過去に揺れるナツノネ 《3》
また、真琴は美琴を見た。そこには光り輝く風鈴に、目を輝かせながら笑顔で見上げる美琴の姿があった。
それは真琴が見たかった笑顔そのままだ。
「やっぱり美琴には、笑顔が一番だね!」
嬉しくなった真琴は、笑顔で声を掛けた。美琴はまた驚いた顔をしたが、それは一瞬のことで照れくささを隠すように、髪を触りながら少しだけ俯いた。
それを見た真琴は、また嬉しくなり、ふふっと笑った。
「おっ!!ちっこい兄ちゃんと姉ちゃん!また今年も来たんだな!!・・・ってありゃ?今日は親っさんたちは一緒じゃねーのかい?」
突然、声を掛けてきたのは風鈴屋台の店主だった。
美琴と真琴が何と答えようかと考えているとすぐに違う話をしだした。
「それにしても毎年毎年、長い時間見てるのによく飽きねーな!まぁ、飽きられるよか全然いいからな!毎年必ず来てくれる人もすくねーから、こうして兄ちゃん達みたいに嬉しそうな顔してるの見てるとおっちゃんも嬉しいぞ!!」
ガハハハッと大声を出して笑う。
美琴と真琴も訊ねられたことなど忘れて、店主につられて笑った。
《大変オ待タセ致シマシタ。只今ヨリ、第23回川ヶ浦花火大会ヲ開始シマス。》
打ち上げ花火の開始を知らせるアナウンスが聞こえてきた。
良い場所で見ようと一気に大勢の人が移動を始める。
美琴と真琴も、人々についていくように歩き出す。
逸れないように、少しでも長く居られるように―――。
打ち上げ花火が始まり暫くたった頃、人々は歓声を上げたり吐息を漏らしたり、反応こそ様々だが誰もが魅了されていた。
美琴と真琴もそうだ。
「きれいだね!」
「うん!!」
「すっごく大きいね!手が届きそう!」
そう言いながら、美琴は夜空に弾ける様に花開く花火に手を伸ばす。
そんな姿を見て真琴はプッと吹き出した。
「美琴またそれしてる。ちっちゃいから届かないよ。」
「なぁっ!?やってみただけだもんっ!!だいたい、真琴だってわたしとほとんど大きさ変わらないくせに!」
クスクスと肩を震わせながら言う真琴に、顔を真っ赤にし拳を震わせキッと睨み付けて美琴が言い返す。
なんとか笑いやめ、ごめんねと謝る。
そして二人で、また夜空を見上げる。
「次もまた、お祭り来れるといいね」
ふと真琴の口から零れた言葉。
無意識に。
ぽろりと。
てっきり隣から、うん!と元気な返事が返ってくると思っていた。
だが、返事は一向に返ってこない。
「美琴?」
不思議に思いながら色鮮やかな夜空から目線を美琴に向ける。
しかし俯いており表情が確認できない。
微かに肩が震えている。
美琴が泣いているのだと直ぐに分かった。
「美琴どうしたの?泣かないで。顔を上げて・・・?」
真琴自身が泣いたとき優しく頭を撫でてくれた母親を咄嗟に思い出した。
頭を撫でてみる。
が、美琴は俯いたまま泣き止まない。
「美琴・・「真琴・・・」
真琴が美琴の名前を口にした瞬間、美琴も真琴の名前を口にした。
なに?と答える。
「・・・っ、真琴、ズッ・・・わたッ、したち、もぉ・・あえなく、ひッ・・なっちゃうんだって・・ッ」
しゃくり声をあげながら美琴の口から零れ落ちる様に出た言葉は、真琴にとっては耳を疑う程信じられる言葉ではなかった。