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高望み、するだけならロハ 2

 この世界には三種類の魔法がある。


 一つはオレも使っている音声魔法。

 唱える呪文に決まりはなく、言葉に載せる魔法の具体性と魔力の量により発動が左右される。

 前世でのコンテンツのおかげで魔法イメージは豊富なオレだが、発動魔法がショボいのはいかんせん魔力不足という事か。

 もう一つは契約魔法。

 これは魔方陣、契約書を描いて異界のモノと契約し力を得る魔法だ。

 契約であるから差し出す対価が必要で、これまた魔力の量により契約出来る相手や内容、つまり効果が左右される。

 魔力が無い者でも使えなくはないが、対価は術者の肉体や魂、それでも足りなければその者の縁者というなかなかの鬼畜設定。

 この世界が異界転生者を受け入れている理由は、かつて大掛かりな契約をした者がいて当時の人口の一割の魂を食らってしまい、生命の源の絶対量が足りないせいだとか。

 最後にもう一つ。

 これは魔法というより魔法生命体というべきか。

 獣人の獣化や魔獣や竜種の固有の攻撃がそれに相当する。

 獣人なんかは自分の意思で変身出来るが、下位の妖精種などは居るだけで水浸しにしたり花畑にしたり、まあ色々傍迷惑な者もいて討伐対象にされていたりする。


 机の上にダイイングメッセ、ごほん、魔方陣が描かれてぽやんと発光した。

「殺す気か!」

 祝、アレクセイさん復活。わーぱちぱちぱち。

 無駄に高い鼻が仇になりましたね。

 よかった、脳漿じゃなくて。

 ストレージからタオルを取り出して鼻と机に飛び散った何かを拭き取るイケメン。

 シュールだ。

「非常に残念だが手隙の者がコレしか居なかったので、誠に遺憾だがコレを連れていけ。見ての通り武力だけは不足無い。」

 いえ、むしろ過分かと。

 そして常識と良識はお持ちでしょうか?

「コレコレって失礼ね!」「オレの負担が増えるだけでは?」

 言葉が被りました。

 そしてめっちゃ睨まれました。

「いえ、頼もしいです。光栄です。魔女っ子エルフさんとのダンジョン攻略。」

 慌てて言い繕う。

 股下のシグは土下座体勢のままえぐえぐ泣き始めてしまいました。

 過去に一体何があったんだ。

「そうか。お前にはソレはエルフに見えるのか。」

 アレクセイさんがもごもご何やら不穏な事を呟いているが、秘技聞こえないふりを発動する。

 彼女の正体なんて知りたくないですよ。心から。

 だって八将炎帝様をどつき倒す人ですぜ?

 そんなの、魔王その人か勇者以外にいます?



 人は其れをフラグを立てると言う。



 眼下を流れるように山々がすっ飛んでゆく。

 クリーエルでのすったもんだが何だったのかというくらい素早い展開でまもなくルーザンの森のダンジョンに着くという。

 ここは道中レベル上げをしながら色んな伏線を張りつつ半年くらいかけてラストダンジョンへ向かうところではないだろうか。

 まあ、シグとの友情?はこれ以上必要ないくらい培われているのだが。

「ばなずなよ!ぜっだいばなざないでぐだざい!」

 最初の俺様設定何処へやった?

「離すも何もしがみついているのはお前だ!骨折れる!折れるからっ!」

 肉スラも苦手だったシグは高所も駄目らしい。

 飛翔魔法で移動するの、オレは割と爽快なんだけどな。

「あ、鼻が痒いなー。ちょっと手を離すねっ。」

「うぎゃあああ!!!」

「いだだだだっ!」

 時々混じる自由落下も慣れれば楽しい。

 シグにまた背骨折られそうだけど。

「カティ、もう勘弁してやれよ。オレの骨が物理的にも心情的にも折れるから。」

「えー。トールはもうちょっと鍛えた方がいいと思うなっ。」

「人外魔境を目指す気は無いので充分です。」

「はい残念!トールは既に人外の魔族ですよー。あ、ダンジョンあそこだねっ。うーん、邪魔な人間どもがいるなあ。えーと、風魔法使えるんだよね?じゃ、いってらっしゃいー!駆逐しておくんだよーっ!」

