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バナナはオヤツに入りますか? 4

「それでさ、アレクセイが討伐して来いって。独りで地龍退治に行かされたんだぜ?」

 シルバーランクに昇格したクエストの回想をしながらシグが眉間に皺を寄せている。

 それ、多分ね。

 アレクセイさん、木の陰から見守っていたよ。うん、間違いない。


 オレの目下の所持品。

 それはここに書ききるスペースが無いので割愛する。

 あの後も日が暮れたから出発は明日にしろだとか、この魔族(オレの事な)は余り役立ちそうにないからやめにしようとか、もうね、酷かった。

 人様の親を悪くいいたくはないですが、子離れ出来ていないモンペですよ。いや。シングルファーザーか。

 最終的にエリクサーをダース単位で持たされて出発出来たのは夜中だった。

 栄養ドリンクの如く山積みに渡されたエリクサーだが、アレクセイさんを回収しに来たギルド職員にこっそり聞いたところによれば、王宮宝物庫保管レベルのお宝だとか。

 ちなみにシグは膝を擦りむいたら飲む薬だと思っていた。

 あの得意げに見せびらかしているシルバータグ、本物なのかなあ。大丈夫か?


 まあでも、アレクサンデルシグムンド坊ちゃんも、流石にアレクセイさんの溺愛っぷりが鬱陶し、ごほん、不安になってきていたらしい。

 反抗期の入り口と自立の芽生えですな。

 ギルドで魔族のオレを見つけて咄嗟にこいつとならアレクセイさんが旅を許すかも、とひっついて来た次第。

 恐ろしい事にこんなマッチョでも肉食系獣人としてはまだ思春期前の少年なんだそうな。

 アホ犬っぷりと仔犬姿から薄々察してはいたが、小学生高学年くらいらしい。

 オレ、もしかして一番子育ての大変な時期を押し付けられたんじゃないだろうか。

 トイレトレーニングは済んでますよね?と嫌味を言ってやったらアレクセイさん涙目になって頷いていたよ。ベイビィシグたんを思い出してうるっときたんだと。


 とまあ、そんな他愛もない話をしながら夜中の街道を進む。

 大興奮のシグは寝る気配もないし、オレもじいちゃんのギフトのおかげで三徹ぐらいはいけそうだ。

 下手に休むとアレクセイさんが朝御飯持って起こしに来そうなのでなるべく距離を稼ぐことにする。

 それにしても静かだ。

 そして暗い。

 頭上には満天の星空。

 風のざわめき。

 ひたひた歩くオレとシグの足音。

 昼間は渋滞する程馬車も人も行き交っていた街道だが、今道行くのはオレたちだけだ。

 シグは大きな歩幅で姿が見えなくなるほど先に進んではまた戻ってきて、しばらくじゃれてからまた先にたったと走ってゆく。

「トール、おっそいなー。置いていくぞ?」

「いいぞ、先に行っても。」

「脚短いからおっそいんだなー。短足短足ー。」

「うん、そうだな。オレはシグより年寄りだし背も低くて短足だから先に行っていいぞ?」

「じゃ、先に行くからな?」

「いいよ。」

「行っちゃうぞ?」

「行けば?」

「本当に、い、行っちゃうんだからなあ!」

 おっと、苛めすぎたか。尻尾が垂れてしまった。

「まあでも、魔獣とか出たら困るからシグが一緒に旅してくれると助かるな。」

「おう。俺様は強いからな!魔獣でも盗賊でも瞬殺だぜ。」

 立ち直り早いな。

「そうかー。それは心強い。」

「おう、任せろ!古代竜でも幻獣でも仕留めてやるぜ!」

「そ、そうかー。でも、アレクセイさんいないからほどほどにな。」

「む。悪霊だって屍肉鬼だって、」

「そ、それくらいにしておこうか。」

「はっ。ちょろいぜ!肉スライム以外ならなんだって退治してやるよ!」

「………うしろ。」


 誰かこのアホ犬にフラグっていう存在を教えてあげて?


「キャウンッ!」

 あ、いつ。

 犬の癖に脱兎の如く逃げました。

 うひー。キモい、キモいのがふるふると追いかけて来るんだが?

 スライムって、可愛い系モンスターじゃないのか?

 冒険者の癒し的存在じゃないのか?

 ぽよよん、って弾みながら動く奴じゃないのかあああっ!

 ナメクジ、ウミウシ、ナマコ系ぬとぬとにちゃにちゃな肉塊にうじゃうじゃと触毛が生えている。

 大きさは自動車サイズ。

 移動速度は全力疾走のオレと等しい。

 ダメだ、死ぬ。

 なんかキモい奴に食べられて死ぬ。

 斬シリーズ、要らないって言って御免なさい!

「う、うおたすぷら、しゅ!」

「ふれあうおーる!」

「すとーむとるねいどおおお!」

 追い詰められたオレは潜在能力が覚醒、し、しないよね。はい。

 ひぃぃぃ。

 も、だめ。

 走れない。

 メロスだって走るのやめたし。

 いやいや、かかっているのは親友でも他人でもなく自分の命だ!頑張れオレ!

 そこいらの古道具屋で買ったなんの変哲も無いなまくらな剣よ!今こそその力を我に!!!


「ふごーふごー、」

 鼻息荒くてすんません。

「め、冥土の土産にオレの奥義で相手をしてやろう!」

 すらりと格安中古剣を抜いて構える。

 って、躊躇なく突っ込んできますよスライムさん!

「ごめっ、やっぱ逃げる!」

 剣を投げ捨てて猛ダッシュ。

 だって勝てる気しないんだもん。

「お、肉スラか。」

「にいちゃん、良いもん見つけたな!」

「市場まで連れて行くのか?鮮度が一番だもんな。」

 いつの間にか夜が明けて、先の街から来た人達がにこにこと手を振ってくる。

 何で?!

 喰われそうになってんの見て分かりません?

 スライムさんも、他の餌に余所見して下さいよ!

 ん?

 餌、えさ、ESA!

 そうか!餌だよ、餌!


「くらえっ、びーっぐバナナ!」

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