68 ボスと光魔法
ボス部屋は、PT毎に独立した造りになっていて、それぞれ別空間のようになっているそうです。
ここのボスはウォータージャイアント。 回廊で見ないなと思ったらここにいたんですね。
という事は、ウォーターエレメントもボスなのかと紅蓮に尋ねたら頷かれました。
エレメントは逆に物理弱点らしいので挑むのは止めておいた方がいいらしいです。
さて、扉を潜り抜けた先には30m×30mくらいの大きな部屋の中央に立っているのがウォータージャイアント。 大きさは3mくらいでしょうか?
ウォーターの名前の通り、青く半ば透き通った身体を持っている巨人です。
入ってすぐに巨人は動き出しました。
すかさずトウカがアピールを使用し、ウォータージャイアントのヘイトをトウカに向けます。
クリシュナが後ろに回り込み、わたし達は側面に、レイド戦のやり方ですね。
トウカの【蒼炎弾】を合図にこちらも攻撃を開始。
弱めの魔法を撃ってから、順次様子をみて火力を上げていきます。
現在の舞バフは、【防御の舞】、【活力回復の舞】、【魔力回復の舞】です。
【魔力増加の舞】がない事にナインは不満そうでしたが、これはしばらく経ってから使う予定です。
巨人の攻撃方法は振り下ろしと、前方扇状に攻撃が発生する両腕での薙ぎ払いです。
様子見が終わり、完全にヘイトがトウカにあると思ったわたしは【魔力増加の舞】を使用。
ナインの顔がパッと輝くような笑顔になり、【ソーラーハウル】の詠唱を開始します。
【ソーラーハウル】が当たったウォータージャイアントは大きくよろめき膝を着きました。
これが紅蓮が言っていたよろけ状態でしょうか?
この状態での攻撃にはヘイト値が加算されないそうなので、高火力を撃ち込むチャンスなのだとか。
ナインは【ソーラーハウル】を再詠唱。 クリシュナもイヅナも最大火力の魔法を詠唱する。
トウカは連射の効く【炎弾】を叩き込んでいます。
やがて、よろけが終わったウォータージャイアントは立ち上がり咆哮します。
そして無茶苦茶に腕を振り回して薙ぎ払ってきます。
それでトウカの《結界陣》がはじけ飛びます。
しかし、スキルのディレイは終わっていたのですぐに張り直し難を逃れます。
その少しの間に受けたダメージも、【活力回復の舞】による自然回復だけで良さそうですね。
その後も危なげなく闘い、ウォータージャイアントは沈みました。
「おめおめ! やっぱり問題なかったな」
部屋から出てすぐに紅蓮からお祝いの言葉を貰いながら、すぐさま移動します。
他のプレイヤー達が扉前にかなりいたので。
やはりボスは人気なのでしょう。
さて、回廊には敵の出現しないセーフティーエリアという空間がいくつかあります。
ボス部屋前もそうですね。 そこに移動し、ボスのドロップを確認しましょう。
えーと、わたしに出たのは、”武器強化スクロール”1枚、”【ソルレイ】の単体魔法書”1冊。
あとはウォータージャイアントの骨が4つですね。
”単体魔法書”とは、スキルではなくスキルで使用出来る魔法のうちの一つを覚えれるという物です。
これで覚えてない属性の魔法を使用出来たりします。
その分スキル枠を食ってしまうのですが。
ただ、物によっては使えないアイテムなのですが、これはどうですかね?
説明によると、《光魔法》【ソルレイ】を使用出来るとありますね。
……うん? 光魔法?
「……ミリオ、しんゆう! 売って欲しいはよはよ!」
この魔法書について説明した所、ナインが勢いよくわたしに飛びついてきました。
そして流れ作業のように紅蓮に襟を摘まみ上げられていました。
「落ち着けっての! さて、また見たことない魔法だな。 値段とかどうするか」
どうしましょうかね。 でも悩む必要もない気もします。
「店売り価格でどうですか?」
それを聞いたナインは驚き、紅蓮はやっぱりな、という顔をしました。
「まああれです。 友達価格というやつですよ」
そう言ったわたしにまたナインが突撃してきましたが、今度は紅蓮は止めませんでした。
「……ミリオありがとう。 ありがとうしんゆう!」
「よかったなロリっ子」
その後使用した【ソルレイ】は、指先からレーザーのような物を撃ち出す魔法でした。
データはこうです。
【ソルレイ】 消費MP45 細いが火力のある光を放つ。 威力52 オーバーヒット可能。
失われた《光魔法》の一つ。
という物でした。
探せばまだまだ色々出てきそうですね。
「運営もやるじゃないか。 マンネリ気味だったから神獣以外でも盛り上がりそうだな」
紅蓮も、ワクワクした様子で考え込みましたね。
ナインは新しい魔法に夢中です。
わたしですか? 当然トウカ達のブラッシングに忙しいですよ?
そんな感じで今日も楽しくプレイ出来ました。
たまに魔法にあるオーバーヒット可能とは、物理にも魔法にも与えられる最大ダメージ値という物があり、オーバーヒットはその最大値を超えてダメージを与える可能性があるという物である。
なおオーバーヒットが出た場合、敵によってはよろけ状態になる。
例:【オーラスピア】の最大ダメージが仮に360とすると、クリティカルで380ダメージが出た場合は20ダメージが引かれ360ダメージになる。




