バナナはオヤツに入りますか? 3
ただ今のステータス。
装備からだ:木綿の服
装備あたま:木綿の帽子
装備あし:革のブーツ
アクセサリー:旅人のマント
武器:最初に拾った木の枝
もとい。
武器だけはアレクセイさんが鉄拳降下と共に凄く高価そうな剣を貸してくれました。
軽いのにスパッとした斬れ味。
トマトの皮もよく切れそうだ。
武器:炎斬剣
「魔力を込めれば煉獄の焔でドラゴンでも焼き切れるぞ。一応でも魔族のお前が振るなら炎は出るはずだ。」
わーい、アレクセイさんからの評価がだだ下がりです。
「焼きトマトになってしまうじゃないですか。使えないなあ。」
アウチっ。
即体罰はやめて下さいよ。シグじゃないんだから。
「試してみろ。」
「はあ。」
おっかなびっくり鞘から抜いてみて、魔力の込め方なんて分からないけどなんとなく漫画でよく見る気を貯めてるような真似をしてみる。
「ふあああああ!」
「眠いのか?」
違うから。シグたんはオヤツを食べていて下さいな。
アウチっ。
「遊んでないであの木を切ってみろ。」
「魔力、こもりましたかね?」
「魔族は魔素の塊だ。込めるも何も、抑える方が難しいんだぞ?」
あー、そうですか。
見た目だけでなく、色気もダダ漏れという訳ですね。魔族スキーには。
アレクセイさんにべろんべろんに甘やかされて育った魔族大好きっ子がパタパタと尻尾を振っていた。
さて。
集中して試し斬りをするために、鍋を取り出して水を満たす。
「類焼防止です!」
鉄拳が上がったので慌てて釈明する。
もう、アレクセイさん短気すぎるよ。
さて、と。
軽い剣を握り、正眼に構えて、と。
まあ、相手は木なんだけどさ。
「うおりゃーっ!」
あら素敵。
枝が上手に払えました。
「あ、あ、アレクセイさんっ!手ごたえがありませんっ。」
もうね、ケーキ入刀くらいさくっと太い枝が落ちました。
「おー。良く切れるだろ。」
「切れすぎです!これじゃあまな板まで、じゃなくて、うっかり自分の足切り落としちゃいますよーっ。」
「おー。気をつけろな。しっかし、炎、出ないな?壊れたか?」
アレクセイさんが取り上げて軽くぶんっと振ったとたん。
け・し・ず・み(はあと)
「木、木、木が木炭に変わりましたよ?!」
「あー、これこれ。」
「肉切ったらいきなりステーキなんていうレベルじゃないですよね?!」
「それいいな。シグ、よかったな。焼肉食い放題だ。」
「わふっ、じゃなくて、やったっ。」
マッチョイケメンが犬座りでキラッキラ目を輝かせている。
シグに焼肉食わせるためにこんな危ない剣持たせないで下さい!
「待って待って。触ってみて下さい!オレだとほんのりあったかいかな?程度ですよ。バターナイフに最適くらいですよ?焼肉なんて無理ですって。もっと普通の剣でお願いします。」
「嘘だろ?……お前、どれだけ魔力うっすいんだ?」
「これからスーパーとかスーパーツーとかになって行くんですよ。」
生後一ヶ月のオレに多くを求めないで欲しい。
「仕方ねえ。じゃ、コレはどうだ?かき氷食い放題だ。」
「わーい。」
アレクセイさんが握るだけできらきら氷の粒が舞う。
「氷斬剣。」
「却下です。」
「空斬剣。上手いことスライス出来るぞ。」
「斬シリーズは却下。」
「じゃあ、呪怨剣。あ、コレは食えねえか。」
「出すな!」
どう軽く見てもダンジョン最奥か隠れ里の武器屋とかでしかゲット出来ない剣や槍や斧なんかが次々と出される。
「すみません、オレが考え無しでした。そこいらの武器屋に売っている二束三文のやっすい剣を買ってきます。」
一体アレクセイさん、何者なんだ?
えーと。
旅支度をして直ぐに出て行けとか、俺が叩き出してやるとか言ってませんでしたか?おっさん。
オレが剣を買いに走っていた間にシグの荷物を点検していたらしいのだが。
「はっ、なんだこのなまくらは!砥ぎなおして、いや、コレだ。コレを持って行け。この穴に魔石を嵌めれば魔力の無いお前でも使えるからな。魔石は、」
どんっ。
「さ、流石に俺様でもそんなには持てないヨ。」
「バカタレ。トールが居るだろう。こいつに収納させておけ。それからこれは火龍の革のマントとブーツだ。ダンジョンに氷原フロアがあったら使え。それに大水母の日傘。これは砂漠フロア用だな。日焼け止めと、そうそう殺虫灯に、テントと毛布と枕と、えーとそれから、」
魔族だからか、はたまたチート転生したからかは存じませんがアレクセイさんの収納からは際限なくこれでもかとシグたんの荷物が積み上げられる。
最初は「えー?これ必要ですか?」とか、「多くないですか?」とか合いの手を入れていたオレだが、しまい直す速度が追いつかなくなったので今は無言でお片づけ中。
いるよなー。
修学旅行でおかんが荷物詰めしちゃってさ、たかだか二泊なのに山のように持たされる奴。
ふりかけとか入れられてたんだぜ?
「それから非常食。」
「ぶはあっ!」
夏に海でたまに見かける奴だ。
黄色い、上に水着の女の子達がきゃっきゃとはしゃいでいる奴。
バナナボート。
「アレク…流石にそれ、要らない…。」
養父の親バカっぷりにシグが涙目になっている。
「持って行け!オヤツにしてもいいからな。」
「食えるのか、それ。」
「知らないのか?バナナだ。」
「いや、バナナは知っているけど…。」
でかいなー。
うん、一人では持ち上がらない。
先生、質問です。バナナはオヤツに入りますか?
はい、トール君。そもそもリュックに入りません!
もうね、アレクセイさんがシグとダンジョンに行けばいいと思うよ?