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169 試し切り!

本日もお届けします。

 「うっひょー! いくぜいくぜ!!」


紅蓮がノリノリで刀身から蒼い炎を吹き上がらせる剣を振り回し部屋を縦横無尽に駆け抜けます。

それに合わせるようにしいなさんが的確に紅蓮のターゲット以外の敵を抑え込んでいます。

そして紅蓮が3匹目の敵を沈めた後。


『よし、ヘイトは十分みたいね。 行くわよっ! 《戦慄のシンフォニー》!』


エレンの詩魔法である《戦慄のシンフォニー》が敵に炸裂します。

これは、術者が選択したPT内のPCに抱いている敵意を威力に変換してダメージを与える魔法です。

ここではしいなさんに対して抱いているヘイト値がそれにあたります。

タンク職と合わさればかなり使い勝手のいい魔法ではないでしょうか?

そのエレンの魔法によって部屋内のMOBが全滅しました。


「おつかれー」


ユーティがそう言いながら、HPMPの自然回復速度上昇するバフをしいなさんに掛けます。


「で、どうですか? 新しい剣は」


ゴキゲンな紅蓮に尋ねます。

まあ答えは分かり切ってますけどね。


「いいね! 前のは少し敵のHPゲージが残ったけどこの剣だと削り切れるようになった!」


ここで言う削り切るというのは、いつもここのMOB相手にやっていたスキル込みのコンボでのことですね。


「……次は私も参加する」


今回はナインまったく攻撃参加してませんでしたしね。


「おう! 威力もつかんだし後は普通にやっていくか」


そうして2時間ほど狩りをした後、休憩の為にセーフティエリアに移動することになりました。

ここの近くにあるセーフティエリアはほかの場所と少し違う所です。

他のセーフティエリアは何もない小部屋があるだけなのですが、そこは小部屋の中央に墓石が一つだけポツンとあるのです。

そしてその墓石には【デズデモーナここに眠る】と彫ってあります。


『デズデモーナかぁ』


「”天使のように美しい”んですかね?」


エレンの独り言のような呟きにわたしがそう答えると、エレンはニッと笑った後肩を竦めた。


『いくら美しくても浮気を疑われて殺されたんじゃあねえ』


まあそうですかね。 


「なになに? なんの話??」


ユーティがわたし達の話が分からなかったのか、聞いてきました。


「あー、デズデモーナからオセロを想像したんですよ」


「オセロ? ゲームの?」


「ああ、シェイクスピアの4大悲劇のやつだっけ? 内容しらんけど」


ユーティは知らなかったようですけど、紅蓮は名前だけは知っているようですね。


「そうですね。 まあゲームのオセロの語源になったようですし、ユーティも間違いではないんですが。 ウイリアム・シェイクスピアの物語の一つでハムレット、リア王、マクベスそしてオセロで4大悲劇とされますね。 内容としては、ヴェニスの軍人オセロがオセロを憎む同僚イアーゴーの策略でオセロの妻デズデモーナと親友キャシオーが浮気をしているというのを信じてデズデモーナを殺してしまうも、それがイアーゴーのウソだったと気づいて自殺してしまうという内容です」


ちなみにオセロの副題はヴェニスのムーア人ですね。


『そのオセロの中でデズデモーナは貞淑で天使のように美しいと言われていたのよ』


エレンがそう補足をいれてくれました。


「あと、デズデモーナはギリシャ語で不運という意味もありますね」


「ほへー」


ユーティが感心したような声を上げます。

エレンが詳しいのはイタリア人だからでしょうか? ヴェニスはイタリアの都市ですしね。

わたしが詳しいのは単に乱読なだけです。


「そうなると…… ここに書いてるのもなにか意味があるのかな?」


紅蓮がそう言って墓石を眺めます。

しいなさんも気になるのか墓石の側に…… あ、違いました寄りかかって寝る準備を始めましたよ!?


「いやいや、しいなさんさすがに墓石に寄りかかるのはダメだろ」


紅蓮があきれたように言ってしいなさんを引っぺがします。


「うーむ。 難しい話するから眠くなってきたよ。 ムニャムニャ」


「あらら、ちょっと早いですが終わりにしますか?」


わたしがそう言うと、皆了承したので引き上げる事になりました。

まあ今回の目的は、紅蓮の試し切りなので問題ないでしょう。

どうも、しいなさんお仕事が忙しくなってきたらしいですし、無理はさせれませんよね。

この部屋については後で調べてみましょうか。

そうして各々(おのおの)帰還スクでお城へ戻るのでした。



シェイクスピアを最初に読んだのは、中学の図書館にあったマクベスだった記憶があります。

いわゆる劇台本形式の本でしたね。


小話

オセロ、もしくはオセロウ、オセローとも。

主人公オセロはムーア人、北アフリカのムスリム、つまり黒人であるとされていて、当時のイギリスはすでに黒人奴隷がいたし、イギリス文学ではムーア人のような肌が黒い人は悪人として書かれることが多かったのですが、作中ではオセロに同情的であった事からかなり珍しい事でもありました。


オセロの原典として、ツィンツィオの『百物語』第3篇第7話がそうだとされています。

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