129 象牙の塔
遅れましたー;
さて、気絶…… 出来る訳もなく、オークションも終わりになりました。
”エリザベータ:え~、それではこれでオークションならびに、特殊転クエレイドを終了します。 皆様参加してくださってありがとうございます”
そこでエリザベータがわたしの方を見ます。
わたしはちょっと気後れしつつも立ち上がり、参加者達に深くお辞儀をしました。
”ミリオ:えっとこれでいいのかな? 皆さん、わたしのクエストの為にわざわざ参加していただいてありがとうございます。 お陰で三次転職する事が出来ました。 本当にありがとうございました”
わたしがそういうと皆から改めてお祝いの言葉が飛んできます。
わたしはもう一度心を込めてお辞儀をした後、解散となりました。
「乙! ミリオどうだった? 高レベルレイドは」
諸々(もろもろ)の用事を済ませた後、エリザベータがそうわたしに問いかけてきました。
そうですね。 色々ありますけど今の心境は……
「すごく、疲れました」
「アッハッハッハッハッハ! そう、お疲れ様!」
エリザベータがそう笑いながら、わたしの肩をポンポンと叩き、また後でと去っていきました。
卵はクラン倉庫に入れておいてくれるそうです。
その後ろ姿に手を振った後、待っていてくれた紅蓮達の所へ。
「よしっ! オレ達も帰るか!」
「……今日は疲れた」
くるりとGKの方へ振り向き向かおう…… とする紅蓮の肩をポンと叩き、その歩みを止めます。
「さっきの件。 言い訳を聞きましょうか?」
「あ、いやその。 違うんだ! あれは…… そうっ! 気合いを入れる為に、あー、つい? えっとその」
「え? なんですって?」
わたしはズイッと紅蓮に顔を近づけます。
「あーうー、いやゴメン、ごめんなさいっ!? チョッ、目が怖いって!?」
「まったく…… 気を付けてくださいね?」
わたしのオネガイに紅蓮は力なく頷きました。
さあそれでは帰りましょうか。
「……ミリオコワイミリオコワイ」
なにやらナインが震えているようですが、まったく失礼な。
お城に帰り着くと、ナインはささっと自分の部屋に、紅蓮も疲れたので一度落ちると言いました。
わたしも落ちないとですね。 ちょっと晩御飯の支度に間に合いそうもないですけど。
「あのね? お母さんゲームすること自体は止めないわよ。 でも寝食を忘れてまでは違うと思うのよ?」
はいすいませんでした。
今回は軽い注意だけでしたが、気を付けましょう。
お母さんコワイ。
しっかりと後片付けをして、勉強も終わらせてからゲームにINです。
さて、卵はクラン倉庫に入れておくという話でしたが…… ああ、ありました。
掲示板によるとドロップした卵は全部白い卵だったそうですが、これは金色ですね。
”神獣の卵” かつて世界を管理していた神獣の卵。その内の守護獣と呼ばれ敬われていたものの一体。 女神の巫女のみが孵化させる事が出来る。
と書いてありますが、たしか《育成所》という施設が出来たんでしたっけ?
どこにあるんでしょうか。
ああ、掲示板にありました。 何々? ”象牙の塔”にあったと書いてありますね。
何処にあるんだろうと調べてみると、王都の外れにあるらしいですね。
丁度INしてきた紅蓮とナインを誘って行って見ましょうか。
「お? ”象牙の塔”か。 あそこは魔法使いの塔だからオレは行った事ないんだよな。 ロリっ子は?」
「……転クエで何度かある」
「《育成所》があるらしいので行って見たいんですよね」
わたしがそう言うと、二人共付き合ってくれる事に。
では早速ですが行って見ましょう。
王都の外れにその塔はありました。
象牙のイメージ通りにその外観は白く、日に照らされ輝いていました。
普通に真っすぐ建っておらず、緩く曲線を描いています。 その姿はまさに象牙。
ナインの案内で中に入ると、かなりの数のプレイヤーらしき人が列を作っていました。
「あそこが《育成所》かな?」
紅蓮に釣られて列の先頭を見てみると、《育成所》の看板が見えます。
「ちょっと時間潰してからまた来るか?」
そうですね。 列がはけてからまた来ましょうか。
そうしてしばらく塔の中を見学して再び戻ってくると、流石に人が減っていました。
「いらっしゃいませ。 育成所へようこそ! どのようなご用件ですか?」
受付のお姉さんから説明を受けた所、ここに卵を預けて、指定の素材を集めてくれば卵が孵るそうです。
では早速預けてみましょうか。
「あれ? こ、これは……!? す、すいません。 少々お待ちいただけますか? 所長を呼んできますのでっ!」
そう言って受付のお姉さんは奥に走っていきました。
なんでしょうか?
「おう、テンプレキタコレ?」
テンプレ? ってなんですかね。
象牙の塔:文芸批評家サント・ブーブが詩人ビニーの芸術姿勢を批評した言葉。 「象牙の塔にこもる」という表現で、芸術家、学者が現実逃避的態度で自己の理想にこもり、芸術または学問三昧にふけることを意味する。もともとは「あなたの頸は象牙の塔のようである」(『雅歌』7章4節)と女性の美しさをたたえる言葉で、サント・ブーブによって転意して伝えられている。




