異世界へようこそ 1
間違いなく二十一世紀に生まれた。
密林で買い物も出来たし、初めて持った端末だって林檎の奴だ。
とはいえ宅配便は雨が降るとしばしば通行止めで滞ったし、携帯はちょっとでも山の陰に入ると繋がらなくなる。
回覧板とともにお裾分けで回ってくるのは猪肉だ。
多分、二十一世紀の日本だったと思う。多分ね。
さて。
そんな牧歌的な子ども時代を終えて成年と同時に都会の大学へ進学した。
修学旅行ぐらいでしか出かけた事のない街中は言葉は通じるものの異世界に等しかった。
どの道にも街灯と信号がある。
電車が長い。
バスも沢山走っている。
スペシャルなコーヒーは呪文を唱えないと買えない。
友人達の会話も、コンビニ店員からかけられる言葉すら、意味のわからない呪文が混じる。
ほんと、ラノベ転生したかのようだ。
それでもなんとか就職し、それなりに馴染んで、やっぱり地方出身でお雑煮用に年末には鶏潰すんだよ、なんてぽろっと言ってもドンびかなかったバイトの子に意を決して告ってみた。
で、オッケーを貰って有頂天、まさに天に昇る心地だった二十六歳の誕生日の夜---
---目の前に閻魔様が居た。