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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

孤高の魔女は、生徒会長

【短編】孤高の魔女は、生徒会長 (1)

作者: 冷水

書き方の練習中です。

何回か推敲しましたが、読みづらいです。


 気付いたら、五百年後の世界に居た。

 私は魔女狩りにあって、業火に焼かれたところまでは覚えている。


 カレンダーを見れば、2017年3月の表記があって、私はこの春から高校生になるはずだ。

 科学と魔法が混在する世界で、私の生きる時代では排斥に向かった魔法や魔術が、科学と同列に語られている。こんな世界になるなんて、あの時は考えられなかった。

 元々が、個人の資質に由来していた魔術を、大衆向けにアレンジしたのが魔法である。

 その魔法が発展したのは、黒船が来航した幕末の日本で、魔女狩りから逃れるため宣教師に紛れた魔法使いが、日本へ上陸したのを起源に語られる。


 そんな日本という国で、何の因果か、中世の魔女である私が転生した。思い出したのは、ほんの数週間前のことで、高校の教材を買いに行った時だった。

「鏡……?」

 魔法使いが使う『杖』や『水晶玉』といった魔法の触媒。魔法を上手く制御するための補助器具を選んでいたら、唐突に記憶が溢れてきた。

 欧州でもマイナーな、鏡を使う魔法。滅びた国の貴族や王族が用いていたとされる、未来予知や呪いを得意とする魔法の補助道具である。

 今では、少ないながらも占いを得意とする者が、水晶の代わりに使っている。

「あぁ……嫌ぁ。いやああああああああ」

 そして私は、倒れた。

 痛み、苦しみ、(はずかし)められた記憶。貴族の令嬢だった私が、魔術を信奉する国家の崩壊と共に、魔女狩りにあって殺された。

 今では、その時に盗まれた魔術書だけが、その国の存在を示す唯一の手がかり。歴史に葬られた国の、哀れな末路である。


 目が覚めると、私は気分が最悪だった。

 両親の顔が、醜く見えた。姉妹の顔が、他人に見えた。


 ああ。私はこの記憶を思い出した時、既に死んでしまったのだ。

 昨日まで感じていた親愛の情も、友人との思い出も、将来に対する不安さえも。綺麗さっぱり消えていた。精神が耐えられず、人格が崩壊して、前世の『私』が顔を出した。

「困ったな……」

 神なんていない。居たとして、あんな非道が許されるのなら、そんな傍観主義者はいない方がましだ。


 それでも、この『私』は生きなければならない。今生の忘れ形見であるこの体を、殺すのは忍びない。

 かといって、頑張って生きるのも馬鹿らしい。

「うん?」

 ふと、記憶を探るなかで、気になる内容を見つけた。

 古代の魔女は、記憶力が良い。膨大な魔方陣や魔術理論、精密な図形を覚えることが必要で、自然と身につく能力だった。

 ただし、種を明かせばなんてことはない。思考プロセスを工夫するだけで、人間の記憶力は異常なくらい向上する。それを知っているだけ。


「生徒会長?」

 私が通うことになる学校のパンフレット。そこには、面白いことが書かれていた。

 生徒会長は、授業免除が受けられる。奨学金として、学内で使える金券ポイントが受け取れる。他にも、いくつか特権が許されていた。

 特に魅力的なのは、学校が経営するショッピングモールが隣りにあって、会長は月6万円分のポイントを生徒会報酬として支払われるという項目。

「何これ? 最高じゃない」

 学期ごとに、全学年で同時に受ける期末テストの14科目と、魔法実技大会の成績によって、学年問わず生徒会長になるチャンスがある。


 その職務は『学生の見本になること』と『学内法規の実力行使』と書かれていた。

 単純に見れば、抑止力として存在する役目に見えるが、結果を出せば特権階級になれますよと。欧米の貴族制度にも読み取れた。

 極端な成果主義であり、平均や無個性を重んじる日本の教育方針とは、正反対と言える。趣味が良いのか、悪いのか。判断に迷う部分である。

 それでも、個人的には好ましくあった。


「一学期のテストか……」

 私は早い段階で、その玉座を取ろうと考えた。

 まだ入学していないし、最初の機会はまだ何ヶ月も先である。

 見る限りでは、競争率も激しそうで、これからの学生生活が楽しそうに見えた瞬間だった。


----

