60 レイド戦の前に
ボス戦前のあのワクワク感を出せてたらいいなぁ
「いい機会だからいいんじゃないか?」
でもわたしレイドの事殆ど知りませんよ?
わたしがそう言うと、リナリーが任せろとばかりに頷きます。
「ならあたし達教えるし。 おっさん、まだ締め切りになってないんでしょ?」
「おう、さっきも言ったが魔法アタッカーが少なくてな。 まだ時間はある、だな?」
シグノさんはそう言って側にいた男性に尋ねました。 その質問に男性は頷き答えます。
「ね? やろうよ、てかトウカちゃん達はやる気みたいよ?」
そう言われトウカ達を見て見ると、やる気に満ちた目でこちらを見ています。
「きゅん!」 「にゃう!」 「チッチ!」
『やる気満々みたいだよ~?』
ふーむ、そういう事なら。 まあわたしもちょっと興味もありますし。
「ではよろしくお願いします」
と言う事で、レイドに参加する事になりました。
わたしはまず、魔法アタッカーが集まっている列に移動します。
そこは3人ほどの人が座っており、列の先頭は頭の上に吹き出しのようなウインドゥが出ており、そこに”魔法ATPT @3”と書かれて、あ今@2になりましたね。
「よろですー」 「よろしくー」 「……よろ」
わたしが近づくと、3人は口々に挨拶をくれました。
「よろしくお願いします」
そう言って列の一番後ろに座りました。
「んじゃ説明するよ~」
紅蓮とリナリーが両脇に座り込むと、早速授業が始まりました。
まず、レイド戦は役割がしっかり決まってそれぞれにPT事に分かれている事。
タンクPTと呼ばれる盾職とヒーラーのPTを中心とした、これはレイドの強さに応じて1~3PTある場合があるそうです。
この場合はサブタンクPT1、とか2とか呼ばれます。
物理ATPT、物理攻撃主体のアタッカーパーティーの事ですね。
魔法ATPT、魔法攻撃主体のアタッカーパーティー、これはわたしが参加するPTです。
そして、タンクPTのヒーラーが不測の事態で機能しなくなった時や、ATPTに攻撃が飛んだ時のためのサブヒーラーPT。
またこのPTは、一部のヒーラーが使用できるMP回復スキルである【マナリチャージ】要員でもあります。
そして、味方にバフを掛けたり敵にデバフ(悪い効果を敵に与える魔法)を掛けるバフPT。
大体こんな構成になります。
PTですが、これは連合と呼ばれる特殊な、PT同士を組み合わせるシステムがあります。
1PT6人が最大12PT組めるもので、こういったレイドや戦争時に組まれます。
水竜レウゲメトン討伐は、もう何度も討伐がされている物で各PTの動きは研究され尽くしているそうです。
その流れとしては、まずタンクPTが部屋の中央にレウゲメトンを引き寄せターゲットを固定する。
それまで各ATPTは攻撃しない事。
タンクPTから合図があるまでにATPTは、レウゲメトンの側面または背後に周り込む事。
これは、レウゲメトンが時々放つ水圧ブレスを避ける為と、背後からの方が物理クリティカル率が上がるためだそうです。
つまり魔法ATは側面、物理ATは背後になる訳ですね。
また、タンクPTのヒーラーも側面に来ます。 これは背後にいるとタンクが見えなくなってヒールが飛んでいかない為です。 当然タンクの後ろにいたらブレスの餌食です。
レウゲメトンはブレス以外の範囲攻撃を持たない為、正面に来なければ危険はないと言う事でした。
後はタゲを奪わない程度に攻撃し続ける事。
「まあ簡単に言うとこんなもんかな? 後なんかあったっけ?」
そう紅蓮はリナリーに尋ねます。
「いいんじゃない? レウゲメトンは簡単なボスだしねえ」
そうリナリーが言った所で、シグノさんが声を上げます。
「よーし、そろそろ募集を締め切るぞー? 来てないヤツはいないな?」
そう言ってシグノさんはATPTから順にバフを掛けていきます。
タンクPTは1、サブヒーラーも1、ATPTは3PT、魔法ATPTは結局それ以上集まらず1PTのみでした。
途中、4PTにバフを掛けた所でシグノさんのMPが尽きたようです。
「ちょっと待ってな。 誰かリチャ出来るやついないか? ……レベル差で通らないか」
ふむ、あれなら大丈夫かな?
「ちょっといいですか?」
そう一言断りを入れて、《魔術(神域)》の【魔力回復陣】をシグノさんの足元に掛けます。
「おお!? MPがモリモリ回復しやがる! サンキューな嬢ちゃん」
【魔力回復陣】は回復される対象のMP総量で効果が変わるので、大丈夫だとは思ってたんですが効いたようですね。
「すごーい、ヒーラーでもいけそうだね!」
そう言って話し掛けてきたのは、同じPTの りりり さんでした。
見た目は20代くらいの女性です。
「巫女ってすげえのな? うちのクラメン、巫女、覡?にならなかったんだけどこの話したら悔しがるぞ」
そう言って意地悪な笑みを浮べたのは、こちらも同じPTの少年のアバターのユラフィス君です。
「……すごい(確信)」
言葉少ないのは、わたしよりちょっと小さめの少女の ナインナイン・フォグテール・サーガリアス4世 さんです。 ……長いですね。
三人共に、デモニックローブと呼ばれる黒系のローブを着ています。
りりりさんと、ユラフィス君は別々ですがクランに入っています。
ナインさんは無所属ですね。
そうやってそれぞれ出来る事を話し合っていると、シグノさんがわたし達PTにバフを掛け出しました。
「よーしこれで最後だな。 ああそうだ。 嬢ちゃん悪いが、タンクの所に防御陣、だっけ? あれ掛けてくれると助かる」
さっき、りりりさん達と話してたのを聞いていたんですね。
そして、特に問題ないので了承しました。
「がんばってなー」「がんばれ~」
紅蓮達二人に見送られ、いよいよボス戦始まります。
【マナリチャージ】 消費MP67 MPを回復させる。威力66 通称、リチャ
掛ける対象とのレベル差が大きいと効率が落ちる。
デモニックローブ 上下一体型身体装備
防御力 106
MP増加 50
セット効果アリ
デーモニックグローブ 腕装備
防御力 34
セット効果アリ
デーモニックブーツ 足装備
防御力 32
セット効果アリ
デーモニック装備セット効果
INT +4 PER -1 最大HP -27




