぞ!」

「洪水系神罰かー。良かったな、シグ。」

 きっと犬かきで泳ぐんだろうな。可愛い。浮き輪も一応買っておこう。


 団長が長ーいため息をついたような気がしたが、多分気のせいだと思います。

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