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バナナはオヤツに入りますか? 1

「俺様は金狼族のアレクサンデルシグムンドだ。」

「わかった、ポチだな。」

 いや。この駄犬をポチなどと名付けたら花咲犬に失礼か。

 兄貴の雑学が犬に付けたい人気の名前リストを脳内にあげてくる。

 この機能、オフにしてえ。

「アレクサンデルシグムンドだと言っているだろう!」

「大五郎とかキナコとか、えーと他には…。」

「シグと呼べっ!」

「仕方ないなあ。オレはトール。非常に不本意極まりないが、シグとパーティを組むことにする。宜しく。」


 いやあ、最初が肝心なので厳しめにあたってますがね。

 大型犬、飼うの夢だったんだよ。

 金狼って、あんた。

 耳が垂れてる狼がいるのかよ。ぷぷっ。

 シグを拾い育てたアレクセイさんが毛色が違って捨てられたのだろうと言っていた。

 実家で飼っていたシェルティのハナちゃんも捨て犬だったんだよ。元気にしてるかなー。あー、地球滅亡したんだっけ?うーん。


「トール?」

 自分の事にいっぱいいっぱいで地球のことなどすっかり失念していたが、みんなはちゃんと成仏できたのだろうか。

 丁度寺院の様な建物の前にいたのでキョロキョロしているとシグが嬉しそうに説明を始めた。

「ここは俺たち獣人の神様、獣神ヨルグを祀っている神殿だ。」

 勝手に食った葉っぱも餌付けした内に入るのかな。

 オレの塩対応にもめげずにシグはどこまでもくっついてくる。

 高齢者に囲まれて育ったオレは特に信心深い訳ではないのだが、なんとなく寺社仏閣神宮教会等々を見かけるとお詣りする癖がある。

 それは路傍の祠一つにも「ここでうちのひいひい爺さんが鼻緒を切ったから先の土砂崩れに巻き込まれんで済んだんだ。有り難や有り難や。」なんて供え物をする古老達を見てきたせいだと思う。

 獣人の神様か。

 オレにはあまり関係なさそうだが、シグもいるしお参りして行くか。

 アレクセイさんからダンジョン攻略の支度金という名目でシグの迷惑料を貰っていて、懐はほんのり温かい。

 お賽銭は奮発して、自分で稼いだ残金千円を入れた。

(これからダンジョンに行きます。シグが怪我をしないように見守りください。)

 オレ、戦力外だからなー。

 最初っから神頼みというのも申し訳ないのでこれから剣なんかも買って努力はしますよ?

 でもねえ。

 新歓で誘われたテニサーでラケットをホームランしたのは苦い思い出だ。

『われは獣神だ。獣人を見守るのは当然である。』

 おわっ。こ、これはもしや。


 ぴこん。

<『神との対話』

 獣神ヨルグとのコンタクト達成

 ヨルグの加護LV1を取得>


「あ、ありがとうございます。くれぐれも宜しくお願いいたします。」

『うむ。自らの願いではなくその駄犬を案じるいきやよし。』

 あーあ、シグよ。ヨルグ様からも駄犬認定されてるぞ、お前。

『他に願いはないか?聞いてやるぞ』

 なんと。

 神様自ら願い事の追加を承認してくれました。

 千円奮発した甲斐があったな。

「えーと、では、地球のみんなが成仏できますように。」

『うむ。しかと聞いた。』

「オレの家族はみんな善人なんです。極楽とか天国とか、是非そういうとこへお願いします。」

『うむ。しかと聞いた。』

 …あ、れ?

「聞いてくれてありがとうございます?」

『うむ。おぬしは欲が無いな。』

 やはり。聞いてるだけかいっ。

「…若干ツッコミを入れたい欲はあります。」

『そうか。ではよき旅を。次は肉を供えろよ。』


 威厳たっぷりだったラウラ様より駄犬の神様なだけあってお茶目な感じだったな、ヨルグ様。

「おい、トールっ。お前もしかして御神託を受けたのかっ?」

 人気の少ない神殿とはいえ全く無人なわけでもない。

 そこにシグのよく通る声が響いた。

 あー、無駄吠えも躾けないと駄目か。

「駄犬の世話をしていて偉いなと褒められた。」

「は?はあんっ?え、おい、嘘だろ?」

「拾い食いしても食あたりしないようにお願いしておいたぞ。」

「え?じゃあ今度から拾い食いしても大丈夫ってことか?」

「バカだろ?お前。」

「えっ?」

 嫌味とか皮肉とかが通用しない奴らしい。

 待ては出来ないけど気性は素直なんだな。

 あーもう。

 見上げるばかりの大男なのにくそ可愛い。

 お前はレコード会社のシンボル犬か。小首を傾げるんじゃありません。悶絶するわ。

「なあ、お前って、獣化出来んの?」

「…なんでそんな事を聞くんだ?」

「出来るのか?出来るんだなっ!見たい!シグの金狼姿見たいです!」

「え、や、なんか、ヤダ。」

 おっと、鼻息が荒かったか。

「はー。なんだ、獣化出来ないのか。」

「む。出来ない訳がないだろう。」

「いやいや、無理しないでいいからさ。」

「はあ?出来るってんだろ!」

「獣化しないじゃん。出来ないんでしょ?」

「出来るっ!」

 おもむろに四つ這いになってむーんと顔を顰める。

 ちょろすぎだよシグたん。

「ぐ、グアアっ、」

「お、おい。大丈夫か?」

「ウギュアアア!」

 苦しそうな唸り声と共にシグの姿が変わってゆく。

 まさか、お前は!



 はい、本日も素敵な石造りのホテルに宿泊です。

 もちろん手枷な宝飾付きでな!

 隣に首輪付きのもふもふがすぴすぴ寝ている。

 おお、これは快適だ。

 オレも寝ることにした。

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