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夏の音。-ナツノネー  作者: 平凪 空
1/13

過去に揺れるナツノネ 《1》

━11年前━


 (とお)くから太鼓(たいこ)()()こえてくる。

六歳(ろくさい)美琴(みこと)今年(ことし)も、その(おと)合図(あいず)()わんばかりに(まど)()()(そと)(なが)めた。

(そと)には、色鮮(いろあざ)やかな浴衣(ゆかた)()(まと)い、下駄(げた)をカラコロと()らしあいながら(たの)()(ある)()女子高生(じょしこうせい)、ユラユラ()れるように(ある)きながら()(つな)仲睦(なかむつ)まじく()()男女(だんじょ)姿(すがた)(はぐ)れないようにと(つな)いだ()上下(じょうげ)()りながら(はしゃ)親子(おやこ)射的(しゃてき)(さき)()きそばが(さき)だと笑顔(えがお)()()いながら()けてゆく男児(だんじ)()まれて()のない(あか)(ぼう)(かか)(ある)夫婦等沢山(ふうふとうたくさん)人々(ひとびと)()()っていた。

今日(きょう)夏祭(なつまつ)りというのは()うまでもない。

(いま)(なお)(まど)()()(そと)にいる人々(ひとびと)を、()(かがや)かせながら(なが)めている美琴(みこと)もまた、()まれた(とき)からこの夏祭(なつまつ)りに参加(さんか)している一人(ひとり)だ。

薄紅(うすくれない)浴衣(ゆかた)()(つつ)み、黄色(きいろ)(おび)(こし)でキュッと(むす)び、毎年見(まいとしみ)風景(ふうけい)()きもしない姿(すがた)()んとも(あい)らしい。

普段(ふだん)から活発(かっぱつ)(あか)るく、時折悪戯(ときおりいたずら)仕掛(しか)けては二カっと()()(わら)姿(すがた)(あい)らしいが、普段(ふだん)とは(ちが)(あい)らしさを(かん)じられた。

美琴自身(みことじしん)の『(あそ)ぶのに邪魔(じゃま)だから』という理由(りゆう)(みじか)()られ『(ととの)えるのも整えられるのも(いや)だ』という理由(りゆう)(つね)寝癖(ねぐせ)のついた(かみ)も、毎年夏祭(まいとしなつまつ)りというこの()寝癖一(ねぐせひと)(のこ)すことなく(ととの)えられている。

だが美琴(みこと)は、ふと(なに)かを(おも)()したかのようについ先程(さきほど)まで(かがや)かせていた()(かな)しげに()(うつむ)いた。


美琴(みこと)ー!真琴(まこと)準備(じゅんび)できたよ!(はや)()りておいで~!」


 突然(とつぜん)階段(かいだん)(つた)()こえてきた(こえ)美琴(みこと)母親(ははおや)(こえ)だった。

大好(だいす)きな母親(ははおや)(こえ)にハッとした美琴(みこと)はすぐさま返事(へんじ)をし、(あわ)てるように階段(かいだん)()りる。

玄関(げんかん)につき(そと)()ると(すで)幼馴染(おさななじみ)である真琴(まこと)、真琴の両親(りょうしん)美琴(みこと)の両親が()っていた。


「まぁ~、真琴も美琴も可愛(かわい)いわ~」


そう()いながら真琴の母親(ははおや)は、(ほほ)()()微笑(ほほえ)んだ。


今日(きょう)は、美琴と真琴の二人(ふたり)だけで()くんだからな。喧嘩(けんか)しちゃだめだぞ〜?」


茶化(ちゃか)すように美琴の父親(ちちおや)()う。

美琴の両親と真琴の両親は学生時代(がくせいじだい)からの()()いで、美琴たちが()まれてからも家族(かぞく)ぐるみで関係(かんけい)()っている。

この夏祭(なつまつ)りも毎年(まいとし)(だれ)()けず皆揃(みんなそろ)って参加(さんか)することが両家(りょうけ)恒例(こうれい)だった。

だが、今年(ことし)は美琴と真琴の二人だけで行くことになった。


「え?おかーさんもおとーさんもこないの?」


(ちい)さな()で、母親の手をキュウっと(つか)みながら、真琴が(たず)ねた。

うるうると()(うる)わせ見上(みあ)げる。

(いま)にも()()しそうな真琴の目線(めせん)()わせるように母親はしゃがみ()んだ。

そして真琴の(あたま)()でながら、微笑(ほほえ)む。


「そんな(かお)しないの真琴。お母さんもお父さんも、美琴のママとパパも大切(たいせつ)用事(ようじ)があってどうしても()けなくなったの。美琴も()るんだからいいじゃない。(おとこ)()(おんな)()(まえ)()くなんて格好悪(かっこうわる)いわよ?」


だが、真琴の表情(ひょうじょう)()れなかった。

でも・・・いつもみんなで行ってたのに・・・と(つぶや)く。


「なによ真琴!わたしと二人じゃいやなの!?」


真琴が()きべそをかく様子(ようす)()えきれなくなった美琴は、(きば)をむくように(かつ)()れた。

美琴は、近頃(ちかごろ)はお(ねえ)さんになりきって真琴を(しか)ったり、(はげ)ましたり(なぐさ)めたりしてよく世話(せわ)()いている。

一方(いっぽう)で真琴は元々(もともと)大人(おとな)しい性格(せいかく)なため、美琴を(とく)拒絶(きょぜつ)することもない。

が、勿論(もちろん)(まった)く言い(かえ)さないわけでもなく・・・。


「ちっ(ちが)うよ!(さび)しいだけだもん・・・」

「男のくせに寂しいとか言わないの!」

「こらこら、喧嘩(けんか)するなよ」


()()いを(はじ)めた二人に、美琴の父親(ちちおや)が『言った(そば)から』と(なか)(あき)れたように仲裁(ちゅうさい)(はい)る。


「さ!今日は二人の()舞台(ぶたい)だ!なにせ二人の(はじ)めてのデートだからなっ!写真(しゃしん)()ろう!家族写真(かぞくしゃしん)と真琴と美琴のツーショットね!」


(あき)らかに一人だけ(ちが)うノリで真琴の父親がカメラを(かま)えた。

一瞬(いっしゅん)その()(こお)りついたが、直後(ちょくご)その場は(わら)(ごえ)(つつ)まれた。


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