158 嵐のような彼女
次の日、学校に登校し清美と挨拶を交わしていると、乙女がやってきました。
なんかちょっと困惑? 悩んでいる?風ですがどうしたんでしょうか?
「どうしたの~? 乙女?」
清美も気付いたのか、乙女に声を掛けました。
「ええ、ちょっと今日の朝知り合いから連絡が来まして……」
話を聞いてみると、イタリアにいる乙女の知り合いが明日引っ越ししてくるそうです。
なんか急ですね。
なんでもイタリアのある有名な企業のお嬢様らしく、かなりのゲーマーだそうでラグナをするために引っ越しを決めたらしいです。
「うは~そのために引っ越しまでする?」
清美も唖然としていますね。
ラグナは、現在日本のみアクセスできる状態です。
技術的な面よりも、文化や風習の違いで国によってサーバーを分けているゲームが多いのですが、ラグナもそのパターンですね。
それでも、サービス開始より1年後を目処に順次アクセスできるようにするというアナウンスはあったらしいのですが。
「待ちきれない! んだそうですわ。 まあ私もラグナの話を振ったりしていましたから、私の所為もあるのでしょうけども……」
そう言って乙女が軽くため息を吐きます。
うーむ行動的というかなんというか。
とは言え、乙女はその知り合いを嫌っている訳ではなさそうで、なんか出来の悪い兄弟に対して愚痴を言っている感じですかね? まあわたしは姉弟いないんですけど。
しかし海外から引っ越しで、明日着くという事はかなり前から準備していたでしょうに、乙女には今日連絡ですか。
思い立ったがなんとやらな人なんですかね。
「まあ彼女は感性だけで動いている所はありますわね」
わたしがそう言うと、乙女も頷きながら言います。
そんなこんながありながら、学校は問題なく終わり下校となりましたが、ここで問題が発生しました。
乙女を待つ車の前に金髪の少女が、腕組みをして立っています。
その少女は、勝気な表情を浮べ此方を見ています。
『ようやく来たわね乙女! 待ってたわ!!』
COMの翻訳によって日本語で聞き取れますが、これはイタリア語ですかね?
ということはもしかして……
「ちょ! ロリータ!なんでここに!? 来るのは明日の筈ですわよね?」
ロリータと呼ばれた少女は、後ろにふんぞり返りながら自慢げにこういいました。
『敵を騙すにはまず味方から!』
「敵ってなんですの、敵って……」
乙女が疲れたようにそう言いますが、彼女は聞いていないかのようにこちらに向かってきます。
『それは兎も角、紹介してくださいな!』
「ああ、はいはい。 彼女は私のイタリアの友達のドロレス・シラー。 こっちは朝霧 操で、こっちは前原 清美、二人共ラグナやっていますわよ」
『よろしく! 私のことはローでも、ロリータでもどっちでもいいよ!』
ドロレスの短縮形がローですね。 ロリータはなんというか、そのローを可愛く呼んだ物がロリータになりますかね。
日本語でいうと、清美の短縮形が清で愛称がお清ちゃんになる感じですかね?
『私も明日にはラグナ始めるから色々教えてね!』
そう言って彼女は握手を求めてきます。
まあ断る理由もないので握手に応じましたが、気付いたらハグされていました、
『オウッ! ちっちゃくて可愛い! 日本人大好きよ!』
わたしの後は清美がハグされていますね。
わたし達が小さいと言う様に、彼女は乙女より少々背が高いです、
なんというかモデル体型とでもいうんでしょうか?
彼女はどうもわたし達と同い年だそうで、こうなんと言いますか戦力差と言いますか、いやまあいいんですけどね。
『さて、色々話たいけど引っ越しもあるしここでお別れね! アップレスト~♪』
そう言って側にあった高級車に乗り込み去っていきました。
なんとも騒々しい感じでしたが、そうそう、アップレストはまた近いうちにという意味のイタリア語の別れの言葉の一つですね。
わざわざ翻訳切って言ったんでしょうか?
まあ兎に角、わたし達も帰りましょうかね。
「なんかどっと疲れましたけど、また明日ですわ」
「いや~面白い子だねぇ、私好きだよああいう子!」
乙女は疲れ気味に、清美は楽しそうにそう言います。
わたし? わたしは、そうですね。 昔なら苦手だったかもですが、今はそうでもない感じですかね?
ラグナをやるようですし、これから付き合いも増えるでしょうし、それに乙女の友達ならいい子だと思うので仲良くやれたらいいですね。
さてそれでは帰ってラグナでもしましょうか。
今日は清美に付き合って色々観光しつつ狩り場をめぐる予定です。
ではまた後で!




