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23 リアルでの友達

主人公の学校を高等校付属中学校へと変更しました


その姿は確かに紅蓮その物でした。

まさか同じ学校の、それも有名人である嵐山あらしやまさんだったなんて。

有名人だったら紅蓮の顔見れば分かるんじゃないか、と思われるでしょうがそもそもちゃんとお話ししたのは同じクラスになってからですし、それにあんな男の子のような話し方する人というイメージがありません。

でも、なんだか納得しているわたしもいて……


「あー、信じられない?」


「あ、いえそうではないんですが」


嵐山さんは髪を纏めていた手を放すと、頬を掻き掻き苦笑します。


「まさか同じ学校だったとはなぁ」


うーん世間は狭いといった所ですか。 それにしても。


「紅蓮の時は演技なんですか?」


一人称がオレですし、リアルがバレないようにと言った所なんですかね?


「あー、どっちかっていうと普段が演技?」


え? それはどういう……


その時、わたしの眼鏡型COMの視界の端にセットしていた時計機能がホームルームの時間が迫っている事を知らせてきます。


「いけない、時間ですよ」


「じゃあまた後で話そう」


そう言うと急いで教室に向かいます。




新学期二日目である今日は授業はありません。 

その代わり中学の二、三年は学力推移調査があります。

なので、担任から食堂まで移動するように言われました。

食堂は初めて利用したとき驚きました。

この食堂は主に高等部が利用するのですが、もちろん中等部が使用しても構いません。

そしてこの食堂には「焼き立てパン」のコーナーがあります。

大体10時頃からパンを焼き始め、昼食時間ごろにはホカホカの焼き立てのパンが棚に並びます。

今日はパンを焼くのかな? それだったらお母さんのお土産に買って帰ろうかな、お母さんはここのOGでここのパンが大好きなのです。


学力推移調査も終わり、今日はお昼前で終了です。

本格的に授業が始まるのは明日からですね。


帰り支度をしていると清美きよみが寄ってきます。


みさお帰りにどっかよってかない?」


わたしがそれに答えようとすると、清美の後ろから声が掛かりました。


「すいません前原まえはらさん、少し朝霧さんをお借りしてよろしいかしら?」


そう言われた清美はびっくりして目を見開きますが、すぐに表情を改めるとドウゾドウゾと嵐山さんの前から退きます。

その際に耳元で後で教えてね~と言い残して帰っていきました。


「朝霧さんウチはどちらの方かしら?」


と聞かれたので○○の方面だと教えたら、ではバス通学ですわね? と言われたのでハイと答えると。


「ならうちの車で送って差し上げますわ」


と言われました。 うちの車?



校門側には一台の高級そうな車が止まっていました。

わたしは車に詳しくないのでわかりませんが、何となく高そうです。


わたし達がその車に近づくと、中から初老の運転手の男性が出てきました。


「お待ちしていましたお嬢様」


なかさんお疲れ様ですわ」


中さんと呼ばれた男性はスッと後部のドアを開けます。


「さあ朝霧さんどうぞ?」


嵐山さんに勧められ、思わずといった感じで乗り込んでしまいました。

車内は思っていたよりも広く、ゆったりとしたスペースになっていました。


「中さん○○までやってちょうだい」


「畏まりました」


そう言うと車は音もなく走り出しました。

しばらくは誰も話しださず、車内を無言が支配していました。

やがて嵐山さんがポツリと呟くように話しだします。


「驚いたよね、学園一のお嬢様がこんなでさ?」


その横顔はなんだかとてもさみしそうで……


「いえ、どちらかと言うと違和感がない事に驚いています」


嵐山さんは驚いたような顔でこちらを見た後、思わずといった感じで噴き出してしまいました。


「プハッ、ハハッそうか違和感ないか…… 分かるやつは分かるってことかなぁ」


ひとしきり笑た後、嵐山さんは表情を改め、私に話し掛けます。


「こんな話いきなり話されても迷惑だろうけど……」


「聞きたいです。 聞かせて?」


嵐山さんはちょっとだけ迷った後、話してくれました。


「まあ細かい所は省くけど、オレの環境がある日ガラリと変わってさ。 いままでのオレ・・だと周りに迷惑がかかるようになっちゃってさ。 そこでわたくし・・・・が生まれたっていうか演技を続けるだけの毎日になってさ。 まあそこでラグナに出会えてストレスなんかは発散してるんだけど」


そこまで話した後、またさみしそうな表情を浮かべ……


「あの! 友達になりましょう!」


思わずそう言っていました。 話の流れでもなんでもない、まさにいきなりのわたしの言葉に嵐山さんは驚き、そして。


「リアルでもよろしくっ!」


と言って手を差し出してきました。

そしてわたしは当然その手を取るのです。


その時わたしの胸の奥が疼いたような気がしたのは気のせいでしょうか?



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