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夏の音。-ナツノネー  作者: 平凪 空
5/13

過去に揺れるナツノネ 《5》

一度、気付いてしまったら、もう止まらないのが、この感情の特徴といえるだろう。

 真琴は、なんとか美琴が泣き止む方法はないかと考える。

顔を覗き込む。

くりっとした大きな瞳から流れる(しずく)は、花火や周りの光が反射して光り、まるで星が流れているように見えた。


「なんで・・真琴は泣かないのッ?会えなくなるのに・・・」


涙を流しながら、悔しそうに言う美琴。


「美琴が泣いてるから、僕は泣かないよ。二人とも泣いちゃったら大変でしょ?」


美琴が笑顔になってくれることを願いながら、笑顔で話す。

髪をかき分け、頬を(ぬぐ)う。


「美琴、約束しよう。」

「やくそく・・・?」

「うん。ずっと忘れないよ。だから、美琴も僕のこと忘れないで。それで、大きくなって、大人になったらまた会おう。ね?約束!」

「・・・ぜったい?忘れない?また・・・ッまた会える・・・?」

「うん!だから約束!」


小指を立てて差し出す。

ゆっくり絡まる二人の小指。


「美琴、おまじないしてあげる。」

「おまじない?」

「うん。美琴がいつもの美琴に戻るおまじない。目閉じて?」


眉間(みけん)に少しだけ(しわ)を寄せて、頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、素直に言うことを聞く美琴。

その瞬間、チュッと音がした。

一瞬だが、唇に何か柔らかいものが当たった。


「真琴・・・今なにしたの?」

「ん?ちゅーしたよ?」

「なぁッ!?」


ここまで気持ちよく、さらりと言われたら、逆に何も言えない。

カーッと一気に顔が赤くなる美琴。


「真琴のバーカ!!」

「美琴、顔赤いよ?」

「う、うるさいっ!!」

「ふふ、いつもの美琴に戻ったね。おまじないが良かったみたい。」


笑顔は照れてしまったため、見れなかったがいつもの美琴に戻ってくれただけでも、真琴にとっては充分だった。

大きく真っ赤な花火が夜空で咲く。


《ゴ来観(らいかん)、誠ニ有難ウゴザイマシタ。以上デ第23回川ヶ浦(かわがうら)花火大会ヲ終了致シマス》


「帰ろう。美琴。」


美琴に手を差し出す。

うん、と手を握る美琴。

同じ歩幅で歩き出す。

交わした約束を胸に。


 



 ―――風が騒ぎ、風鈴が揺れる。

幾つも音が重なる。

薄暗い青の中、ゆっくり歩き帰る二人を月が見守っているように見えた―――

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