171 洞窟内で調べもの
デインジャラスにてきとーな関西弁モドキが登場します。
ぬるい目でスルーしてください。
わたしが洞窟前にたどり着いたときには、何人かのPCがあちこち見て回っている所でした。
例のクエをクリアしておけば洞窟には入れるので、入ること自体は問題ありませんが彼らはどうやらその洞窟の前にもなにかないかと探しているようですね。
「おんやぁ? 巫女ちゃんやん。 どしたんこないな所に?」
わたしがなんとなく回りを見渡していると、突然声を掛けられました。
声を掛けられた方を見てみると知り合いでした。
「こんにちは帽子屋ハッタさん。 ちょっとクエ関係で」
わたしがそう言うと、帽子屋ハッタという名前のプレイヤー、彼はこのゲームの情報を集めるクラン”詩編の1ページ”というクランのクラン主です。 その彼がニシシといったまるでチェシャ猫のような笑顔でこちらにやってきます。
「ということは、デズデモーナ関係やな? それならいい情報おまっせ! 安ぅしたるさかい買わへんか?」
お? どうやら彼、というか彼のクランでしょうか? クエ情報を持っているようですね。
うーんどうしましょう。 情報を買ってもいいんですが自分で調べてみたい気もしますし。
あ、そうそう。 帽子屋の見た目はシルクハットに大きな水玉模様の蝶ネクタイの一見胡散臭そうな笑顔の男性です。
元ネタは多分『不思議の国のアリス』に登場する”狂ったお茶会”のメンバーの一人、三月ウサギ、眠りネズミそしてチェシャから三月ウサギと共に”狂ってる”と呼ばれた帽子屋がモデルでしょう。
ちなみにハッタというのは続編の『鏡の国のアリス』で三月ウサギと共に再登場する帽子屋の別名です。
なお三月ウサギはその時ヘイヤと名前を変えて登場し、なおかつアリスは彼らが帽子屋と三月ウサギだとは気づかないままだったのですが。
「ありゃ? どうやらお呼びじゃないみたいやな。 オーケーオーケー! 自分の足で調べるのもまたオツなもんやしな」
「すいません。 行き詰った時にはお願いします」
「かまへんよ! そんときゃWISでもしてや!」
わたしの様子を見て彼はそう言って離れていきました。
この相手の状況や雰囲気を見てすぐさま態度を決めれるのはさすがという所なんでしょうか。
彼のクランは彼を慕っていつの間にか出来ていたというエピソードに納得しますね。
さらに追加情報ですが、本来クラン名は『狂ったお茶会』と付けられる予定だったようですが、”狂った”の部分が不適切ではないかという内部の意見で変更されたという話もありましたね。
さて、このままボーっとしていてもなんですのであちこち見ていきましょうか。
まずは洞窟に入るには、洞窟を塞ぐ大きな扉の前にいるNPCに話し、クエを受けていれば洞窟内に転送されます。
洞窟内は巨大な円形に見える広場となっていて、その先に奥へ向かう道と、上に上がる階段が見えます。
洞窟内にもあちこちを見て回る人がいますね。
壁を触っている人や、真ん中を計算で定めようとしている人なんかもいます。
そしてわたしが真ん中あたりに足を運ぼうとした時、声を掛けられました。
今度は知らない人でした。
「やあ、君もここの調査かい?」
「ええ、まあ……」
「うむうむ、ここはすばらしいよね! この見事なヘクトゴンの形を見なよ! これは……」
それから怒涛のような専門用語のオンパレードが始まりました。
すでにこっちを見てないので、立ち去ってもいいような気もしますが。
とはいえなんかこっちの動きを封じるような位置取りで滔々と語り続ける彼にこれは長くなりそうだとため息がでそうです。
「……だからここの式がこうなって……」
「お! こんなとこにおったんや、巫女ちゃん、探したで」
そう言って入り口で別れた帽子屋さんがわたしの肩をポンと叩いてきました。
「えっ?」
突然の事にわたしが声を上げると、向こうの彼も不快げに帽子屋さんを見ます。
どうも御高説を遮られて不満なようです。
「いやー悪いなにいちゃん! こっちが先約や。 さあいこか」
そう言ってわたしの手を引いて階段の方へ向かいます。
しばらく無言で階段を上っていく途中で、やっと手を放してくれ立ち止まりました。
「あかんで、あんなんに引っかかってもうて」
「ありがとうございました?」
取り合えずお礼を言う所でしょうか?
「ああいうあほぼんに会ったの初めてかいな?」
あーそうですねぇ。
「リアルでは何人か…… ゲームでは初めてですかね」
なんといいますか、ああいう専門用語だけをまくしたてる輩には結構出会っています。
なぜあほなどと言われるかというと、彼らは専門用語しか言えないからですかね。
もっと言うとかみ砕いて説明が出来ないといいますか。
彼らのような人は頭が良い証拠として専門用語なんかを交えて話しますが、いざかみ砕いて説明してくれなどと言われるととたんにこちらを見下したりします。
そして理解出来ない事をばかにしてくるのですが。 まあ早い話が彼らは専門用語しかわかっていないだけなんですけどね。
本当に頭が良い人はちゃんとわかりやすいように説明してくれます。
それはその専門用語がなにかを理解しているからです。
……まあこの話は長くなるし悪口になるのでこの辺にしておきますが、頭が良いと思われたい人と、本当に頭が良い人との間には越えられない壁があるという事です。
そんなやり取りをした後、帽子屋さんと別れました。
一番上にいってみ? との言葉を貰って。
ちなみにわたしは純粋に頭が悪い人ですw
頭が良いと見られたい訳ではなく、単に頭が悪い人ですかね。
偶に雑学披露しますが、軽く調べれば出てくる物ばかりなのでこれで頭が良い振りはちょっと無理がありますよね。
雑学披露は、どちらかというとそうだよね! とか見てくれた読者の方と共感を得たい感じでしょうか?
そも調べれば詳しい話も出てくる現代に知ったかぶりとかやっても意味がないと思っております。
ぶっちゃけwikiに書いてるね! で終わらせればいい気がします。
なんか愚痴みたいになってしまいました。