どなたにも出来る簡単なお仕事です 4
「働かざるもの食うべからずだぞ?こうやってじゃぶじゃぶと洗濯をだな、」
「わんっ!わんわんわんわん!」
「ぶっは!こら!やめ、やめろっ!ちょ!」
あーあ…。
こりゃ、洗濯やり直しだな。
「いいか?掃除はだな。こうやって端から、ってお前、足!泥んこじゃないか!あ、嗚呼っ!!!」
あー。もう、廊下泥だらけだよ。
「わかったわかった。オレの仕事済むまでこれで遊んでいなさい。」
「くうーん。きゅーん。わうん。わふっ。」
「ダメ!オレは仕事があるの。こらっ、裾を引っ張るな!痛!靴噛まない!」
勘弁してくれ。
「あの、団長。ちょっとご相談が、」
「トールか。丁度呼ぼうとしていたところだ。」
あう。心当たりがグサグサ刺さります。
「我が隊はペット禁止だ。」
「ペットじゃありません。」
「使役魔獣とでもいいはるつもりか?」
「わっふ!」
お前ね。
キリッとキメ顔しているけど足元にどっかからくすねてきた長靴置いてたらなんの説得力も無いぞ?
「ええと、信じがたいかもしれませんがコイツは獣人です。あのダンジョン攻略の時に居たの、覚えていらっしゃいませんか?」
「………そういえば氷帝は犬を連れていたような。やはりお前の飼い犬じゃないか!」
え?あの時獣化してたっけ?してないよな?
…いや、オレも自信なくなってきたよ。
「と、とにかく飼ってるのはオレ、私ではなくてアレクセイさんですから。団長からクリーエルのギルド長へ早馬だして貰えませんか、引き取りに来るようにって。」
と、いきなりシグが伏せをした。
「いや、伏せてもな?なんでここに来たか知らないけど、帰れ?」
伏せたままにちゃにちゃ長靴を噛み始めた。
「いやいや、いやいやいや。アレキサンデルシグムンドさん?犬の振りしないで下さい?」
ボク犬ダカラワカラナイヨ、って知らん顔すんな!
そうか、そっちがその気なら。
「あ、シグの背後に肉スラが!」
どんっ←シグがオレに体当たりした音。
ごんっ←オレが床に倒れた音。
きゅうー←オレがダメージを受けたオノマトペ。
昨夜は布団があったけど、今回は固い床直撃しますた。
緑騎士団殺人事件。
被疑者、緑騎士団団長。
被害者、魔族。
目撃者、獣人。
1 被害者が「肉スラが!」と叫びました。
2 犬が興奮して被害者に跳びかかりました。
3 被害者が襲われると思った団長がひらりと机を飛び越しました。
4 犬に押された被害者が床に倒れました。
5 剣を抜いた団長が犬に切りかかりました。
6 犬はびっくりして逃げました。
7 勢いあまって団長が被害者を切り捨てました。
8 俺様は全て目撃していたが、一瞬の出来事でなすすべもなかったぞ。
「生きてる、生きてるから。」
ちょお!勝手にひとを殺すな。
いやあ、流石は緑騎士団の団長様。
最後の最後、ぎりのぎりで剣の向きを変えて下さいました。
団長の手首が変な角度で曲がっている気がしますが、オレの内臓がご開帳されるよりはマシでしょう。
「本当に、獣人だったの、か。」
「俺様は金狼のアレクサンデルシグムンドだ。」
「駄犬のポチ太郎です。」
「シグだ!」
うーん、懐かしい掛け合いだ。
「ポチ、お前エリクサー持ってないか?団長の手を治して証拠隠滅しないと、オレ達また逮捕されるぞ?」
「む。エリクサーは無いが、護符ならあるぞ。」
キラキラしいチョーカーを外してくる。
「首輪はつけておけ。保健所に連れていかれるぞ。」
「首輪じゃない!加護ジュエル付きの護符だ。危険回避の他に切り傷擦り傷腹痛歯痛打撲筋肉痛骨折火傷貧血心労も治癒してくれるぞ。」
「アレクセイさん、過保護すぎるよ。まあ、それで治りそうだな。えーと、」
「よせ!ただの骨折にそんな秘宝を!」
ぽわっと暖かな光が痛々しい手首をつつみ、加護ジュエルとやらがパキンと割れた。
「シグ、これ秘宝なのか?」
「無限ダンジョンの千階の宝箱でドロップしたってアレクが言ってた。」
「………そ、そうか。」
「…………。」
やだわ、団長さんたら怪我が治ったのに死にそうなお顔で。
「とまあそういう訳でアレクセイさんに至急この人騒がせな駄犬を引き取るよう連絡しで下さい。」
「やだ!俺帰らないからなっ。」
鼻息荒くしても知りません!
「やだやだやだ。ここに居る!」
「なんでだよ。洗濯も掃除も出来ない奴がここに居ても仕方ないだろ?」
「いや、ここ騎士団…、」
団長ーっ、余計な事を今は言わないでください!空気読んで!
「そ、掃除なら出来るぞ。」
尻尾がさわさわ床を撫でている。かわええ。
いやいや、ここは心を鬼に。
「いいから帰れ。何をしでかしたか知らないが、ちゃんと謝ればアレクセイさんも許してくれるから。」
「俺様は何もしていない!酷いことをしたのはアレクの方だ!!!」
なんと、まさか!!!
アレクセイさん、よもやまさか児童虐待青少年条例に引っかかるような事を、する訳がないよなー。
「具体的に?」
「ううう。アレクの馬鹿、俺様のご飯にピーマンを…」
翌日、血相を変えた炎帝様が乗り込んできたので青椒肉絲他のレシピを添えてシグをお返しいたしました。
やれやれ。