 入学後、私は孤立して過ごしていた。

 昔はもっと社交的だったはずなのに、今では全てが灰色に見える。楽しくないし、誰かと会話もしたくない。

 携帯に、名前を知っている女の子から連絡が来ても、適当に会話をして素っ気なく切る。相手から心配されたけど、今ではそれも無くなってきた。

『大丈夫? 今度、一緒に遊ばない?』

『ごめんね。今は忙しくて。うん……。ありがとう。またね』


 それでも、楽しみはあった。併設されているショッピングモールに行って、売り物を眺めて一日を過ごす。

 浮かない程度に着飾って、手持ちのお金では買えない衣服や小物を、記憶の中に焼き付けるのだ。

 親とは疎遠になり、学校こそ通わせてくれているが、月のお小遣いなどは無かった。それでも、見て楽しむだけで、十分な気持ちになれた。


「高いな」

 夏に差し掛かった時、テストが近づいてくると、生徒会専用の建物を見上げるのが日課になった。

 校舎よりも高く、周辺を一望できそうな建物の最上階に、生徒会の会議室や個室があるのだと聞いた。入学してから、新入生に解放されていた時期があって、見に行ったことがある。

 そこからの眺めは、最高だった。


 馬鹿と煙は高いところへ上ると表現されるが、昔から、高いところに居るのが権力者のステータスだと考えられている。漫画やアニメの玉座だって、一般人より高いところにある。

 批判的な意味ではあるが、私はその言葉が嫌いじゃない。むしろ、高いところが好きだ。


 全校生徒は、1万人ほどの人数が居る。

 私立学校なのに学費は安く抑えられていて、スポンサー契約している企業や、ショッピングモールのテナント料によって収益を得ている。

 テストで上位10位以内に入ることができれば、何かしらの優遇処置か、便宜が図ってもらえるようになる。


 そもそも、この学校の魔法実技大会というのは、魔法による戦闘である。

 全校生徒がトーナメント式に戦って、参加すれば最低限の単位が得らる。順位を上げれば実技に点数が加算される。

 試験によって、生徒会長や役員が決められるが、座学14科目に加えて、実技の点数を合算した1500点満点の中から、1位以下の順位が決められる。

 試験が同点の場合には、実技の点数や順位によって判断されるので、強い方が残ることになる。


 この仕組みの面白い部分は、1年生にもチャンスが巡ってくること。飛び級は無いものの、勉強を先取りして終わらせても、実技で勝てなければ意味がない。逆に実技で勝てなければ、座学が得意でもトップを取るのは難しい。

 学年によって座学の難易度は変わるものの、学年の垣根を越えて競い合うので、競争相手が見知った相手とは限らない。

 特に、魔法や魔術による戦闘技能が優先される傾向にあるので、先に勉強している上級生の方が有利になっている。


「魔法か」

 私が生きていた時代に比べて、ずいぶんと簡易的になっていた。

 威力や効果は小さくなったが、難易度が下がり無駄がなくなっていて、魔力と呼ばれる精神に由来したエネルギーの消費が、少なくなっていた。

 正規化の果てに、誰もが使いやすく、個人の才能に依存しないよう体系化された魔法。

 もちろん、魔法でなく魔術を使うことも認められていて、基本的には上位互換なので、魔術師は簡単に魔法を使えたりする。


 日本の9割の人間が、魔法を使えるようになっている。

 根本的に科学とは相性が悪く、融合技術こそ少ないものの、自然科学である医学や工学の分野と、治療魔法や身体強化など、使いどころが工夫されて住み分けが出来ている。

 無からの生成は出来ないが、火や氷を生み出す魔法があったり、岩を衝撃なしに砕く魔法があって、使用者の体力に左右されるから多用はされないが、機材の入らない場所での作業には必要とされた。

「良い世の中に、なったのかな?」

 おおむね、日本という国は、平和で住みやすかった。


---

 テストの日になった。

 数学、世界史、現代国語を初めとした、基本的な科目。魔法に関する知識を問う問題や、外国語の試験。

 それぞれ、分からない問題はなく、ミスさえ無ければ満点が取れると思えた。


 実技の大会も、一年生から積極的に参加する者も居る。

 そして、私は一位を取った。


「夏休みが明ければ、私が生徒会長」

 今はその余韻が、とても心地よかった。





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