72 ナイトテール女史
名前を貸してくれた同じチームのミルラさん、ありがとうございます。
なお性格は本人とは全く違います。
よね?
今日は、占領戦の登録のためにここ”水上都市ラランド”に来ています。
占領戦の登録は、こういった砦の近くにある都市にいる砦管理人に話し、闘いに参加する事を伝える必要があります。
これは、クラン単位から個人まで登録出来ます。
個人は傭兵としての参加になりますが、これは砦を所有するクランでも他の砦の占領戦に参加出来るようにするための措置なんだそうです。
さて、ラランドに到着したわたし達、わたし、紅蓮、しいなさん、ナインは大神殿を正面に見て左手にある区画に向かいます。
水路に架かっている石橋を3つほど渡り、管理人のいる建物に到着します。
「あら? ヴァニティの皆さんではないですか?」
中に入ろうと紅蓮がその扉に手をかけた時、ふいに後ろから声が掛けられました。
後ろを振り返ってみると、そこにはレディーススーツのように見える形状の皮鎧を着て背中に長弓を背負った、黒髪をアップにしたメガネの美人さんが立っていました。
その後ろには何人か連れていますね。
「おう、ナイトテール女史じゃないか、そっちも登録か?」
ナイトテール女史と呼ばれた女性は、右手の人差し指を曲げその背でメガネのフレームを押し上げる仕草をした後、ニッコリと微笑むと紅蓮の質問に頷きます。
「ええ、そうです。 そちらもですね? 紅蓮さん、しいなさん、それに、ミリオさんにナインナインさん?」
わたしはビックリしてしまいました。 というのも今のわたし達は占領戦のために名前が表示されないようにシステムを操作しています。
これは、占領戦で敵にターゲットにされにくくするためなんだとか。
紅蓮を狙え、よりあっちの剣持ったやつを狙えの方が分かりにくいですからね。
驚くわたしを見てクスリと笑うと、ナイトテールさんは種明かしをしてくれました。
「フフッ、ごめんなさい。 申し遅れました。 私はナイトテール、クラン《ナイツ・オブ・ナイツ》の者です。 ミリオさんのお噂はかねがね、中つ月から聞いてますよ」
なるほど中つ月さん経由ですか、それなら納得、かな?
「初めましてわたしはミリオです。 こっちはナイン」
「しかし女史が出てくるとはナイツは割と本気なのか?」
自己紹介が終わったタイミングで紅蓮がナイトテールさんに尋ねます。
「そうですね。 なにせ水滸伝の事は兄様が気に入ってらっしゃいますから」
そう言うとうっすらと微笑むナイトテールさん。
兄様?
「ナイトテールはナイトハルトさんの妹らしいよ」
疑問に思っていると、しいなさんがこっそりと教えてくれました。
ふむふむ。 ご兄妹でゲームをやってらっしゃるんですね。
その後、なんとなく一緒に建物に入り、お互い登録を無事済ませます。
「では明日の戦場で。 ミリオさん、兄様の期待を裏切らないように。 では」
そう去り際にナイトテールさんに言われました。
颯爽と仲間を連れて去っていくナイトテールを見送っていると、紅蓮が少しため息を吐きながら一人ごちます。
「あの兄様病がなければいいやつなんだけどなあ」
その紅蓮の声を聴いてしいなさんが苦笑します。
「……怖かった」
さっきまでわたしの後ろに隠れていたナインが、やっと出て来てそう言います。
うーむわたしはそんなに怖いとは思いませんでしたが。
でも、ナインはちょっと人見知りな所がありますからね。
その後はお城に戻って、占領戦の流れをエリザベータから聞く事になりました。
まず、開始時に陣地を構築する。 ここではリスポーン地点のための旗を立てる事が出来ます。
そして、戦場保護バフという死んでもバフが消えない(時間経過除く)バフが貰えるそうです。
そこから敵の持つ砦に攻撃を仕掛ける訳ですね。
どうやって砦を手に入れるかと言うと、砦の各所に旗があり、これはランダムで出現するようです。これを持って、中央にある交感所に旗を立てれば攻略成功となります。
ただ、戦闘は1時間の時間があり、この間なら攻守が入れ替わりながら戦闘が続きます。
と、そこでエリザベータの部屋の戸がノックされます。
「はーい」
とエリザベータが返事をすると、扉が開き一人のエルフの男性が入ってきました。
「やあ、僕さっ! 来たよボス」
「だれがボスよ! ゴホン、紹介するわ。 こいつはミルラ、エルフの【ストライクシンガー】よ」
ギュイーーーーンッとギターをかき鳴らしながらミルラさんは挨拶してくれました。
「やあ! ご紹介に預かりました。 僕はミルラ、よろしくね子猫ちゃん達!」
そういってウインク一つ。
「あー、性格はこんなだけど腕は確かだから」
げんなりしながら紅蓮はフォローを入れます。
「それで、ミルラも占領戦に参加するわ。 さっき登録を済ませて来た…… わよね?」
そう言って疑わし気にミルラさんに聞きます。
「勿論さボス!」 ギュイーーーーンッ
それに自身満々に答えるミルラさんですが、またギターをかき鳴らします。
うーんここは個性豊かな人が多いですねえ。
そうして立ち回りの再確認をしてから今日は落ちました。




