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電波な子はエクソシスト  作者: ちゃぼてん
6/8

第六羽 重なるパーツ

 翌日は祝日。

 部活のメンバーでディズニーランドへ遊びに来た。

『もう少し調査中です』と言った琥珀は、ちあきを観察する気満々だ。興味を持ってくれるのは嬉しいが、違う形でそうして欲しい。

「いく先輩おはよう」

 先輩が嬉しそうに会釈してくれて、ちあきの心は蜂蜜のようにとろけそうになる。最近、覚えたらしい手話でおはようと告げる先輩に、ちあきも会釈する。

 二、三分後。遅れてきた雅も来て全員集合となる。

「やっぱ、最初はカリブの海賊よねー」

 入り口近い、定番のアトラクションは、ちあきも好きだ。そろそろ順番だ。

 乗り込んでシートベルトが締められる。

 軽快な音楽と振動を楽しむ。景色も面白く、水が流れる音と一緒に、骸骨のしわがれた声が聞こえる。

『この先の入り江には、恐ろしい海賊たちが手薬煉引いて……』

 しわがれた声。

 急に動機が荒れた。怖いアトラクションではないのに。

 何に動揺している?

(せっかくだから、楽しまなきゃ)

 思っても、しゃがれた声が頭から離れない。

 思い出の底、誰かの声がよみがえる。

 瑠璃の手がちあきの手を握った。暗くなりかけたちあきの心を、引っ張ってくれた。

 けれど、瑠璃の手が熱いものに触れたかのように、すぐに引っ込んだ。心なしか、なきそうな顔に見えた。

 気になったが、すぐに頭痛でそれどころじゃなくなる。

 ――――どうして私じゃなくて、貴方なのっ!

 どこかで聞いた、記憶もしくは夢。

(不公平だな)

 何故そう思ったのかは分からない。

(恋は不公平だ)


 皆でアイスキャンディーを食べながら、涼をとる。木陰は少し涼しく、ちあきの心も静かになった。

「いく先輩、次ぎ行きたいところありますか?……スペースマウンテンですね」

 いく先輩がホワイトボードを見せて頷く。

今回は空いているほうで、二十分しか待たなかった。

 暗闇の中、縦横無尽に疾走する。

 ――――そうだ。あの日もこんな星空だったね。 

 老人の声が頭に響く。

 軽い吐き気を覚え、視線を感じた。琥珀の目だ。

瑠璃は前のシートで、隣が琥珀だった。

(真っ暗なのに、どうしてこんなにはっきり見えるんだろう)

 薄ら寒むいものをかんじて、視線を逸らした。


「あー楽しかったぁ」

 パレードが終わって、雅が大きく伸びをした。

 琥珀に向き直る。

「で、何か分かった?」

 何か、とはちあきの事だろう。

「カリブの海賊と、スペースマウンテンが鍵みたいですね」

 けろりと返事をする。

 買ったジュースを飲み、ちあきを見て

「ちあき先輩の気配が一番、悪魔の気配と重なりました」

 すーと目を細める。

「何か心当たりは?」

 馬鹿馬鹿しい気持ちと、本気にしようという気持ちが半々。

 でも、遊びと言ったも同然な琥珀からは、善意を感じても、不思議と面白がる気持ちはないように感じる。

 むしろ雅のほうが興味本位な気がした。

 瑠璃のほうは険しすぎる顔で、いく先輩の顔は暗い。

(怒っているのかな)

 気にしてないように振舞ったほうがいいかもしれない。

「カリブの海賊では、声が気になったよ」

「あの陽気な声ですか? 先輩」

「ううん。お年寄りみたいにしわがれた声のほう」

「他には?」

「スペースマウンテンの星とか」

 うんと唸ってから笑顔に切り替わる。

「宿題にさせてください」

 それを最後に、琥珀と別れた。

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