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27 黒虎と花

「きゅーーーーーーーん!!」


食べようと思ったエサを取られたのがトウカの怒りを呼んだのか、突然高い叫び声を上げると目にも止まらない速度で黒い猫に飛び掛っていきました。


「あ、まっ!?」


子猫の方はトウカの速度が予想外だったのか、その突撃を避けれずにもみ合いになり咥えていたエサを落としてしまいました。

そしてすぐにトウカが子猫を組み伏せその首を咥えました。


しかし……


「トウカっだめっ!」


わたしの制止の声に戸惑い、咥えていた口を離し困惑した顔をこちらに向けます。


「きゅ、きゅーん?」


そんなトウカに優しく語り掛けます。


「トウカ、その子をよく見て?」


トウカはその言葉に従い、その子猫が衰弱していてグッタリとしていることに気付き組み敷いていた子猫の上から退きました。


「トウカは優しい子ですね。 エサならまだあるからそのエサはその子にあげましょう、ね?」


そう言って新しいエサを出しトウカに与えます。


「きゅん!」


トウカはわたしの側に近寄り、エサを素直に受け取ります。


「さあ、そのエサはアナタの物だよ。 お食べ?」


その言葉を理解したのか子猫は始めオズオズと、そしてすぐにガツガツとエサを食べ始めました。

エサはすぐに食べ終わり子猫は。


「にゃ、にゃう」


と物欲しげに鳴きました。

まだ足りないんですね。 そう思いもう一つエサを取りだすと子猫の前に置いてやります。

とうぜんですが、警戒している猫なんかの前に手で直接なんて真似はしませんよ?

食べないか、最悪噛みつかれますからね。

やがてそのエサも食べ終わり、子猫はヨロヨロとですが起き上がってきました。

そして、しゃがんでいたわたしの足に頭をこすりつけてきたのです。

かっ、かわいいですね!


気付いた時はモフモフしていました。

首の辺りをカキカキ、背中をナデナデ……


はっ!?


視線を感じてそちらを向くと、そこには半目でこっちを見てる紅蓮と微笑まし気な視線を向けるハインドさんが居ました。


「こ、こほんっ! さ、さてもう大丈夫だよね? お行きなさい?」


子猫はそう言うわたしを見上げ首を傾げます。

そして。


”神獣(幼体):黒虎のアナタへの信頼度が規定値以上になりました。 テイム可能です テイムしますか? YES NO”


あれーー?


「大変です! この子、神獣ですよ!?」


慌てて紅蓮たちに報告します。 ですが。


「気付いてなかったのか……」


あれーー?


ハインドさんも苦笑してるし、あれれーー?

どうやら気付いてなかったのはわたしだけみたいです。


『さすがミリオ!』


シャナ、それ褒めてないですよね!?


いえ、それよりも子猫の方です。


「ねえ、うちの子になる?」


システム上OKでも、この子に直接聞きたいですよね。


「にゃう」


子猫、いえ黒虎はそう鳴くと頭を縦に振りました。

で、あるならば。 YESを押しましょう。


”テイムが成功しました。 テイムモンスターに名前を付けてください” 


名前、名前…… そこで黒虎をよく観察してみる。

よく見ていると体毛の黒は紫黒色をしていました。虎しまの方は銀色がかった灰色ですね。

さて、なにがいいでしょうか。


黒、クリシュナ、クリシュナはヒンドゥー教の聖典の一つ、マハーバーラタにおいて主人公のアルジュナを鼓舞した黒い肌の英雄ですね。 クリシュナ自体も黒という意味があります。


「クリシュナはどうですか?」


「にゃーう!」


クリシュナは了承を示すように一声鳴いてわたしの足に頭をこすりつけてきました。

フフッかわいいですね!

クリシュナはやはり虎なのか手足が猫よりも太く、ややがっしりしてるかな?

紫黒色の毛は艶やかでやや輝いているかのようです。

瞳の色は金色で、これは言ってませんでしたがトウカと同じ色ですね。

ふむ、神獣の目が金色であるかもしれません。 その事を二人に伝えます。


「ふーむ、それは重要な情報かもしれませんな。 ちょっと図書館で調べてみましょう」


ハインドさんは顎髭を撫でながら答えます。


「さて神獣を仲間に出来たけどどうする? オレはちょっとこの辺を探索してみたいんだが」


わたし達は紅蓮の提案に賛成し、辺りを調べる事にしました。


遺跡のような瓦礫、そう言った雰囲気のかつて柱だった物や、屋根のようなすべて石造りの建造物がそこかしこにあります。


「にゃう!」


と、遺跡を調べているとクリシュナが鳴き私の足元にすり寄ってきます。

どうもわたしをどこかに誘導しているようですね。


「どうしたのクリシュナ?」


「きゅん!」


すると、トウカまで同じ行動を取りだしました。


むむ? 取りあえずトウカ達の誘導する方に行ってみましょう。


そしてそこには、他の建造物より比較的形の残っている建物があり、その外壁には花の彫刻が壁一面に掘ってありました。


見事な彫刻だとは思いますが、これが一体……


それを見ていた紅蓮があっと声を上げます。


「これ、この花! あの湖にあったやつじゃないか?」


んん? そう言われて見ればその様に見えますね。

花の形がちょっと特殊だったので覚えています。

あの花は何と言うか綺麗な星型をしていました。 この彫刻の花も同じような星型です。


『これはフェーデの花っていうんだよ』


わたしの肩に座っていたシャナがその花の名前を教えてくれました。


『女神ラーファーの誓いの花。 それが、フェーデの花』


そう続けるシャナの表情は無表情で、緊張からか紅蓮の喉を鳴らす音が耳に……


『ヒント獲得おめでと~~う!』


みんながずっこけました。


うつ展開、胸糞展開はありません。 ありません。


黒虎のテイム条件。

他のテイムモンスターとの戦闘を中止させること。 もしくは戦闘を開始しない事。

その後で黒虎が求めるままにエサを与える事。

となります。

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