どなたにも出来る簡単なお仕事です 3
トール・ヤマーダのニコニコキッチン♪
はい、皆さま今日わー。
今日はゲストに将軍様こと黒騎士団団長のエドガー卿をお迎えしてお送りいたします。
「なんで私が、」
えー、では本日のスペシャル食材!
どさっ!
ダンジョンで八将氷帝が仕留めた天然物の肉スライムです。
「氷帝…そんな奴もいたな。」
「あれ、どんな狩り方をしたんだ?」
「肉スラ相手に死闘を繰り広げたらしいぜ。」
はい、このひき肉部分を使ってナゲットとそぼろを作ります。
そして塊肉では鶏ハム、鳥南蛮、炒り鶏を作りたいと思います。
ナゲットにはこっそり刻み人参を混ぜ込みます。添えるケチャップの材料はリコピンたっぷりのトマトですよー。
そぼろはレタスやチコリをカップにして。
鶏ハムは胡瓜と合わせて棒棒鶏風に頂きます。
鳥南蛮のタルタルソースにも野菜増量で余ったピクルスを刻み入れて。
炒り鶏の肉はダシですからね。根菜を美味しく頂きましょう。
では実食。
「これなら野菜も食えなくはないな。」
「いや、普通に美味いだろ。」
各団の料理長さんたちがあっという間に皿を空にした。
「しかし刻むのは面倒だな。」
え、簡単ですよ。
こほん。
出でよ鋼刃、ふーどかったーとるねーどっ!
魔法?そんなチートは使いません。
回転軸に配した刃物を密閉容器にセットして、煙突状の蓋から野菜をいれてやりハンドルをぐるぐる回すと、あら不思議、微塵切り野菜ができちゃうんです。
お手入れも簡単。魔石不使用なので丸ごとつけ置き洗いが出来ます。なんと、今なら二個セットでにっきゅっぱ!
「魔族がうちに出入りしているから何をしているかと思っていたんだが。」
呆れ顔のじっちゃんは赤騎士団の料理長さんですな。
赤騎士団の本拠地、魔導塔では魔具も開発していると聞いて色々お願いしていたんですよ。
他にも泡立て器や洗濯機なんかを依頼しておりますが魔石を使う魔具はやはり高価だということで、動力は全て人力です。
卓上コンロでタコパや鍋パもしたいんだけどな。七輪導入すると集団一酸化炭素中毒になりそうだし。
「最後にデザート。カボチャと豆乳のプリンです。これもフードカッターで茹でカボチャをペーストにしました。欲しくありませんか?フードカッター。」
「要らんな。野菜を刻むものだろう?」
「ええまあ。基本用途はそれです。」
「手をかけてまで野菜を食べる意味がわからん。」
「細かく練りこまないと食べないじゃないですか。」
「食べなくてもいいだろう?野菜なんか。」
はい?
「失礼ですが、エドガー様は黒騎士団の団長ですよね?」
「そうだが。」
「若い騎士達の手本となるべきお方ですよね?」
「野菜は食わんぞ。」
おー、開き直りましたな公爵閣下。
「アレクセイさんは食べますよ?」
嫌々渋々、シグたんの教育上だけどな。
「!!!」
公爵家でも愛用のフードカッター・トルネード。貴方もおひとついかがでしょうか?
「あれ、ロッソさんまだいらしたんですか。お疲れ様です、ただ今戻りましたー。」
「食育とやらはどうだった?」
「一言で言えば、酷かったです。」
押し付けたオレの視察に来たエドガー様に談判し、各騎士団の料理長を集めて行った『第一回ニコニコキッチン〜野菜を食べよう〜』は大盛況?のうちに終了した。
二回目があるかは不明だが、創意工夫で是非野菜を美味しく食べて貰いたい。
「特にエドガー様が酷かった。」
「あの方に野菜を食べさせたのかい?」
聞けば見習いの頃から従者に野菜を避けさせていたとか。
うん、見習いから頑張ってきた事を褒めてやろうなお坊ちゃま。
そんなこんなで王都に来て早ひと月、オレは充実した日々を過ごしていた。
そんなある日の事。
それは珍しく雨のそぼ降る夜のことだった。
屋外の騒音などに気付きもせず深い眠りを貪っていたオレの部屋に何者かが扉を蹴破って雪崩れ込んできた。
「え?え?ぐえっ!」
扉の破壊音に安眠から叩き起こされたオレの上へ容赦なく何かが襲いかかる。
上掛けごと張り付けられたオレに獣臭漂い、みしりと寝台がきしむ。
「まずいぞ!トールが襲われている!」
「くそっ、魔獣め!」
騎士達が狭い廊下で殺伐と剣を煌めかせている。
「誰か治癒師を呼んでこい!」
「トール、諦めるな!必ず助けてやる!」
え?ええっ?オレそんなピンチなんですか?
『ウウウ……』
ぼたぼたと涎が垂れ落ち、オレの布団を濡らす。
さらば、オレの平穏な日常。
オレは覚悟を決めてくわっと叫んだ。
「シグ!お座り!」
「わふっ?」
すんません。アホ犬がお騒がせしております……。




