12 森の中にあるお気に入りの場所で出会う
お気に入りの場所、それはこの森の中ほどにあるそうです。
どういう場所なのかは着いてからのおたのしみとの事。
この森は結構広く、中ほどから次のエリアに繋がっているそうです。 ただし、そのエリアに行くにはエリアボスという敵を倒す必要があるのだとか。
次のエリアの推奨レベルは10レベル以上、10レベルになれば一次転職が可能になるそうです。
わたしだと【戦獣使い(ウォーテイマー)】に転職になるんだとか。
紅蓮の先導で森を進んでいきます。
そうそう、紅蓮のレベルはカンストで経験値が入らないので悪いなと思っていたのですが、実はちゃんと利点もあるようです。
そもそもこのゲーム、高いレベル差があるパーティーはお互いに経験値が入らないシステムなんだとか。
それを回避というか、そのままだとレベル差がある友達と遊べなくなるということで実装されているのが師弟システム。
師弟システムとは、高レベル者が師、それよりも20以上離れている者が弟子となる物で、つまりレベル19差までは経験値が入る、減衰はするらしいですが。 これはいつでも解除できる物で、パーティーを組んだ時に師弟になり解散する時に解除するのが一般的だとか。
それで利点ですが、弟子はもちろん高レベルと組んでも減衰せずに経験値が入るという事。
師は弟子とパーティーを組んだ時や、弟子のレベルが上がったりした際にクンストポイントという物が貰えます。
これは、他では手に入らないスキルやアイテムが専用ショップで買えるようになるという専用のお金のようなものでしょうか。
さて森の敵ですが、その殆どはオオカミでこれはフォレストウルフという名前です。
一匹ならマナバレット4発ほどで倒せるんですが、このオオカミはだいたい2~3匹ほどで行動しています。
そこで紅蓮が残りのオオカミを受け持ってくれ、その間にわたしが倒すという感じで戦闘を続けた所、なんとレベルが4まで上がりました。
とはいえここの推奨レベルは6以上らしいですが。
能力値はこうです。
レベル 4
STR 5
CON 5
DEX 7
AGI 7
INT 9
PER 10
SYM 12
HP 17
MP 31
と、こうなりました。
スキルはこうです。
《使役》 1
《魔法(無)》 4 3UP!
《魔力操作》 3 2UP!
《杖術》 2 1UP!
《薬学》 2
《採集》 2 new!
森で紅蓮に勧められて薬草なんかを取っていたら、なんと新しいスキルを手に入れました。
採集を手に入れてからは、素材がある場所がぼんやりと光って見えていたのが、かなり光が強くなって手に入る数も増えました。
使役は使ってないから上がらず、薬学は生産しないと上がらないようです。 あとは順次いい感じに上がっていってますね。
魔法(無)が上がったために、オオカミへの攻撃は4発から3発になりました。
そうそう基本わたしが敵を倒してるのは、スキルを上げるため、あとプレイヤースキルも含めてなんだとか。
たしかにレベルは高いのに、わたし一人でまともに戦えないという事態になったらイヤですものね。
わたしには高レベルの場所とはいえ、紅蓮が一緒なので道中色々話しながら余裕を持って進んでいきます。
シャナはすっかり紅蓮と仲良くなり、今は紅蓮の頭の上で眠っています。
よく落ちませんね……
話しの中で感じたのはどうもわたしと歳が近いのでは? という事と、自分の事をオレと言う事からも分かりますがかなり男の子っぽいと言う事です。
実は、あまりにも自然で似合いすぎてて、最初オレって言ってる事に疑問を感じていなかった事は内緒ですよ? ですよ?
そうやって薄暗い森の中を適当に出て来た敵を倒しながら進んでいくと、突然目の前が明るくなり開けた場所に出ました。
そこは……
ちょっとした大きさの有る湖とその周りにあるお花畑でした。
「綺麗……」
と、思わず声が漏れる。
『むにゃ。 なになに? わぁ~湖だぁ~!』
丁度、目をこすりながら起き出したシャナが感嘆の声を上げる。
「ここがオレのお気に入りの場所さ!」
紅蓮はそう言って自慢げに笑います。
たしかにこれは自慢したくなるのも分かります。
湖は青く澄んでいて、広場のようになっているため木々に遮られていた太陽の光が降り注ぎ湖面を輝かせています。
お花畑は色とりどりの花が咲き誇り、蝶達が花々の周りを飛び回っています。
わたしは感嘆のため息をもらしながら、そんな景色を眺めていましたが、ふとお花畑の側になにかが見えました。
それは……
キツネの子供?
お花畑の側に蹲っていたのは、キツネの子供のように見える動物でした。
よく見て見るとケガをしているようで、その体毛のあちこちが赤黒くなっていました。
「紅蓮、大変です! あの子ケガしてるっ!?」
「えっ? ……なんだ? あんなモンスいたか? というか、こんなイベントここにあったかな? あ、ちょっ、ミリオ!?」
なにやら考え出した紅蓮を置いて、わたしは子キツネの側に駆け寄ります。
何時の間にかわたしの肩に座っていたシャナと共に。
その子の側にたどり着き、刺激しないように気を付けてそっと座ります。
その子の様子はかなり危ない感じでした。
呼吸は荒く、その毛皮には血であろうものが所々こびり付き、まともに起き上がれないのにこちらを警戒して後退りしようとしてまた蹲ってしまいました。
「大丈夫だよ、アナタを助けさせてほしいだけだから、お願い動かないで」
そう言うわたしに子キツネは警戒をなかなか解きませんでしたが、やがて体力もなくなったのか、わたしがさらに近づいても伏せたままになってしまいました。
「シャナ、この子にポーションって使えるんですか?」
『生産で作った最下級ポーションなら大丈夫だよ~』
そうシャナに言われ、わたしはポーションを取りだし子キツネに振り掛けます。
一本では足りず、さらに3本ほどかけた時やっと子キツネの呼吸が落ち着きました。
よかった……
わたしは安心からホッと息を吐き、ふとわたしの頭上が暗くなったことに気付きました。
「ミリオっ! 危ない!」
ハッして上を見上げると、そこにはこちらを睨み付け、右手を振り上げる巨大な熊が目に入りました。