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お兄さんと一緒 1

「バカなのか?」


 人様を罵る快感を覚えたわけではない。

 昼近くにようやく起き出してきたカティを捕まえて事情聴取をして思わず出た感想である。


 家出シグたんを探していたアレクセイさんの留守中にギルドで本人曰く遊んでいたそうだが、ゴールドタグの冒険者をボコって神殿送りにしたというのはどう控えめに聞いても遊んでいたというレベルではない。

 激怒したアレクセイさんとガチバトルになり、とはいえ普通の攻撃魔法だと街が蒸発するので互いに変身魔法をかけたらしい。

「イボイノシシの魔法をかけてやったよっ!」

「さいですか。で、アレクセイさんがイボイノシシに?」

「魔法同士が干渉してあいつは女体化したわっ。ザマァ!」

 え、何それ、見たい。

 あの美形アレクセイさんの女体化なら相当な美人さんだろう。

「で、あんたはちびっ子になったと。」

 イボイノシシが美女ならちびっ子魔法は何になる魔法だったのかなー。

 ………アレクセイさんもえげつない魔法を使いそうだ。怒らせるのは止めよう、うん。

「俺様は巻き添えなのだ!」

 止めに入った、とかではないんだな。シグたん潔くて可愛いぞっ。

「でも元々エルフ少女も魔法変身でしょう?さくっと戻ればいいじゃないですか。」

「それが、」


「アホなのか。」

 人様を罵る、以下略。

 魔法が全く使えない、とあっけらかんと言うカティに思わず出た感想である。

 魔法の使えないちびっ子魔王って、討伐してくれと言っているようなものでしょう。

 何故にそれがノコノコと騎士がわんさかいる王都に来ているんですか?

 いくら勇者と和解したからと言ってあんたが仕出かしたあんな事やこーんな事は背びれ腹びれ尾びれが付いて言い伝えられているんですよ?

 と、叫んでやりたいがとりあえず壁のミミーを警戒して沈黙しておく。

「それでなんでオレのとこ来るんだよ?炎帝と喧嘩したって他の七将が居るんでしょう?そっちに泣きついて下さい!」

「泣いてなんかないもんっ。」

「もんっ、は卑怯だ…。大体エルフ耳はどうしたんですか。どうせ萌えキャラ目指すならしっかりキャラ立てて下さいよ。」

「チッチッチ。あれは変身魔法。これは若返り。今もシグちゃんと二人分の対退行魔法をかけ続けているのよ。他の魔法なんか使ったら私たちベビーになっちゃうわ。」

「オレも生後半年くらいなんですけどね。いやまあ、話はわかりました。だからといってオレが手伝える事は無いと思いますよ?だから他の強い魔族に、」

「バレたら半ごろされちゃうー。」

 おっとっと。

 耳がおかしくなったかな?

「全ごろかもー、うふ。」

「幼女の格好で殺伐としたセリフを吐かないでください!何やらかしたんですか?!」

「あのね、あたち、まおーしてたでしょ?」

「そういうキャラ作り要りませんから。そうらしいですね。勇者とドラゴンステーキの争奪戦していたとか?」

「そうそう。戦っているうちに結構話せる奴だってわかって。で、アイツが下衆な王国潰す代わりにうちの八将を使役に出す事にしたの。」

「それ、大丈夫だったんですか?」

「…でね。ちょっと七将激おこで。だからあたち、早く元に戻らないとヤバくね?って感じ。」

「一人欠けてますがっ?」

「え、そこ聴きたい?話す?」

「ご遠慮します。今度アレクセイさんから聞きます。」

「そうそう、アレクからの手紙もあったっけ。」

「先にそちらを出して下さいよ。」

 ふむふむ。


 手紙によれば大筋はカティの申告して来た通りだった。

 そもそも魔族を含んだパーティがギルドで絡まれていたのを、たまたま冷やかしに来ていたエルフ姿のカティが仲裁に入ろうとしたのが発端らしい。

 アレクセイさん大人だな。

 ちゃんと公平にカティの立場も書いてあるよ。

 絡んだ金タグ達は割とよくいる人間至上主義者だった為、少女姿のカティにまで暴言を吐いたそうな。

 それでまあ、多少ボコられるくらいなら金タグ達の自業自得で済んだのだが。

 そこは腐っても魔王様。

 絡んだパーティメンバー金タグ二人銀タグ三人の他に、仲裁に入ったギルド職員の白金タグと銀タグと間が悪く居合わせたその他諸々全てに向かって魔法をぶっ放し、人は治療院や神殿送り、ギルドの建物そのものも倒壊させてしまったという。

 帰宅して惨状に呆然としたって。

 うん、そうなるよね。

 素直に謝ればいいものを、開き直るからついこちらもきつく叱ってしまった、と。

 謝ればいいの?優しいな、アレクセイさん。

 で、何々?

『私が女性化しているのは聞いたかと思うが、領主館の対魔方陣を借りて他のモノに変化してしまうのをかろうじて封じている状況だ。シグの魔法をなんとか解いてやりたいが、そういう次第で私も身動きが取れない。シグも今は魔王の対魔法でなんとか幼児姿で留まっているが、魔王の側を離れられなくなってしまった。他の魔族や高位冒険者に助力を頼みたくも、魔王と共にあると彼らから危害を加えられる危険がある。従って、非常に遺憾なのだが、トール殿に助力を依頼することにした。』

 期待されてないのはわかっていますよ。オレも遺憾です。

『ついては、無限ダンジョンで稀にドロップする<無効の指輪>か、死霊の氷原の奥にあるという<老化の泉>、あるいは神界にある<生命の書>、暗黒星雲にある<宇宙の欠片>を探して欲しい。』

 アレクセイさん?オレに何を期待しているのかな?

『カティに炎斬剣を預けた。魔力はチビ魔王が無駄に持っている。魔石代わりに使うといい。エリクサーも在庫が無いが、サーラ神殿の神官に貸しがあるので同行を依頼してある。回復を任せると良いだろう。氷帝の力を存分に発揮することを期待する。』

 期待されちゃったヨ……。

「なあ、カティ。悪いけどオレには荷が勝ちすぎるよ。」

「そうよねっ。大丈夫!簡単な解決策があるのよ。」

「な、なんだ。簡単なのがあるのかー、ははは。」

「そそ。術者をやっちゃえば魔法も解けるよ。」

 ニヤリとカティ。

「あいつ、シグちゃんの為ならあっさり逝っちゃうわね。止めるの大変だったんだからー。」

「は?え?」

 と、そこでやけに静かにスリッパを噛み噛みしていたシグたんの涙腺が一気に決壊した。

「わーーーん。」

 シグたん、スリッパ噛んだらばっちいよ。

 よしよし、お兄たんに任せなさい。


 わんわん鳴く垂れ耳犬に勝てる人、います?

 いないでしょ。

 いる訳が無い!


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