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電波な子はエクソシスト  作者: ちゃぼてん
3/8

第三羽 幸福な部

 部員は五人で、いく先輩にちあき。それと瑠璃と雅に、今日は転校生が来るはずだ。

 学年は一つ下で、どんな子だろうかとわくわくする。

 今日は特別な日だから。

 そろそろかな? と時計を見上げると、外から足音が聞こえた。扉が開き、風が吹き込む。

 慌てて原稿用紙を押さえた。

「はじめまして! 水原 琥珀です。よろしくお願いします!」

 瑠璃と雅の間に、小柄な女の子が立っている。元気で明るそうな子だ。

「あだ名、ラッコでいいー?」

「う~ん」

 琥珀がちょっと困った顔になる。

「じゃ。何がいい?」

「では、先輩。そのまま琥珀と呼んでください」

 琥珀ははきはきと答える。

 ちあきはガスレンジで温めた湯で、紅茶を淹れた。皆へ均等に配る。

「美味しいです! 先輩」

 先輩と呼ばれるのがくすぐったくて、ちあきは笑う。

 そうだ。自分は笑っていい。許されているんだ。

 何かが記憶の穴をふさいでいる。そんな気がした。

「先輩じゃなくて、ちあきでいいよ」

「はい。ちあき先輩!」

 苦笑してお茶を飲む。

 うん。美味しい。

 顔の向きはそのまま、目だけ動かして先輩を盗み見る。猫舌らしく、念入りに冷ましている。紅茶の香りを楽しんでいるみたいで、心が柔らかく解けていく。

 今度の紅茶はなんにしよう。

 ダージリンは充分楽しんだから、次はニルギリにしてみようか。濃い橙色の、すっきりとした香りと風味を思い出す。

(よし。そうしよう)

 帰りに紅茶屋に寄ることを決めて、視線を原稿用紙に寄せる。

 いく先輩がホワイトボートにマジックを走らせる。

 今日のお題は「悪魔」だ。

 ちりりと胸が痛んで、ちあきは顔をしかめた。

「大丈夫? ちあき」

 瑠璃はちあきの体調に敏感だ。気づかないことのほうが少ない。

 たぶん、先月のあの事を────。

「うん。平気」

 強張った顔のまま、ありがとうと言う。

 不快感はしばらくすると納まり、筆をとった。


「琥珀ちゃんは、小学校のときは何の部活だったの?」

 ちあきが尋ねると

「バトミントン部です!」

 笑顔で答えてくれた。

「ふーん。何で文芸部に?」

 雅が辞書を引きながら会話をつなげる。

「ちあき先輩がいるから」

 微妙な空気が流れた。気まずいが、嫌な気持ちにはならなかった。

 いく先輩は目を瞠って、雅は面白がり、瑠璃は冷めた瞳をしている。

「先輩。好きな人いるでしょう? 力になります。神は強いのです」

 勘違いした自分が恥ずかしかったが、これは宗教の勧誘なのだろうか。

 答えを考えあぐねている内に、話は加速する。

「琥珀はエクソシストなんです!」


「先輩からは悪魔のにおいがします」

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