53 新たなるモフモフ
そうやってわたしがオコジョさんの方を見ていると、その短い手で切り分けたお肉を口に運ぼうとしていた動きをやめ、私の方を見て絶望したような顔をします。
なぜかトウカ達も同じ顔をしてます。
これは……
「ああ、違うんですよ。 食べるなって言ってるんじゃないですからね? ささっまだまだありますから食べてくださいな」
わたしがそう言うと安心して食事を続けます。
ふふっ、可愛いですね!
ご飯を食べ終わった後も、オコジョさんはトウカ達と一緒になって遊びだしました。
なんだかすごく嬉しそう。
きっとずっと一人だったんじゃないかな。 ゲームのキャラクターなんだけどそんな気がしてなりません。
やがて、日が暮れ出し辺りは夕日に照らされ出しました。
やはり、リアルより時間が経つのは早いですね。
そんな事を思いながらトウカ達に声を掛けます。
「トウカ、クリシュナ、シャナ帰りますよ」
その声にトウカ達はわたしの側に。
トウカの背中にはオコジョさんが乗っていました。
「ごめんねオコジョさん。 わたし達もう帰らないと」
わたしがそう言うとトウカ達が悲しそうな声を上げます。
「きゅーん」 「にゃうう」
オコジョさんは顔を下に向け悲しそうです。
シャナはわたしの頭の上に移動し何も言いません。
その後に、トウカとクリシュナがわたしの足にすり寄ってはわたしの顔を見、すり寄ってはわたしの顔といった行動を繰り返します。
分かってますよ。 でもね。
「ねえオコジョさんはどうしたいですか? わたしは無理やりテイムするのは何か違うって思ってるんです。 もしオコジョさんがわたし達と一緒に居たいって少しでも思ってくれるなら……」
オコジョさんはしばし、トウカと見てクリシュナを見て、わたしの頭の上のシャナを見、そして。
”神獣(幼体2):アーミンのアナタへの信頼度が規定値以上になりました。 テイム可能です テイムしますか? YES NO”
と出ました。
わたしはもちろん《使役術(神獣)》を使って仲間にしましたよ。
テイムが終わるとオコジョさんは私の身体を駆け上り顔を寄せてきます。
フフッ可愛いですね!
さて名前を決めないとですね。
オコジョ、英名だとアーミンですが、和名はもちろんオコジョ、ああ、昔はクダキツネと思われていたという話がありましたか。
ふむ、クダキツネ、クダ…… そういえば飯綱とも呼ばれてましたか。
「あなたの名前はイヅナ。 どう?」
イヅナはさらにわたしの顔にすり寄ってきました。
「チーチッチ」
気に入ってもらえたようで何よりです。
その後はトウカ達も加わり、モフモフ天国でした。
お城に戻って庭にトウカ達が向かうと、紅蓮がやっと話出しました。
「ふう、一時はどうするのかと不安に思ったけどちゃんとテイム出来たな」
紅蓮は、神獣と気付いても一向にテイムしようとしないわたしにヤキモキしていたようですね。
テイムの方法は、モンスターの信頼度を上げるか、モンスターのHPを減らして抵抗できなくして無理やり使役のスキルを使うか。 です。
普通はHPを減らして…… の方が主流らしいですね。
信頼度の上げ方はモンスターによって違うらしいので、よっぽど強いモンスターでなければそっちをやった方が楽らしいです。
「まあ話聞いた限りじゃ、ハインドも戦わずに仲間に出来たらしいし、神獣は信頼度を上げてテイムするものなのかもな」
そうかもしれませんね。
庭で一緒になって遊ぶトウカ達を見ながら、そうだといいなと思います。
あんな可愛い子を戦って傷付けるなんて……
まあ、他のモンスターを倒しまくってるわたしが言う事ではないですけどね。
さてイヅナのステータスを確認しましょう。
テイムモンスターネーム:イヅナ
種族:神獣 アーミン(幼体2) レベル:20
STR 20
CON 22
DEX 26
AGI 30
INT 31
PER 37
SYM 30
HP 72
MP 98
スキル
《爪牙撃》 1
《聖雷魔術》 5
《魔法強化術》 2
《隠密》 5
《雷装着》 1
《主人に憑依強化》 1
ふむふむ、これは魔法主体ですかね?
初めて見るスキルもありますね。
《魔法強化術》は魔法使い必須のスキルだそうですね。
《雷装着》は身体に雷を纏って攻撃するスキルですが、イヅナは多分あまり使わないんじゃないですかね。
《主人に憑依強化》これは紅蓮も見たことはないそうです。
スキルの説明を見ると、イヅナが私に憑依してイヅナのステータスを加算し、さらにイヅナのスキルをわたしが使えるようになるそうです。 なお憑依時間はレベルに応じるみたいですね。
今だと1分ですか。
これは、《隠密》で隠れて雷魔法を撃ち込むなんて闘い方もいいですね。
紅蓮によれば、これから先は物理無効とか特殊な能力を持つモンスターが増えてくるらしいので色々な攻撃手段があった方がいいらしいです。
さて、紅蓮は先に落ちるとの事ですので、わたしはモフモフパラダイスに飛び込みましょうかね!
神獣アーミンテイム条件:一定時間自分のテイムモンスターと一緒に過ごさせる。
別にテイムしていいか聞く必要はない。
その代わり信頼度が初期値より多くなる。
トウカ達が最初からよくなついているのはその為。
戦闘脳以外なら、特に難しいテイム条件ではない初心者向けの神獣ともいえる。




