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冒険の始まらない 1

 ルキさんが運んでくれた飯をガツガツ食べて、代わりにルキさんには鍋底に残っていたカレーを提供した。

 この鍋、前にダンジョン攻略したときの残りだけど大丈夫だよな?

「見た目にそぐわず美味しいです。」

「だろ?」

 服にカレーがはねるとぴかんと光ってクリーニングされていく。

 なるほど、真っ白なわけだ。

「ボク昔から食べ方下手なんですよー。見兼ねたイリア神が神衣をくれてね。雨にも濡れないし風も通さないし暑さも寒さもしのいで皺もなく、いつも真っ白の優れものなんですよ。」

「そうか。」

 ……多分オレの言語変換スキルがやらかしているんだろうな。

 服が玄米と味噌と野菜を食べている幻覚が見えるぜ。

「そろそろ翼をしまってもいいですか?あまりこの姿でいると足元に草が生えるので屋内はちょっと過ごしにくいんですよ。」

「www。」

「笑い事じゃないですからね。うっかり一晩過ごそうものなら辺り一面花畑ですよ。豊穣の神と水と大気の神の祝福を舐めないで下さい。」

 おかしいなあ。オレも女神様達の加護持ちなんだけどな。

 足を退かしてみたが、もちろん何も生えていなかったよ。

「で、腹も満ちたところで、一つ大きな心配があるんだが。」

「食後のデザートですか?」

「ちびっ子達だっ。あいつらどうした?」

「ああ、彼らなら。」

 あっち、とルキさんがにっこり外を指さした。



「自称魔王のエカテリーナちゃんと、自称シルバータグのアレクサンデルシグムンドちゃんの保護者さんですね。」

「はい、ほんっと、ウチの子がすみません。」

「こんな街、殲滅してやるーっ!」

「もがもがもが。」

「アレクちゃんは噛み癖があるようですよ。ちゃんと躾けて下さいね。」

「すみません、すみません。」

「もが!もがもがもが。」

 シグ、お前の気持ちもわかるぞ。

 五歳児そこそこに轡を填めるなんて、大炎上もののシルエットだよな。

 でもな。

 にこやかなこめかみに青筋浮かべたお姉さんを始めとしてここの職員の皆さん、みんな噛み跡だらけなんだよ?

 謝るしかないじゃん。

「以後気をつけますので、外してやってもいいでしょうか?」

「はあん?あたしら悪くないわよ?そいつらがいきなり、」

「保護して下さったんだよ。」

 カティはちょっと黙っておこうか。

 幾人かには引っ掻き傷もあるのだが、犯人はお前だよな?

「それと、子どもに大金を持たせないように!我々が治安を守っているとはいえ、年端もいかない子どもだけで市場をうろつかせるのは防犯意識が欠落しすぎです。保護責任を考えて下さい。」

「重ね重ね申し訳ありません。」

 おーい。この世界、中世風じゃなかったのかよ。

 二十一世紀生まれのオレが防犯と育児放棄を説教されてます。

「えーと、もうそろそろ夕飯時なので、子ども達引き取ってもよろしいでしょうか?」

「あら、もうそんな時間?ではここにサインしてください。」

 何なに?

『迷子引き取り証』…はあ。

 うちの迷子、檻に入れられてますが。

 オレのジト目に気づいたお姉さんはもう一枚の紙を出してきた。

『器物破損弁償届け』

「何かご不満でも?」

「いえ。迷子を有難く引き取らせて頂きます。」

 魔王様、一体何を破壊したんだ!


 屋台で捕まって色んな試食をさせられていたルキさんも回収して宿屋に撤収する。

「攻撃、殲滅、いずれもマッ、」

「ちょーっと待った!」

 魔王様がブラックです。

 部屋に入るなり床にカリカリ何かを描き始めました。

 画用紙にクレヨンでお絵描きしている訳ではありません。

「これ、魔法陣ですか?」

「そうよ。妖魔の群れを召喚しちゃうぞっ。」

 言葉尻だけ可愛く萌やしてもダメですからっ。

 ニタリ顔が悪役すぎます。

「カティちゃん、何描いてるのかな?」

「うふふ。人間駆除のまほーじん。」

「えー、困るなあ。ボクも駆除されちゃうよ。」

「何言ってるの。ルキは天人でしょ?」

「あれ。判るんだ。」

「素の格好が良いんだけれども、色々面倒なのがくっついてるわねー。」

 カティさん、鼻にしわ寄せてガン見しないでください。せっかくの幼女姿がめっさババア臭いです。

 とりあえず、ルキさんに見惚れている間に魔法陣は消しておこう。

「俺様は、俺様は、」

 おっと。

 ご機嫌とりに渡したジャーキーがなくなってしまったか。

「うんうん、シグはびっくりしただけだよな。本気で噛み付いたらもっと大怪我させちゃうもんな。我慢したんだよな、偉い偉い。」

「そうだ!俺様は偉いんだっ。頑張って食料も調達したんだぞ!」

「偉いぞ、シグ。」

 アレクセイさんの親バカっぷりをもはや笑えません!

 尻尾ふりふりしてふんすと胸を張るシグ坊の可愛いこと。

 ビデオカメラどっかに売ってないかな。

 一眼レフも欲しいぞ。



 翌朝。

「腐海が溢れた……。」

 Why、部屋ん中がジャングルなんですか?

「ルキさん、翼出てますよーっ!」

「ほえ?」

 ああ、まだ日の出の前なのに眩しい光が。


 王都に引き続き、オレ達は街を逃げ出すことにした。

 もお、いっそ神界行っちゃいますか?

 どうするよ?このパーティ。

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