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高望み、するだけならロハ 5

 えー、前回までのあらすじ。

 へっぽこ閻魔大王のおかげでとんでもない異世界転生を果たしたオレは持ち前の努力と根性で高位魔術を発動し、氷帝を名乗りダンジョン制覇の無双をしたのであった。


 嘘はついていません。

 多少、盛ったけどな。



 すんません。

 過大に盛り盛りです。

 人様から借りたお高い魔剣に、これまたお高い魔石を湯水の如く消費して、それでも心身ズタボロだったので、お坊ちゃん用に用意されていた超高級回復薬を、これまたざぶざぶ飲み干しました。

 そして確かに名乗りあげた氷帝云々は失笑の挙句叱責を受けて今お城の床でパジャマのまま大理石を満喫中。

 もう、本当にHPゲージやばいですから。

「たす、け、て。」

 恥も外聞もなく横に立っているアレクセイさんの脚に縋り付く。

「まあ、そんなわけで害意があった訳でもなく、実体もこんな弱っちい奴でな。」

「すんま、せ、も、しませ、ん。」

「カティも下僕として気に入っているらしい。だから、」

「草むしりでも、薪割りでも、何でもしますー。許して下さいー、ごはん下さいー。」

 ここぞとばかりに反省を申し出る。

「まあ、多少厚かましいししぶといが、基本弱いからな。」

「ぐえっ、け、蹴らないで下さいよ!」

「なんだかとりなしてやるのが阿呆らしいな。」

「そう、仰らずにガツンとオレの非力さか弱さを主張して下さい。というか、えーと。今何してるんですか?これ。」

 夢から醒めたかのごとく、身体は動くし周りもよく見えます。

 そして口内に残る甘ったるい味は。

 おー。

 毎度お世話になっております、エリクサーさんではないですか。

 おや?いつのまにか枷も外されていますな。

 よかったよかった。

 そうして落ち着いて周りを見回すと。


 隣に呆れ顔のアレクセイさん、魔族バージョン。

 向かいには王様。

 玉座っぽい椅子に冠かぶって座っていらっしゃる非常に疲れた顔の中年男、いえ、高貴そうなご尊顔のお方。

 うん、何度見てもザ・王様だ。

 王様の側には他に非常に顔色と目つきの悪い初老の男と非常に顔色と態度の悪い壮年の男が控えている。

 渾名すなら切れ者宰相と常勝将軍といったところか。

 他に近衛らしき者もおらず、完全密会だ。

 これって超VIP待遇?やべ、緊張するわー。

「な、ナイストウミーチュ。マイネムイズとーるやまーだ。」

「見ての通り、魔族の幼生体で転生種だ。今はまだこんな小さな吸魔石で拘束できる最弱のモノだ。」

「だが、森を一撃で払ったというぞ?」

 オレの渾身の挨拶は華麗にスルー。

「あー。妙な知識を持っていて魔剣と魔石を使いこなしちまったらしい。まあ使いこなすと言っても初級ダンジョンをようやく制覇出来る程度だが。」

「初級とはいえダンジョン踏破だ。魔族にとってはそんな程度呼ばわりかもしれぬが。」

「そんな程度だろう。アビスメイズの最奥から持ち帰った魔剣と古代竜が溜め込んだ魔石を使い潰して、エルフ賢者が作ったエリクサーを水代わりで飲んでいたんだぞ、こいつは。そこいらの下級兵でも余裕じゃないか?」

「それは、」

 御三方が絶句しております。

「そんな稀少なもんを持たさないで下さい!弁償出来ないじゃないですかああ。」

「おう。だから無謀な事を言うなと言ったろう?つまりだ。この先どっかの誰かが宝物レベルの魔具と山のような魔石と妖魔転換しないように水代わりに高級回復薬を与えない限りこいつの力は、」

「げふっ、」

 い、いきなり足蹴にしないでほしい。

「こんなもんだ。」

 はい、まあこんな足拭きマットですけどね。

 それよりも。

「妖魔転換って何ですか?」

 ホゲとかじゃなく当て字が出来ているあたり、非常に不穏な感じなのですが。

「皆がお前のように魔石から魔力を吸い出して魔法を使わないのは何故だと思う?」

「…使えないから。人も魔族も魔力の暴走で闇堕ちして、妖魔になる。たまたまオレはエリクサーで身体を随時回復していたから助かったけど。って言うんじゃないでしょうねっ?!」

「凄いな。まさにその通りだ。話が早くて助かる。」

「それ、閻魔様にも言われました…。」

 あっぶねー!

「そんな危険な物、ベイビー魔族たんに渡さないで下さいよ。」

「ベイビーってお前な。いや悪りいと思ったから弁償も要らねえって言ってるし、城まで来て取りなしてやってんだろう。」

 取りなすって、さっきから足で踏みにじっていらっしゃるだけですが?

「で、どうする?軍に刃を向けたんだ、身柄を寄越せというのなら仕方無い。低級回復薬で薬中に仕立てて安物剣と屑石持たせて使役するか?」

 ひぃぃぃ。そんな未来予想要りません!

「調子に乗りました、すんません。ごめんなさい、許して下さい。もおしませんから!」

 アレクセイさんの足蹴の下でオレも額を床に擦り付ける。

 オレつえーやって本当にごめんなさい、オレは虫けらです、役立たずの下僕です。どうかトイレ掃除ぐらいで見逃して下さいぃぃ。


 文字通り頭の上で行われる炎帝様と王様と宰相様と将軍様の折衝を一般市民のオレはへしゃげたまま聞いているより他なく。

 取りなしてくれている筈のアレクセイさんの物言いの方が王様より酷いのは何故でしょう。

 王様、窶れた中年なんて思ってごめんなさい。

 ああっ、ついにアレクセイさん将軍様に向かって抜剣してしまいました。

「さあ、これで俺も軍に剣を抜いたぞ。で、どうする?捕らえるか?はっ、貴様のようなひよっこにそんなことは出来んよな?」

「ぐっ。王、御許可を!この変態魔族を今日こそ討伐してくれよう!」

 そういえば翼も立派なアレクセイさん、シックスパック見せびらかしていますね。裸に慣れてスルーしてました。

 そして将軍様、許可まだ出てませんよ?剣しまって?

 匍匐前進で剣戟火花散る脳筋から離れ、王様と宰相様の横に退避する。

「王様、あの、ですね。」

「何だ?」

「オレ、この国にいるとご迷惑みたいなんで出てい、」

「出て行くならアレも引き取れよ。」

「そんなご無理難題を。じゃあ出て行きませんので仕事と住処とごはんを下さい。」

「確か宝物庫に魔弓があったな。」

「王冠類の宝飾も魔石細工ですなあ。」

「回復薬代わりにはダナス宮の大神官を侍らしておくか。」

「え、ちょっ、」

「天空城ラピュテルから飛翔石を取ってこさせるか、」

「海底神殿アトランテから、」

「あー、こっちもきっと光る青い石ですね。はいはい、ごはんと布団支給して下さるなら働きますよ、何でも。」

 もお、好きにして下さい。

「おお、そうか。さて何をさせるかな。」

「そうでございますな、いっそもう一度魔王討伐隊を組みますか。」

「おお、それな!」

「はい、それでございます。」

 おっさんおっさん。

 只より高い物は無いんですよ?

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