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電波な子はエクソシスト  作者: ちゃぼてん
7/8

第七羽 届いたあなたの声

そろそろ期末テストだ。

 勉強にやる気を出したことはないが、ノートよく読みさえすれば平均点は取れる。先生に話したら、もったいないと嘆いていた。

 紅茶を飲みながら、気だるくページを進める。

(コーヒーは駄目なんだ)

 怖い。忘れろ。

 ――――それが望みかい?

(違う)

 わたしは誰と会話をしているんだろう。


 窓から射す陽光が琥珀な様な気がして、彼女のことを信じてみる気になった。


 喫茶店に入ると賛美歌が空気を包んだ。

 気分が重い。まるで自分が悪魔になった気分だ。

「苦しいんですね」

 琥珀の声だ。

「恋でもしましたか」

 ステンドグラスから浴びる陽で、琥珀の姿が鮮明になる。

「恋は人を苦しくします。愛する者がいるだけで幸せなのに、愛されない事に絶望して死にたくなってしまうような。

 そんな辛いことがありましたか」

 息を呑んで、ちあきは琥珀を見る。

 陽の光ではない。彼女の背に、黄金の翼が見える。

 幻は一瞬で、現実はすぐそこにある。

 ちあきは微笑んでから、自分が泣いていることに気づく。

「十字架はあなたを傷つけません。あなたは父の子です。あなたの魂を、あるべき場所へ帰しましょう」


「琥珀ちゃんは、お店、休んでいいの?」

「些細な事ですから」

 言外に気にするなと言われて、苦笑する。年下の子に慰められている自分が滑稽だった。

「琥珀の勘ならここです」

「ここで何かあるの?」

 今いる場所は歩道の前で、交差点だ。車道をまたぐように陸橋がある。

 風が強い。

「先輩」

 琥珀が小声で呼び、目で陸橋の上を指す。

(瑠璃と……いく先輩?)

 先輩が瑠璃に何か渡そうとした時、突風が吹いた。

「!」

 こちらに飛んできたので、反射神経の良いちあきがキャッチする。

 何だろう。

(これ――――!)

 二人が陸橋から降りて来た。

(わたしがいく先輩の下駄箱に入れた手紙)

 いく先輩が瑠璃に見せていたんだ!

 わき目も振らず、ちあきは逃げ出した。

「待ってください!」

「ちあき!」

 琥珀に呼ばれても、瑠璃に呼ばれても、立ち止まらない。


「ちあきちゃん!」


 はっきり届いた。出なくなったはずの。

 走り止み、ゆっくり振り向く。

 出なくなったはずの、いく先輩の声。

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