56 師匠と弟子
さにゃさん、詩絵さん名前貸していただいて感謝感謝!
その闘いは、シャナやエリザベータの解説がなければ、わたしではどういったものかすら分からないものでした。
何せ、消えたと思ったら中央でぶつかり合っていたりしますので。
まあそんな訳で、これは後に解説込みで思い出した物である事をご了承ください。
しいなさんの「眠くなってきた」発言は挑発なのかと思いましたが、エリザベータの言う所ではあれはしいなさんなりの「本気出す」発言らしいです。
それが証拠にさっきまで、わたしからしたらそれでも凄まじい闘いでしたが、しいなさんがウトウトし出してから様相が変わりました。
紅蓮がフェイントからしいなさんの真横に移動し、剣を横薙ぎにしようとした瞬間、今までにないほどの距離を飛び退きました。
わたし達はパーティーを組んでいるのでそれぞれのパラメーターが分かるのですが、今しいなさんのプレイヤーの体調が睡眠状態になってました。
うん? これは試合中止ですかね。
そう思ったわたしにエリザベータが言います。
「さあ、ここからが本番よ!」
その言葉が本当であるかの如く、紅蓮が再度突撃します。
「【ダブルスマッシュ】!」
剣が強く輝き、名前の通り二回剣線を描きしいなさんに襲い掛かります。
しかし、データではしいなさんは寝ているはずなのにその攻撃を二回とも防ぎました。
「もういっちょ! 【ダブルスマッシュ】! からのー」
紅蓮は再度【ダブルスマッシュ】を仕掛けます。 当然のようにそれを防ぐしいなさん。
しかし、紅蓮はそこから大きく踏み込んで最後に弾かれた剣を無理やり軌道を変え、しいなさんに切りつけます。
しいなさんは動きません。 しかし、その剣はまたもやしいなさんに阻まれます。
何時の間にか、浮いていた盾を右手に持って構えたのです。
そして、そのまま盾を構えたまま身体ごと紅蓮に突っ込みます。
「むにゃ、【シールドバッシュ】、【シールドホームラン】」
【シールドホームラン】は、【シールドバッシュ】からの派生技でバッシュで浮いた相手を盾で吹き飛ばすサンナイトの専用技だそうです。
サンナイトは、全職中一番盾での攻撃スキルが多い職なんだとか。
「おっとぉ!」
紅蓮はその攻撃を地面に伏せるような動きで躱しました。
そしてその体勢から。
「【ワイルドスラッシュ】!」
下から上へ、その斬撃はまたしいなさんに防がれましたが、体勢は崩れました。
【ワイルドスラッシュ】は、本来真横に振って攻撃する技らしいのですが、紅蓮はシステムアシストを切っている為、ああいった独自の動きも可能なんだそうで、わたしには真似できない動きです。
【ワイルドスラッシュ】の動きで無理やり身体を立ち上がらせた紅蓮に、しいなさんの攻撃が飛びます。
「【シールドブーメラン】×2」
左右の盾がうなりを上げ、回転しながら飛んで来ます。
それでも紅蓮は一つ目の盾に剣を叩き付けて、もう一つの盾に当てる事で回避に成功します。
「前だったらあそこで被弾してたわねぇ」
そうエリザベータがこぼします。
どうやら、しいなさんは紅蓮の師匠だったらしく、しいなさんのリアル事情が忙しくなかった時にはこうして模擬戦を沢山していたらしいです。
ふむ、師弟対決…… ですかね。
結局、試合時間の10分までお互いに当てる事は出来ずに終了しました。
しいなさんはその後も起きてこないので「放置で!」というエリザベータに従いエリザベータの部屋に移動する事に。
「さて、結局占領戦の助っ人だけど、しいなさんと、紅蓮、あとは、さにゃ に詩絵も参加するわ」
さにゃさんに詩絵さんですか。 まだお会いしたことない人達ですね。
「詩絵ならもう会ってるわよ? というかここにいるわよ」
そうエリザベータに言われ、周りを見渡すもわたし達以外誰もいません。
誰もいないと告げようとしたその時、視界の端に何やら黒い物体が?
「よろしく……」
その黒い物体は微かに聞こえるような声でそう言うと、スっと消えて行きました。
「アレがダークエルフの詩絵、特殊職の【ダークマター】よ。 二つ名は《暗黒物質》」
ダークエルフとはエルフからの特殊進化の種族で、とても難しい種族クエを経てなれる種族らしいです。 見た目は黒い肌のエルフといった感じだそうです。 いえ何分、わたしは詩絵さんがよく見えなかったもので。
また【ダークマター】も特殊な職らしく、現在ゲーム内ではたった一人しかいないそうです。
「あれはクセが強すぎて、課金してでも元の職に戻すヤツが多くてな」
そう紅蓮が言います。
つまりレアな職と言うよりは、やりずらい職だと言う事です。
ここら辺の職業の数は、公式が上げているので気になったら見て見るといいと言われました。
なお【神獣の巫女】はまだわたし一人らしいですね。
掲示板によると、何人かは転職出来る条件になったらしいですが、転職すると今までのプレイスタイルと合わないと言う事で元の職のままになったようです。
どうも普通のテイマーは近接よりの人が多いようですね。
これはテイマーが《魔法(無)》しか覚えないために、早々と魔法系を捨てている為らしいですね。
話は以上言う事で部屋から退出しました。
”フロートシールド・動かざる旋風”:盾装備
盾防御力 290
回避率 -18%
超級武器効果 シールド防御力 +5.24%
ショック状態になる確率 -50%
移動速度 +7
超級武器”二律背反シリーズ”の一つ、一回性クエストで極低確率でクエストアイテムとして貰える。
種類としては大楯で、1mほどの大きさの盾が二枚、空中を浮遊して装着者に追従する。
盾ではあるが武器扱いなのは、装備の武器欄が塞がるからである。
普通の武器が持てなくなるので、これを扱えるのは【サンナイト】くらいだろうと言われている。