「「ひっ?!うぎゃああああ!!!」」


 カティにぶん投げられたオレとシグはオレのささやかな風魔法で無事着陸、などは出来ず、咄嗟に出しておいたエリクサーで瀕死から回復した。

 大人なのでメンタル小学生なシグを墜落事故?から守ってやりたかったけど全く無理だったわ、すまん。

 まだ精神回復していないシグにしがみつかれたまま、オレにはやる事がある。

「散れ、人間ども!このダンジョンコアはオレの物だ!」

 シグたん、重いし格好がつかないからそろそろ離れてくれないかなあ。

 案の定、ダンジョン入り口に駐屯している騎士団の皆様は何言ってるのお前?みたいな顔でキョトンとしている。

 そらそうですよね?

 いきなり空から降ってきて、舞い降りるならまだしも普通に地面に激突、瀕死から復活したばかりの相手ですから。

 一応なけなしの風魔法でエアクッションを作ったから即死は免れましたが、ほんと、やばかったんだよ?

「おい、大丈夫か?あんた達。」

 うわ、心配して下さってます。

 魔族相手にも騎士道精神発揮の良い方達のようです。

 ならば、尚更。

 愛剣格安丸は肉スラ討伐の折に役目を果たして、道端に忘れてきたので今度こそ借りてきました!

 恐る恐る抜くはかき氷マシン、氷斬剣。

 冷んやりした冷気とキラキラした霜が降りる。

 軽く振るえば氷の刃が騎士さん達の足元にざざっと刺さる。

 うわ、危なっ。

「我が名は魔王八将が一人、氷帝。即刻立ち去れ!」

「何?」

 ですよねっ。分かりますよ。

 突然そんな事を言われてハイそうですかって立ち去れる訳無いですよね。

 わーかーりーまーすーが。がっ。

 お空でカティが待っているんです。

 そして、長くは待ってくれないんです。

 でもって、人間嫌いなんですよ、あのお方は。

 皆さん、逃げて!逃げて下さーい!

 騎士の皆さんがオレに対峙してチャキっと剣を抜き構える。

 怖え。

『慈母の胆力』が頑張ってくれていますが職業軍人に武器を突きつけられている恐怖、分かります?

 カティが居なければちびりながらジャンピング土下座もんですよ。

「ほう、我に挑むと?」

「勇者と魔王の協定を破る気かっ!」

「こちらは立ち去れと言っただけだ。それとも、そちらが破る気か?」

 もう、これ以上は無理!早く逃げてくれ。

 今一度剣を振るう。

 今度は騎士に向けずサイドに、だが力を込めて。

「「「!!!」」」

 えー、現場からの中継です。

 丁度わたくしの身体と同じ位の氷で出来た刃とでも申しましょうか。

 それが、何と五、六枚。

 バナナも凍るような冷気を撒き散らしながらすっ飛んで行きました。

 はい、木、ですか?

 もちろん進路にあった木々は薙ぎ倒されております。

 いえ。これは、粉砕されていますね。おそらく一度凍りついてそのあと衝撃波で粉々に。

 アレです、ほら、薔薇の花びらが粉々に。あんな感じです。

 以上、現場からのリポートでした。

 いやあ、想像以上に凄いな。

「くっ。王都に確認する。一度退くぞっ。」

 おおっ。

 隊長さん、御英断あざっす。

「ですが、ダンジョン内には調査隊がっ。」

「やむ終えない。これ以上の犠牲は出せん。」

 これ以上って心外な。

 犠牲を出さないようにこっちは頑張っているんじゃないですか。

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