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高望み、するだけならロハ 1

「もう、戻ってくるなよ。」

「はい。お世話になりました。」


 魔族と獣化獣人の収監なんて出来るか!と護送車に詰め込まれてクリーエルへ戻される。

 肉スラに追いかけられて夜通し走破した街道をドナドナ…虚しい、侘しい、絶対アレクセイさんの鉄拳が落ちるよ、とほほ。

「キューン、」

 シグも反省のポーズのままだ。

 こんなん見たら叱られるのオレだけだろ。お前、あざといなー。

 うりうり、と腹を撫でてやる。

「クーン、」

 いやマジで反省してますから?みたいな顔でいますけどね。

 本当に反省しているなら人化して一緒に叱られろ。

「っはー。」

「ワッフ?」

 あーもうば可愛いいぜ。わしわしわし。

「おい、獣人が襲われているぞ。どうする?」

「バカ、魔族を止められるかよ。見ないふりに決まってんだろ。」

 聞こえてますよー、憲兵の皆さん。


 そんなこんなで三回目の収監ともなると流石に一夜で解放という訳にもいかなかったのか、なんと十日も留置されてしまいました。

 その間、例のアクセサリー付きで身動き取れず、オレが構ってやらない事に焦れたシグが無駄吠えしたおかげで事なきを得たがちょっと花畑が見えました。

 エリクサー二本目、使いましたとも。

 世話にはなっていないが確実に心労はかけた憲兵隊長さんに挨拶して、ようやく迎えに来てくれたアレクセイさんの後ろについてギルドに戻る。

 ううう、沈黙が怖い。

 シグさんや。

 オレの背後に隠れても無駄ですよ。でかい図体丸見えだからな?


 パタン、と執務室の扉を閉めるとアレクセイさんはおもむろに上着を脱いだ。

 今回は翼を忘れる事なく、下に着ていたドレスシャツは背にスリット付きで変身して翼麗人になっても痛てっとかお茶目な台詞もなく、執務机の前に座りゲンドウポーズ。

 まあ、椅子の背に翼を挟んでちょっと舌打ち聞こえてきましたが。

 この親子、変身したがりなのも似てるなー。

 なんて一所懸命に余計な事を考える。

 考える。

 考え……。

「私は、」

 ぞくり。

 普通の声色なのに。

 背筋が凍った。

「魔王軍八将が一人、かつては炎帝と呼ばれていた。」


 将なのに帝っておかしいだろ?

 とか。

 八将の上には四天王っているの?

 とか。

 そもそもそんな告白必要?

 とか。

 疑問は多々あるがそんな突っ込みをする気力も無いし、隙も無い。

 妖気だか殺気だか色気だかよくわからんが、とにかく何かの気に当てられて呼吸もままならないままアレクセイさんの話を拝聴させられる。


 声だけでHPを確実に削ってくるイケボを要約すると。

 魔王と勇者の協定で八将の方々は一人百年ずつ人間の王の統治に協力しなければならない。

 従って、あと九十八年は当番のお勤めが残っていてシグと旅をする事は出来ない。

 だが、今回の事でオレが全く役立たない事が判明したので現王と魔王と他の七将に掛け合ってお勤めの代替の交渉を丸九日。

 粘ったが総却下を食らって慌てて代理の目付を選定するのにもう一日。

 シグ共々目を回しながら説教と愚痴の混じった状況説明を受けた後、一人の人物を紹介された。


 いやっほい!

 魔女っ子エルフたん、きたお!!


 あ、に、の、チートが炸裂したのであって、オレのコメでは無いからな!

 そも貴女、一体何処から現れました?

「もー、アレクったら。魔力抑えないとダメって教えたでしょ!」

 エルフ少女がつかつかとアレクセイさんに近づいて、ぺしっと後頭部を叩いた。

 組んだ手の上から顎が落ちて、額がガツンと音を立てて机にめりこむ。

 比喩では無い。

 イケメンの額が机に物凄い音を立ててめり込んだ。

 途端に威圧されていた空気が揺らぎ、オレとシグははふうと深呼吸する。

「だいじょぶだった?シグちゃん。と、初めまして?」

「初めまして。トールです。」

 完全にオレの足の間に無理無理潜りこんでガタガタ震えている駄犬がいますが、和かに挨拶されただけだよね?

「挨拶は基本だよう?シグちゃん。人化して、ご挨拶はっ?」

「こ、こんにちわ。」

 瞬間変身で人型に戻って、オレの股ぐらから顔を出して上目遣いにご挨拶。

 構図が酷いな。

「あの。アレクセイさん、大丈夫ですか?エリクサー、出します?」

「やだ、大丈夫よー。これくらいで炎帝がどうこうなるわけないじゃない。」

 エルフさん、けらけら笑いながらぺしぺしアレクセイさんの肩を叩く。

 叩かれたアレクセイさんが痙攣しているのは目の錯覚だな。

 早く復活して、怪力属性がついていそうな魔女っ子エルフを紹介して欲しい。

 シグも股下から出てくれな。

「あれれー、おかしいなあ?」

 一向に頭を上げない炎帝さんをぺしぺしと更に机にめりこませるエルフさん。

「や、それ以上は流石にまずいのでは?」

「えー。ちょっとお、アレク鈍ってない?」

 その頭部はメデューサでもヨカナーンでも無いですからね?あまり引っ張らないで下さい!もげる、もげますからっ!

 お。

 机に伸びていた手が力なく動いて、見てはいけない机に広がっていく何かの液体に指を浸す。

 それからぴくぴく震える指で机に何かを書き記す。


 アレクセイさん!犯人は分かってます!

 最期の力を振り絞ってのダイイングメッセージは不要ですよ?

 それともこの後オレとシグも消されてしまうのでしょうか、ひぃぃぃ。

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