123 ザルフェ戦開始
しばらくすると、列を整理していた人達の中からナイトテールさんがやって来ました。
「お待たせしました。 こちらは大丈夫です」
「よし、じゃあ細かい部分を決めましょうか」
といっても、事前に粗方決めていたのですが。 でも最終的に問題がないかの話し合いは大事なんだそうです。
今回決めるのは、クエストアイテムは全てわたしに渡す事。 これはどっちにしろわたし以外は手に入らないので当たり前という事らしいです。
クエに関係なさそうなアイテムはオークションにかける事。
巫女専用アイテムはわたしに優先権がある事。 これは元々わたしがクエを進行させていなければ出来ないレイドであるためだそうです。
レイドが失敗しても文句や賠償などはしない。 当たり前ですね。 参加して貰えるだけで有り難い訳ですし。
実はこういうトラブルなんかが結構あったらしく、《ハーヴェスタ》が出来たのは、こういうトラブルが多発したかららしいですね。
「後は、そうねぇ。 楽しんでレイドをする事! かしら」
そう言ってエリザベータは笑います。
そうしてエリザベータが話し終えると、ナイトテールさんが話を引き継ぎます。
「では、今回ミリオさんは後方の主催者PTに入ってもらいます。 これはミリオさんが死亡した際、クエが失敗になる事を避けるためです」
なるほど、そういう事もあるんですね。
その為、しいなさんはわたしのガードに着くようです。
それと舞バフは、ナイツの方と半々で掛けて欲しいと言われました。
ナイツも巫女がいらっしゃるんですね。
では話合いも終わったので、わたしは主催者PTに合流します。
紅蓮は物理ATPT、ナインは魔法ATPTですね。
「じゃあ頑張ろうな!」
「……絶対成功させる」
「はい、頑張りましょう」
そう言って二人と別れました。
主催者PTの場所に行くと、しいなさんがすでにいました。
「ミリオちゃんこんー」
「こんです。 しいなさん」
わたしに気付くとしいなさんが手を上げて挨拶してきます。
「今日はがんばるよー。 コーヒー2杯飲んで来たよ!」
おお、気合いが入ってますね。 でもおトイレは大丈夫ですかね?
その後はジャーノさんや他の方もやって来ました。
後方になるのでリナリー、ひぎつねさんも同じPTです。
最後の一人はエリザベータなんだそうです。
クリスタさんは普通にATPTですね。
皆とたわいもない話をしていると14時になったので、準備の出来たPTから順に塔に飛んでいきます。
「んじゃあたし達も行こうか!」
エリザベータが合流し、リナリーが立ち上がりながらそう言うので了承してGKで塔に飛びます。
塔に到着したPTは順次最上階に向かいます。
狩りをしていた普通のPTが何事かと見ていますね。
どうもデーモンロード パスファリクのレイドだと勘違いしている人もいるらしく、参加しようと着いてくる人もいます。
そういう人は、誰かが説明してお帰り願っているようですが。
因みにパスファリクは昨日終わっています。
そうこうしている内に最上階に到着し、再びPT毎に集合です。
全が揃っている事を確認し終えた時には、30分ほど過ぎていました。
でも野良レイドよりは統率が取れた行動らしいですね。
”ナイトテール:よし、揃っているならバフ開始せよ!”
ナイトテールさんの号令でバフが掛け始められます。
わたしも、【防御の舞】、【活力回復の舞】、【魔力回復の舞】を掛けます。 残りはナイツの方にお任せで。
どうやら、一人だと舞バフは4つまでですが、二人だと6つまで掛かるらしいですね。
3人はまだ検証出来ていないのだと、中つ月さんが残念そうに言っていました。
”ナイトテール:では、今回の主催者であるミリオさん。 お願いします”
ナイトテールさんに言われ、わたしは前に出ます。
うう、視線が痛いってこういう事なんですね。
参加者の見ている中、部屋の中央に進みます。
そうするとクエが進行し、部屋がいつの間にか別の空間に変わっていました。
「な、なんだ?」 「特殊フィールドかな?」 「おほー、ワクワクしてきたぞ!」
その空間は、床は黒い石のような物が敷かれ、その周りはまるで渦のようなものに囲まれている感じです。
広さは学校の体育館2つ分くらいでしょうか?
天井は見えません。
中央にはうっすらと3mくらいの人が鎖に繋がれていました。
やがてその人物の輪郭がはっきりし始め、完全に見えるようになった瞬間、身体に巻き付いていた鎖が弾け飛び俯いていた男が顔を上げます。
その大きさは何時の間にか5mほどに変わっていました。
それと同時にメッセージが入ります。
”特殊レイド 闇に捕らわれたザルフェ 戦が開始されます”
これが、ザルフェ……
さあ、闘いの始まりですよ!




